有 - 漢字私註
説文解字
不宜有也。『春秋傳』曰、日月有食之。从月又聲。凡有之屬皆从有。
- 七・有部
康煕字典
- 部・劃數
- 月部二劃
- 古文
- 𠂇
『唐韻』云久切『集韻』『韻會』『正韻』云九切、𠀤音友。『說文』不宜有也。【春秋傳】曰、日月有食之。从月又聲。『九經字樣』有、从月。从冃、譌。
又『玉篇』不無也。『易・大有疏』能大所有。又『繫辭』富有之謂大業。
又『詩・商頌』奄有九有。《傳》九有、九州也。
又『左傳・桓三年』有年。《註》五穀皆熟書有年。
又『玉篇』果也、得也、取也、質也、寀也。
又姓。『論語』有子。《註》孔子弟子有若。
又『集韻』尤救切。與又通。『書・堯典』朞三百有六旬有六日。『詩・邶風』不日有曀。《註》有、又也。
又『韻補』叶羽軌切。『前漢・敘傳』文豔用寡、子虛烏有。寄言淫麗、託風終始。
又叶演女切。『徐幹・齊都賦』主人盛饗、期盡所有。三酒旣醇、五齊惟醹。
音訓
- 音
- (1) イウ(漢) ウ(呉) 〈『廣韻・上聲・有・有』云久切〉
- (2) イウ(漢) ウ(呉) 〈『集韻』尤救切〉
- 訓
- (1) ある。もつ。たもつ。
- (2) また
音(2)は又と通用するときの音。
解字
甲骨文では又を有の意に用ゐたとされるので、あるいは又に肉を加へた分化字と解すべきかとも按ずるが、是非不詳。
白川
『説文解字』に宜しく有るべからざるなり
とし、春秋傳に曰く、日月(月字は衍文)之を食する有り
の文を引いて、有とは異變のある意とし、字は月に從ひ又聲
とするが、月に從ふ字ではない。
卜文には有無の字に又を用ゐ、金文に有を用ゐる。
『玉篇』に不無なり、果なり、得なり、取なり、質なり、宷なり
の訓がある。
藤堂
肉と音符又の會意兼形聲。又は手でわくを構へたさま。有は、わくを構へた手に肉を抱へ込むさま。空間中に一定の形を劃することから、事物が形をなしてあることや、わくの中に抱へ込むことを意味する。
落合
甲骨文では又を假借して肯定の助辭に用ゐ、「ある」と訓じ、有と釋する。《合補》100甲午卜爭貞、貯其有禍。
西周代に又と肉から成る字形が作られた。月に從ふ字とするのは誤解。
漢字多功能字庫
金文は又と肉に從ひ、手に肉を持つ形に象り、持つこと、擁することを表す。古くは物質が欠乏し、多くの人は食べる肉を有せず、ゆゑに肉を持つことは珍しかつた。『孟子・梁惠王上』七十者可以食肉矣
朱熹注七十非肉不飽、未七十者不得食也。
『説文解字』や他の古籍は月に從ふとするが、誤解である。
金文では又(右手の形に象る)、㞢を多く通讀して有となす。中山王方壺の有無の有は、又と曲線に從ふ形で、これは三晉文字の有である。
金文の用義は次のとほり。
- 擁有することを表す。叔尸鐘
咸有九州
。 - 職官名に用ゐる。「有𤔲」は文獻の「有司」で、事を掌る人員の總稱。
屬性
- 有
- U+6709
- JIS: 1-45-13
- 當用漢字・常用漢字
- 有󠄁
- U+6709 U+E0101
- CID+14071
- 有󠄃
- U+6709 U+E0103
- MJ013522
關聯字
有に從ふ字を漢字私註部別一覽・又部・有枝に蒐める。