皿 - 漢字私註
説文解字
飯食之用器也。象形。與豆同意。凡皿之屬皆从皿。讀若猛。武永切。
- 五・皿部
説文解字注
飯食之用器也。飯汲古閣作飮。誤。『孟子〔滕文公下〕』牲殺器皿。《趙注》皿所以覆器者。此謂皿爲幎之假借。似非孟意。象形。與豆同意。上象其能容。中象其體。下象其底也。與豆略同而少異。凡皿之屬皆从皿。讀若猛。按古孟猛皆讀如芒。皿在十部。今音武永切。
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
『唐韻』武永切『集韻』『韻會』『正韻』眉𣱳切、𠀤明上聲。『說文』飯食之器也。『增韻』盤𥁄之屬。『左傳・昭元年』於文皿蟲爲蠱。《註》皿、器也。『孟子』牲殺器皿。《註》皿、所以覆器者。
又『集韻』母梗切、音猛。義同。
『說文』象形。與豆同意。讀若猛。『佩𧥏集』說文但音猛。今更立一音者、非。
音訓
- 音
- ベイ(慣) メイ(漢) 〈『廣韻・上聲・梗・皿』武永切〉[mǐn/mǐng]{ming5}
- 訓
- さら
解字
白川
象形。平皿の形に象る。
『説文解字』に飯食の用器なり。象形。豆と同意。
とあり、讀みて猛の如くす
といふ。『顏氏家訓・音辭』に古今の音の異なる例としてこの條を引く。周祖謨『問學集』に、當時の汝南の方言音であらうとしてゐる。
藤堂
象形。皿を描いたもので、もと伏せて被せる皿のこと。『孟子』趙岐注に器を覆ふゆゑんのもの
とある。
のち單に皿の意となつた。
落合
液體を入れる平たい器の象形。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 地名またはその長。殷金文の圖象記號にも類似形が見える。《合集》10964
貞、令⿸㫃⿰人冉田于皿。
- 祭祀名。
- 《合集》29655
其皿埋。
- 《殷墟花園莊東地甲骨》87
庚申卜、叀今庚、皿商、諾、泳。亡用。
- 《合集》29655
甲骨文に「天邑商皿宮」とするものがあるが、「天邑商公宮」の誤字であらう。
甲骨文では(字の要素としては)特定の器物ではなく、器物の一般像として使はれることが多い。平たい鉢狀の器は新石器時代から多く作られてをり、そのため器物の代表とされたのであらう。
篆文で下部が強調され、隸書で上部が簡略化されて、現用の形となつた。
漢字多功能字庫
食物を盛る器具に象る。徐鍇は『説文解字』の解を「飲食之用器」に改めたが、これに從ふは可。
甲骨文は容器の形に象る。
廿七年皿では金を加へ、それが青銅で鑄造されたことを表す。
裘錫圭は甲骨文の皿字は後に尊、瓿と呼ばれる器物に象り、既に發見された銅器を見るに、戰國時代の廿七年皿が[金皿]と自稱するのみであるとする。戰國以後、單獨の皿字はほとんど見えず、このことからこの類の器物は他の名稱に改稱されたことが分かる。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 讀んで盟となし、地名に用ゐる。《合集》10964
田于皿
(上揭)は、盟の地で田獵することをいふ。『左傳・隱公十一年』「向、盟、州、陘、懷。」」今の河南省孟縣の南にある。 - 《合集》24892に「皿雨]の語があり、讀んで「猛雨」となす(趙誠)。
金文での用義は次のとほり。
- 本義に用ゐる。廿七年皿
廿七年寧為[金皿]。
- 多く人名に用ゐる。伯簋
白(伯)乍斬皿寶尊彝。
屬性
- 皿
- U+76BF
- JIS: 1-27-14
- 常用漢字
關聯字
皿に從ふ字を漢字私註部別一覽・皿部に蒐める。