左 - 漢字私註
説文解字
𠂇部𠂇字條
𠂇手也。象形。凡𠂇之屬皆从𠂇。
- 三・𠂇部
説文解字注
左手也。鉉本作𠂇手也。非。左今之佐字。《左部》曰、左、𠂇手相左也、是也。又手得𠂇手則不孤。故曰左助之手。象形。反又爲屮。故相戾曰𠂇。臧可切。十七部。俗以左右爲𠂇又字。乃以佐佑爲左右字。凡𠂇之屬皆从𠂇。
左部左字條
手相左助也。从𠂇、工。凡左之屬皆从左。
- 註に
臣鉉等曰、今俗別作佐。
といふ。 - 五・左部
説文解字注
𠂇手相左也。各本俱誤。今正。左者、今之佐字。『說文』無佐也。𠂇者、今之左字。《𠂇部》曰、左手也。謂左助之手也。以手助手是曰左。以口助手是曰右。从𠂇工。工者、左助之意。則箇切。十七部。凡左之屬皆从左。
康煕字典
- 部・劃數
- 工部二劃
『唐韻』『正韻』臧可切『集韻』『韻會』子我切、𠀤音𡯛。『增韻』左右定位。左、右之對、人道尚右、以右爲尊。『禮・王制』男子由右、婦人由左。『史記・文帝紀』左賢右戚。《註》韋昭曰、左猶高、右猶下也。
又『增韻』手足便右、以左爲僻、故凡幽猥、皆曰僻左。『前漢・諸侯王表』作左官之律。《註》師古曰:左官猶言左道。僻左、不正也。漢時依古法、朝廷之列以右爲尊、故謂降秩爲左遷。佐諸侯爲左官也。『韻會』策畫不適事宜曰左計。
又『正韻』左、戾也。
又乗車尚左。『禮・曲禮』祥車曠左。《疏》曠、空也。車上貴左、僕在右、空左以擬神也。
又吉尚左。『禮・檀弓』孔子與門人立拱而尚右、二三子亦皆尚右、孔子曰、我則有姊之喪故也、二三子皆尚左。《註》喪尚右、右、隂也。吉尚左、左、陽也。
又不助也。『左傳・襄十年』天子所右、寡君亦右之、所左、亦左之。《疏》人有左右、右便而左不便。故以所助者爲右、不助者爲左。
又證也。『前漢・楊惲傳』左驗明白。《註》左、證左也。言當時在其左右、見此事者也。
又姓。『廣韻』齊之公族有左右公子、後因氏焉。又漢複姓二氏、左傳公子目夷爲左師、其後爲氏。秦有左師觸讋。晉先蔑爲左行、其後爲氏。漢有御史左行恢。
又『唐韻』則箇切『集韻』『韻會』『正韻』子賀切、𠀤音佐。『說文』手相左助也。『爾雅・釋詁』詔亮、左右相導也、詔相導、左右助勴也、左右亮也。《疏》皆謂佐助、反覆相訓、以盡其義。『易・泰卦』以左右民。《疏》左右、助也。『書・畢命』周公左右先王。
又叶總古切、音祖。『王逸・九思』逢流星兮問路、顧我指兮從左。俓娵觜兮直馳、御者迷兮失軌。軌音矩。
又叶祖戈切、挫平聲。『詩・小雅』左之左之、君子宜之。宜叶牛何反。
- 部・劃數
- 丿部・(一劃)
『唐韻』左本字。
『集韻』有古作𠂇。註詳月部二畫。
- 部・劃數
- 屮部(零劃)
音訓
- 音
- (1) サ(漢、呉) 〈『廣韻・上聲・哿・左』臧可切〉[zuǒ]{zo2}
- (2) サ(漢、呉) 〈『廣韻・去聲・箇・佐』則箇切〉{zo3}
- 訓
- (1) ひだり。たがふ。
- (2) たすける。
解字
𠂇は左手の象形で左の初文。右手の象形は又。篆文は左右對稱。また屮︁の形につくる。
後に工を加へて左につくる。佐助の意には後に佐につくる。
白川
左は𠂇と工の會意。𠂇は左の初文、手の象形。工は巫祝の持つ呪具。右は祝禱を收める器を持つ形。左右は神を尋ね、その祐助を求めるときの行動を示す。故に尋は左右を重ねた形。左右は援助を意味する語となる。
藤堂
𠂇
象形。左手の形を描いた字で、左の原字。
屮
象形。左手を描いた字。左に含まれる𠂇と同じ。
屮︀は別字。
左
左手と工(仕事)の會意で、工作物を右手に添へて支へる手。
落合
初文は屮︁。右(又)とは逆に指先を右に向けてをり、左手を表す。
甲骨文での用義は次のとほり。
- ひだり。《殷墟花園莊東地甲骨》60
惟左馬其有⿲豕刀又。
- 軍隊の編成區分。後にいふ左軍に當たる。左師や左旅ともいふ。《合集》33006
丁酉貞、王作三師右中左。
- 神が祐助を與へないこと。祐の意の又の對義語。この義に特化した異體字(口中に屮︁)がある。(補註: 落合は後代には使はれなくなつた用法といふが、『康煕字典』左字條に
不助也
と訓ずるのが近いか。) 《英藏》1136壬寅卜㱿貞、帝弗左王。
西周代以降には「たすける」の意味でも用ゐられたが、甲骨文ではその用法はなく、上述のとほり反對の意味で用ゐられてゐる。
西周代には初文の屮に工が加へられた。工は鑿の象形。左は鑿を持つた左手を表した會意字。屮亦聲。
周代には右と同じく口を加へた異體があつた。また言を加へた異體も「たすける」の意味で使はれてをり、あるいは「助言」の意味かも知れない。
「たすける」の意味には、東周代に意符として人を加へて「輔助者」を表した佐が作られた。
楷書では左は右とほぼ同樣の𠂇の形を用ゐてゐるが、書き順には初文の形が反映されてゐる。即ち、右字は親指と小指を表す左拂ひを先に書き、左字は親指と小指を表す橫劃を先に書くのが一般的。
漢字多功能字庫
甲骨文、早期金文は𠂇につくり、左手の形を象る。後期金文は工を加へて左につくる。
甲骨文、金文では方位詞に用ゐ、左右の左。
金文ではまた輔助を表し、佐の初文。
- 虢季子白盤
是用左(佐)王
。 - 晉公盆
左(佐)右(佑)武王
。
屬性
- 左
- U+5DE6
- JIS: 1-26-24
- 當用漢字・常用漢字
- 𠂇
- U+20087
- 屮
- U+5C6E〔註1〕
- JIS: 1-54-5
- 屮
- U+2F878
- 屮︁
- U+5C6E U+FE01
- 屮󠄁
- U+5C6E U+E0101
- CID+4658
- 屮󠄂
- U+5C6E U+E0102
- Hanyo-Denshi JA5405
- MJ010388
関聯字
左に從ふ字を漢字私註部別一覽・又部・左枝に蒐める。