涌 - 漢字私註
説文解字
滕也。从水甬聲。一曰涌水、在楚國。
- 十一・水部
康煕字典
- 部・劃數
- 水部七劃
『唐韻』余隴切『集韻』『韻會』尹竦切、𠀤音勇。『說文』騰也。『司馬相如・上林賦』洶涌澎湃。
又水名。『水經』江水至華容縣、又東涌水注之。
『集韻』或作湧。
- 部・劃數
- 水部九劃
『集韻』涌、或作湧。詳涌字註。
音訓・用義
- 音
- ヨウ(漢) ユウ(呉) 〈『廣韻・上聲・腫・勇』余隴切〉
- 訓
- わく
水が湧く意。
本邦では、蟲が湧く意、考へが湧く意などにも用ゐる。
解字
白川
形聲。聲符は甬。甬は筒形の器。上下に通ずる形のものをいふ。
説文解字に騰るなり
、騰字條に水、超涌するなり
とあつて、井戸水などの湧出することをいふ。
『公羊傳・昭五年』に濆泉者何。直泉也。直泉者何。涌泉也。
(濆泉とは何ぞ。直泉なり。直泉とは何ぞ。涌泉なり。)とあり、水が湧出する意。
藤堂
涌は、水と音符甬の會意兼形聲。甬は人と音符用の會意兼形聲字で、踊(足で字面を突いて踊る)の原字。用は板の形と杭の形の會意字で、とんとんと突いて板に穴を通すことを表す。涌は、水が地面を突き通すやうに躍り出ることを表す。
湧は、水と音符勇(下から上へと飛び上がる)の會意兼形聲。もと涌と書いた。
漢字多功能字庫
水に從ひ甬聲。本義は上に向かつて噴き出す水。『釋名・釋水』水上出曰涌泉、瀆泉並是也。
- 『山海經・東山經』
有水焉、廣員四十里皆涌、其名曰深澤、其中多蠵龜。
郭璞注今河東聞嘉縣有瀵水、源在地底、濆沸涌出、其深無限、即此類也。
- 『漢書・司馬相如傳』
其西則有涌泉清池、激水推移、外發夫容䔖華、內隱鉅石白沙。
「夫容」(芙蓉のこと)、「䔖華」のいづれも花の名。
轉じて雲霧、煙霞などが上がり、噴き出すことを表す。
- 『文選・揚子雲・劇秦美新』
玄符靈契、黃瑞涌出。
- 『文選・張景陽・雜詩』
騰雲似涌煙、密雨如散絲。
また廣くその他の事物が噴き出し、高く上がることを指す。北宋・蘇軾〈宿九仙山〉夜半老僧呼客起、雲峰缺處湧冰輪。
また波が逆卷くことを表す。
- 『楚辭・九章・悲回風』
憚涌湍之礚礚兮、聽波聲之洶洶。
- 『史記・司馬相如列傳』
觸穹石、激堆埼、沸乎暴怒、洶涌滂㵒。
また古の水名。
- 『左傳・莊公十八年』
閻敖游涌而逸。
- 『水經注・江水』
江水又東、涌水注之、水自夏水南通于水、謂之涌口。
屬性
- 涌
- U+6D8C
- JIS: 1-45-16
- 湧
- U+6E67
- JIS: 1-45-15
- 常用漢字(平成22年追加)