甬 - 漢字私註
説文解字
艸木華甬甬然也。从𢎘用聲。
- 七・𢎘部
康煕字典
- 部・劃數
- 用部二劃
『唐韻』余隴切『集韻』『韻會』『正韻』尹竦切、𠀤音勇。『說文』草木華甬甬然也。『徐曰』甬之言涌也、若泉涌出也。
又甬道。『史記・秦始皇紀』築甬道。《註》應劭曰、謂馳道外築牆、天子於中、外人不見也。『項羽紀註』應劭曰、恐敵鈔輺重、故築牆垣如街。『淮南子・本經訓』修爲牆垣甬。道相連。《註》甬道、飛閣複道也。『韓愈詩』雲韶凝禁甬。《註》宮禁巷道也。『正字通』按甬道之名雖同、或馳道外、或軍伍中、或宮巷道、其用不一。
又『周禮・冬官考工記・鳧氏』鳧氏爲鍾、舞上謂之甬、甬上謂之衡。《註》此二名者、鍾柄。
又『揚子・方言』自關而東、𨻰魏宋楚之閒、保庸謂之甬。
又地名。『左傳・哀二十二年』越滅吳、請使吳王居甬東。甬東、越地、會㮷句章縣、東海中洲也。
又量名。『禮・月令』仲春之月、日夜分、則同度量、鈞衡石、角斗甬。《註》甬、今斛也。
又『博雅』甬、常也。
又『集韻』『韻會』𠀤杜孔切、音動、𠋫管也。與筩同。
音訓・用義
- 音
- ヨウ(漢) 〈『廣韻・上聲・腫・勇』余隴切〉
甬道とは、兩側に牆のある道のこと。
解字
白川
象形。上部に繫けるところのある筒形の器、桶の初文。
説文解字に花の開くさまをいふとし、𢎘に從ひ用聲
とするが、全體が象形の字。字形的にも𢎘や圅と關係のある字ではない。
金文の《毛公鼎》の車服賜與の中に「金甬」があり、車の軛端につける鈴飾りの吉陽甬をいふ。甬はその小鈴の象形。『後漢書・輿服志上』に字を筩に作るが、甬がその初文。
藤堂
人と音符用(上下に通す)の會意兼形聲。人が足で地面をとんと突くことを表す。勇(足踏みして勇み立つ)や踊の原字。
落合
用の同源字。桶の把手を強調した形。繁文は桶。
漢字多功能字庫
金文は鐘の形に象り、上は鐘懸けの象、下は鐘體の象(楊樹達)。後に甬の下部は變形して用となり聲を表す。あるいは金を加へて銿に作り、青銅で造られることを表す。銿は説文解字では鐘の或體として見える。傳世文獻では甬は鐘柄を表し、それで徐灝や高鴻縉は甬は鐘柄の象形とする。『周禮・考工記・鳧氏』鳧氏為鍾、兩欒謂之銑、銑間謂之于、于上謂之鼓、鼓上謂之鉦、鉦上謂之舞。舞上謂之甬、甬上謂之衡。
鄭玄注(甬、衡)此二名者、鍾柄。
楊樹達は、甬の本義は鐘で、後に用字が變遷、縮小して鐘柄の意となつたとする。
金文での用義は次のとほり。
- 車器の一種を表す。彔伯簋
金甬
を、郭沫若は金鈴、鑾鈴(天子の車を飾る鈴)のこととする。 - 讀んで通となす。中山王鼎
寡人幼童未甬(通)智。」張政烺曰「「未通智、知識未開。
甬は用を聲符とし、常々用の通假字となる。
- 江小仲母生鼎
江小中(仲)母生自乍(作)甬(用)鬲。
- 戰國楚簡でも甬は讀んで用となされる。《郭店簡・性自命出》簡9
四[水毋](海)之內其眚(性)[一戈](一)也、其甬(用)心各異,教史(使)肰(然)也。
甬はまた讀んで桶となされ、古代の量器の方形斛を指す。
- 《睡虎地秦簡・效律》簡3-4
甬(桶)不正、二升以上、貲一甲。
は、桶が不正確で、誤差が二升以上あれば、一甲の罰、の意。 - 『呂氏春秋・仲秋紀』
日夜分、則一度量、平權衡、正鈞石、齊斗甬。
高誘注斗、⻆、皆量器也。
甬はまた甬道を表す。樓房の間の、屋根があり、あるいは兩邊に牆があつて、遮蔽された通り道のこと。『正字通・用部』甬、甬道。
- 『淮南子・本經』
魏闕之高、上際青雲、大廈曾加、擬於崑崙、脩為牆垣、甬道相連。
高誘注甬道、飛閣複道也。
- 『史記・秦始皇本紀』
築甬道、自咸陽屬之。
張守節《正義》引應劭曰謂於馳道外築牆、天子於中行、外人不見。
屬性
- 甬
- U+752C
- JIS: 1-65-21
関聯字
甬聲の字
- 𧻹
- 通
- 踊
- 誦
- 筩
- 桶
- 痛
- 俑
- 涌
- 蛹
- 勇
- 銿