含 - 漢字私註
説文解字
嗛也。从口今聲。
- 二・口部
説文解字注
嗛也。从口今聲。胡男切。古音在七部。『〔漢書〕禮樂志』吟靑黃。以吟爲含。
康煕字典
- 部・劃數
- 口部四劃
『唐韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤胡男切、音涵。『說文』嗛也。『廣韻』銜也。『莊子・馬蹄篇』含哺而煕。
又『禮・月令』羞以含桃、先薦寢廟。《註》含桃、櫻桃也。『釋文』含、亦作函。一說鸎鳥所含、故亦名鸎桃。
又『正韻』包也、容也。『易・坤卦』含弘光大、品物咸亨。又『文言』含萬物而化光。『書・盤庚』惟爾含德。
又『後漢・梁鴻詩』麥含含兮方秀。《註》含含、麥盛貌。
又『廣韻』『集韻』𠀤胡紺切、涵去聲。『廣韻』本作琀。『集韻』通作唅。『禮・檀弓』邾婁考公之喪、徐君使容居來弔含。《疏》含、以玉實口也。『春秋・文五年』王使榮叔歸含。《註》珠玉曰含、含口實也。『周禮・春官・典瑞』共飯玉含玉贈玉。《註》含玉柱左右顚及在口中者。○按『禮・檀弓』『釋文』含、和闇反。『春秋』『周禮』『釋文』含、戸暗反。『春秋』亦作唅。
音訓
- 音
- (1) ガン(慣) カム(漢) 〈『廣韻・下平聲・覃・含』胡男切〉[hán]{ham4}
- (2) カム(漢) 〈『廣韻』胡紺切、涵去聲、勘韻〉[hàn]
- 訓
- (1) ふくむ
音(2)は琀、唅に通ず。
解字
白川
今と口の會意。今は、酒器を盦、飲の初文を㱃と記すやうに、器の栓のある蓋の形。口は、甲骨、金文の字では、一般に祝告を收める器の形であるが、含は含玉の意であるから、今を口に加へて、死氣を遮閉する意と見てよい。
『説文解字』に嗛むなり
とあり、琀の初文。その復活を願ふ意を以て、蟬形の玉器を用ゐる。
含玉の意より、のちすべて内に含む意に用ゐる。
藤堂
口と音符今の會意兼形聲。今は亼(かぶせる)と一印(隱されるもの)の會意字で、中に入れて隱す意を含む。含は口中に入れて隱すこと。
漢字多功能字庫
金文は口に從ひ今聲。本義は口の中に食物を含むこと。轉じて包含の意。
含は食物を口中に含むことを表す。
- 『莊子・馬蹄』
含哺而熙、鼓腹而游。
は、食物を口にして戲れ、腹が膨れて漫遊する、の意。 - 『後漢書・馬皇后紀』
吾但當含飴弄孫、不復關政矣。
は、飴を咥へて孫をあやし、政治には關はらない、の意。 - 轉じてものを口中に含むこと。「含英咀華」(詩文の精華をよく味はふこと)、「含辛茹苦」(辛苦を忍受すること)、「含沙射影」(暗中の誹謗中傷の比喩)、「含血噴人」(他人に濡れ衣を着せて中傷すること)など(參・王鳳陽)。
含、涵ともに、包括、容納を意を有するが、用法に區別がある。「包含」は裏面に含有することを指す。「包涵」(許す、大目に見る)は、遠慮すること、人に許しを請ふことを表す。「涵義」は現在多く「含義」に作る(谷衍奎)。
金文では用ゐて今となし、現在を表す。趙誠は、含は今の繁形で、古文字では增繁するとき往々にして口に從ひ、後に分化して別の字となつたとする。中山王鼎の銘の嗚呼、念之哉
の念は、上は含に從ひ下は心に從ふ。よつて含は今の增繁と見ることができる。
- 中山王鼎
含(今)舍(余)方壯
は、今我はまさに壯年である、の意。
戰國竹簡の用義は次のとほり。
- 借りて今となす。
- 《上博竹書六・莊王既成 申公臣靈王》簡7-8
今日陳公事不穀
の「不穀」は君王に對する謙稱で、今日陳公は我の面倒を見る、の意。 - 《郭店簡・語叢一》簡40-41
『春秋』、所以會古今之事也
。
- 《上博竹書六・莊王既成 申公臣靈王》簡7-8
- 愊の通假字となし、誠懇(誠實)を表す。
- 《郭店簡.性自命出》簡52
未賞而民勸、含福(愊)者也。
は、未だ民を賞せざるも、民はよく努力し、これは君子が誠志を懷いてゐるからである、の意(參・劉釗)。
- 《郭店簡.性自命出》簡52
漢帛書での用義は次のとほり。
- 本義に用ゐ、口中に含んで味はふの意を表す。《馬王堆漢帛書・十問》第63行
含亓(其)五味
。 - 包含を表す。《馬王堆漢帛書・老子乙本》第190行
含德之厚者、比於赤子。
(『老子・第五十五章』に相當)
屬性
- 含
- U+542B
- JIS: 1-20-62
- 當用漢字・常用漢字
関聯字
含聲の字
- 琀
- 頷