金 - 漢字私註
説文解字
五色金也。黃爲之長。久薶不生衣、百鍊不輕、从革不違。西方之行。生於土、从土。左右注、象金在土中形。今聲。凡金之屬皆从金。居音切。
- 十四・金部
古文金。
説文解字注
五色金也。凡有五色。皆謂之金也。下文白金、靑金、赤金、黑金、合黃金爲五色。黃爲之長。故獨得金名。久薶不生衣、百鍊不輕。此二句言黃金之德。從革不韋。舊作違。今正。韋、背也。從革、見『〔書〕鴻範』。謂順人之意以變更成器。雖屢改易而無傷也。五金皆然。西方之行。以五行言之爲西方之行。生於土、从土。𠂇又注、象金在土中形。謂土旁二筆也。今聲。下形上聲。居音切。七部。凡金之屬皆从金。
古文金。象形而不諧聲。
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
- 古文
- 𨤾
- 𨥄
『唐韻』居音切『集韻』『韻會』『正韻』居吟切、𠀤音今。『易・繫辭註』天地之數、五五相配以成金木水火土。《疏》地四與天九相得、合爲金。『書・洪範』五行、四曰金、金曰從革。《傳》金可以攺更。《疏》可銷鑄以爲器也。『又』從革作辛。《傳》金之氣味。《疏》金之在火、別有腥氣、非苦非酸、其味近辛、故云金之氣味。
又金有五色。『說文』五色金、黃爲之、長久薶、不生衣。百煉不輕、從革不違、西方之行、生於土。『爾雅・釋器』黃金謂之璗、其美者謂之鏐、白金謂之銀、其美者謂之鐐。『書・禹貢』厥貢惟金三品。《傳》金銀銅也。『前漢・食貨志』金有三等、黃金爲上、白金爲中、赤金爲下。《註》白金、銀也。赤金、丹陽銅也。師古曰、金者五色、黃金、白銀、赤銅、靑鉛、黑鐵。
又『公羊傳・隱五年』百金之魚。《註》百金、猶百萬也。古者以金重一斤、若今萬錢矣。『莊子・逍遙遊』不過數金。《註》百金、金方寸、重一斤爲一金。百金、百斤也。『史記・平準書』黃金一斤。《註》索隱曰、如淳云、時以錢爲貨、黃金一斤直萬錢、非也。又臣瓚云、秦以一鎰爲一金、漢以一斤爲一金、是其義也。董彥遠曰、漢一斤金四兩、直二千五百文。『正字通』或曰古十兩爲一斤。兵法、興師一萬、日費千金。燕昭王以千金養士、皆此數也。非若今人以二十四銖爲一金也。
又樂有八音、一曰金。『左傳・成十二年』金奏作于下。《疏》金奏、擊鐘以爲奏樂之節。金、謂鐘及鎛也。『周禮・春官・鍾師』掌金奏。
又兵也。『禮・中庸』衽金革。『朱註』金戈兵之屬。
又『韻會』軍行鉦鐸曰金。『釋名』金鼓。金、禁也、爲進退之禁也。『前漢・李陵傳』聞金聲而止。《註》金、鉦也。一名鐲。
又黃色也。『前漢・宣帝紀』金芝九莖、產於函德殿銅池中。《註》金芝、色像金也。『李白・宮中行樂詞』柳色黃金嫩。
又堅也。『前漢・司馬相如傳』上金隄。《註》金隄、言水之隄塘、堅如金也。『賈誼・過秦論』金城千里。
又官名。『周禮・秋官』職金掌凡金、玉、錫、石、丹靑之戒令。『魏志・王修傳』行司金中郞將。『唐書・百官志』更金部曰司金。『遼史・國語解』隂山採金置冶採鍊、名山金司。『元史・世祖紀』置淮南淘金司。又『前漢・百官公卿表』更名執金吾。《註》金吾、鳥名也、主辟不祥。天子出行、職主先導、以禦非常、故執此鳥之象、因以名官。『古今注』金吾、棒也。以銅爲之、黃金塗兩末、謂爲金吾御史大夫。司隷校尉、亦得執焉。
又『論語・摘輔象』風后受金法。《註》金法、言能決理是非也。
又地名。『五音集韻』金州、周爲附庸國、魏於安康縣置東梁州、後周攺爲金州。又『前漢・地理志』金城郡。《註》昭帝始元六年置。應劭曰、初築城得金、故曰金城。臣瓚曰、稱金、取其堅也。『方輿勝覽』楚威王置金陵邑、因其地有王氣、埋金鎮之、故名。
又山名。『廣輿記』在鎮江府城西北江中、唐裴頭陀於此開山得金、故名。又『述異記』黃金山、生交讓樹。『又』南金山有師子獸。
又臺名。『白帖』燕昭王置千金于臺上、以延天下之士、故謂黃金臺。
又花名。『五代史・附錄』湯城淀池多異花。一曰旱金、大如掌。
又樹名。『洞冥記』影蛾池北有生金樹。破之皮閒有屑、如金而色靑、亦名靑金樹。
又草名。『周禮・春官・鬱人註』鬱金香草、宜以和鬯。又『拾遺記』祖梁國獻蔓金苔。『正字通』百兩金、藥名。又『唐本草』牡丹、亦名百兩金。
又古天子號。『帝王世紀』少昊氏以金德王、故號金天氏。
又國號。『金史・太祖紀』國有金水、源產金、故號大金。
又姓。『五音集韻』古天子、金天氏之後。又漢複姓。金留氏、出『姓苑』。
又書名。『前漢・蕭望之傳』金布令甲。《註》金布者、令篇名也。其上有府庫金錢布帛之事、因以名篇令甲者其篇甲乙之次。『唐書・藝文志』海蟾子元英還金篇一卷。『宋史・藝文志』叢金訣一卷。
又神名。『前漢・郊祀志』或言益州有金馬碧雞之神。《註》金形似馬、碧形似雞。
又闕門名。『前漢・公孫弘傳』待詔金馬門。《註》武帝時更名魯班門爲金馬門。
又金精、珠名。見『博雅釋珠』。
又鍾名。『拾遺記』帝顓頊有浮金之鍾。
又星名。『酉陽雜俎』北斗第三星曰視金。『淸異錄』高麗謂星曰屑金。
又金丹。『抱朴子・金丹卷』神人授之金丹仙經。
又石名。『淮南子・地形訓』黃澒五百歲生黃金。《註》澒、水銀也。黃金、石名。
又去聲。『字彙補』音噤。『荀子・解蔽篇』金口閉舌。
又『韻補』叶居良切、音疆。『易林』剛柔相傷、火爛銷金。
- 部・劃數
- 金部・二劃
『集韻』金古作𨤾。註詳部首。
- 部・劃數
- 金部・三劃
『玉篇』古文金字。註詳部首。
異體字
『説文解字』の古文。
音訓
- 音
- キム(漢) コム(呉) 〈『廣韻・下平聲・侵・金』居吟切〉[jīn]{gam1}
- 訓
- かね。こがね。
解字
古い字形を見るに、二點(呂に相當するといふ)が重要な位置を占める字。
白川
象形。銅塊などを鑄込んだ形。
金文の字形に見える二點(漢字多功能字庫が呂に當てる形に同じ)は匀の初文で、一定量の小塊の形。全の形がその鑄込みの形。
『説文解字』に五色の金なり
とあつて、金銀銅の類の總稱とする。また今聲とするが、聲は近いものの、字は今に從ふ形ではない。
金文の賜與に金百寽を賜ふ
のやうにいふものは、銅器の素材としての材質で、寽もその圓形の鑄金を持つ形。(補註: ここにいふ寽は後の鍰に當たるらしい。)
藤堂
點々の印と土と音符今の會意兼形聲。今は亼(押さへた蓋)と一から成る會意字で、何かを含んで押さへたさまを示す。金は土の中に點々と閉ぢ籠もつて含まれた砂金を表す。
落合
甲骨文は吕につくり、銅の延棒を積んだ形に象る。現用の字形の二點に當たり、呂は同源の字。
甲骨文では、銅の地金を表し、黃金ともいふ。《英藏》2567王其鑄黃金奠、盟、叀今日乙未、利。
金文で土と聲符の今を加へる。土は土中から産出する意と言はれる。
また金文に王に從ふ字形があり、王の持つ經濟力を表すものかも知れない。
漢字多功能字庫
金字は最初は專ら銅を指し、後には廣く一切の金屬を指し、更に後には專ら黃金(補註: 英語でgold、ラテン語でaurum)を指す。
金文は、最初、王(斧鉞の頭の下向く形を象る)と呂(二つの太い點が金屬塊二つを象る)と亼(今の省略形)に從ひ、今は聲符。
金字の金文は斧頭の象に金屬塊を表す太い點を加へる形で、斧頭を製造あるいは構成する金屬を指す。(王の意義は)冶字の從ふ刀あるいは斤の意と同じ。そこから引伸して、金屬一般を指す。今の省略形に從ひ、字を今と讀むことを標示する。
西周、春秋の銘文での用義は次のとほり。
- (專ら)銅を指す。
- 豐乍父辛尊
大矩易(賜)豐金、貝
は、大矩は賞賜に豐銅、貝を給ふの意。 - 同卣、保員簋
金車
は、青銅で裝飾された車を指す。『書・禹貢』厥貢惟金三品
、孔穎達疏鄭以為金三品者、銅三色也。
- 豐乍父辛尊
- (派生して)銅色を指す。師𠭰簋
金黃(衡)
は、銅色の玉飾を繫いだ帶を表す。『詩・小雅・車攻』赤芾金舄
、鄭玄箋金舄、黃朱色也。
おほよそ戰國以後、金は金屬一般、あるいは專ら貴重な金屬を指す。
- 仰天湖楚簡簡26
白金
は、白色の金屬を表し、銀を指す。 - 《郭店簡・語叢四》簡24
金玉浧(盈)室
は、屋中を金や玉で滿たすの意。徐在國はこの金は黃金であるとする。 - 《清華簡一・尹誥》簡4
金玉田邑
。
『説文解字』の釋の前段は主に金の性質を説明してゐるが、その後の从土
は、金文の構形を見るに、正確ではない。後に金文は、最初の二つの太い點を、あるいは橫劃や斜劃に譌し、あるいは三または四劃に增やし、いづれにせよ全の形の隙間に置く。後期金文にはまた金屬塊を表す點や劃を取り除くものが見える。篆文は上部を今の形に作るが、金文にはその形は見えず。
屬性
- 金
- U+91D1
- JIS: 1-22-66
- 當用漢字・常用漢字
- 𨤾
- U+2893E
- 𨥄
- U+28944
- 𨥀
- U+28940
関聯字
金に從ふ字を漢字私註部別一覽・金部に蒐める。