庸 - 漢字私註
説文解字
用也。从用从庚。庚、更事也。『易』曰、先庚三日。
- 三・用部
康煕字典
- 部・劃數
- 广部・八劃
- 古文
- 𠆌
『唐韻』『廣韻』余封切『集韻』『類篇』『韻會』餘封切、𠀤音容。『說文』庸、用也。『書・堯典』疇咨若時登庸。《傳》將登用之。『莊子・齊物論』爲是不用而寓諸庸。庸也者、用也。用也者、通也。
又『爾雅・釋詁』常也。『易・乾卦』庸言之信、庸行之謹。『書・臯陶謨』自我五禮有庸哉。《傳》用我五等之禮接之、使有常。
又『玉篇』功也。『書・舜典』有能奮庸煕帝之載、使宅百揆。《傳》庸、功也。『晉語』無功庸者、不敢居高位。《註》國功曰功、民功曰庸。『周禮・天官・大宰』以八統詔王馭萬民、五曰保庸。《註》安有功者。又『地官・大司徒』以庸制祿、則民興功。
又『爾雅・釋詁』勞也。《疏》謂勞苦。又『釋訓』庸庸、勞也。《疏》有功庸者皆勞也。『詩・王風』我生之初尚無庸。《箋》庸、勞也。
又『廣韻』和也。『禮・中庸疏』以其記中和之爲用也。
又『集韻』愚也。『史記・周勃傳』才能不過凡庸。
又豈也。『左傳・莊十四年』庸非貳乎。『前漢・文帝紀賜尉佗書』雖王之國、庸獨利乎。
又租庸賦法。『唐書・食貨志』用民之力、歲二十日、閏加二日、不役者日爲絹三尺、謂之庸。
又水庸。『禮・郊特牲』祭坊與水庸事也。《註》水庸、溝也。《疏》坊者所以畜水、亦以鄣水。庸者所以受水、亦以泄水。
又國名。『左傳・文十六年』楚滅庸。《註》庸、今上庸縣、屬楚之小國。
又庸浦、地名。『左傳・襄十三年』戰于庸浦。
又姓。『姓譜』庸國子孫、以姓爲氏。『前漢・儒林傳』膠東庸生。
又與鄘通。『前漢・地理志』遷邶庸之民於𨿅邑、故邶庸衞三國之詩、相與同風。○按『毛詩』作鄘。
又與墉通。『詩・大雅』因是謝人、以作爾庸。《註》庸、城也。『禮・王制』附于諸侯曰附庸。《註》附庸、小城也。
又與傭通。『前漢・欒布傳』窮困賣庸於齊。《註》師古曰、謂庸作受顧也。『司馬相如傳』與庸保雜作。《註》師古曰庸即謂賃作者保謂庸之可信任者也。
又與鏞通。『詩・商頌』庸鼓有斁。《傳》大鐘曰庸。
又叶于方切、音央。『𨻰琳・車渠椀賦』廉而不劌、婉而成章。德兼聖哲、行應中庸。
- 部・劃數
- 亠部・十四劃
『集韻』庸古作𠆌。註詳广部八畫。
異體字
或體。
音訓
- 音
- ヨウ(漢) 〈『廣韻・上平聲・鍾・容』餘封切〉
- 訓
- もちゐる。いさを。つね。なみ。おろか。あに。なんぞ。
解字
白川
庚と用の會意。庚は杵を兩手で持つ形、用は木を柵のやうに組む形。そこに土を入れ、杵で搗き固める。いはゆる版築の法に近いもので、かうして土墉をつくる。故に庸は墉の初文。
『説文解字』に用ふるなり。用に從ひ、庚に從ふ。庚は事を更むるなり。
とするが、更新の意を持つ字ではない。
『詩・大雅・崧高』以作爾庸
(以て爾の庸と作せ)とあるのが字の本義。城の小なるものを庸といひ、諸侯の微なるものを附庸といふ。
『左傳・僖二十七年』車服以庸
(車服、庸を以てす)は功庸、その功に應じて車服を賜與する意。
また庸常、中庸の意から、凡庸の意となる。
用と通用する。
庸が多義化するに及んで、その原義を示す墉が作られた。
【補註】『字通』庸字條に、𦤘の篆文、及び相當する甲骨文、金文の字形を擧げるが、解説を加へてゐない。落合は當該甲骨文と同樣の字形について、郭の甲骨文で字形は享に當たるが、墉と釋されることもある、とする。『説文解字』は墉の古文として𩫖を錄する。
藤堂
庚と音符用の會意兼形聲。庚は、Y型に立てた心棒。庸は、棒を手に持つて突き通すこと。通と同じく、通用する、普通の、などの意を含む。また、用(用ゐる)と同じ意にも使はれる。
落合
甲骨文は樂器の象形の庚に中空の容器を意味する凡を加へた字形で、樂器としての庚の形狀を示した字。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 樂器。原義での用例。《合集》30694
丙辰卜、叀舊庸用、王受祐。
- 祭祀名。樂器を演奏する儀禮であらう。庸奏、奏庸、庚庸ともいふ。《合集》31014
叀庸奏、有正。
- 人名。第三期(康丁武乙代)。《屯南》3655
…庸[屮戈]𠭯方、不雉衆。
字形は金文で凡が字形が近く發音を表す用に變化した。少數であるが甲骨文にも既に用に從ふ字形が見える。
漢字多功能字庫
甲骨文は庚に從ひ、聲符は筒や桶の類の象形字。あるいは庚に從ひ用聲。用は先述の筒や桶の類の象形字から分化した字。庸は鏞の初文で、本義は大鐘(裘錫圭)。
甲骨文では本義に用ゐる。
- 《合集》31023
其奏庸、[門𢻱]美、又正。
「奏庸」は「奏鏞」。この用法はまた傳世古書にも見える。『逸周書・世俘』王奏庸
朱右曾集訓校釋庸、大鐘也。庸、鏞本字、經典皆作鏞。
- 《合集》31017
庸壴(鼓)
は、鏞と連係する鼓の一種を指す。(裘錫圭)
金文は多く庚と用に從ひ、また庚と先述の象形字の字形に從ひ、天亡𣪕に見える。金文では奴隸を表す。訇𣪕今余令汝啻官司邑人、先虎臣、後庸。
「先虎臣」は軍旅の一種で、先は先鋒を指す。「後庸」は正規軍の後に追隨する庸を指す。(陳世輝、裘錫圭)
また用を表す。古代には庸と用を常に通用する。
- 中山王鼎
寡人庸(用)其悳(德)、嘉其力。
- 『國語・吳語』
夫吳之與越、唯天所授、王其無庸戰。
- 後には雇傭されることを表す。『史記・陳涉世家』
若為庸耕、何富貴也。
- また雇傭される人を指し、後には傭に作る。『韓非子・五蠹』
澤居苦水者、買庸而決竇。
金文ではまた平凡、平常を表す。傳世古書にも見える。『爾雅・釋詁上』庸、常也。
- 中山王鼎
後人其庸庸之、母(毋)忘尒(爾)邦。
- 『荀子・榮辱』
夫『詩』『書』『禮』『樂』之分、固非庸人之所知也。
- 『史記・廉頗藺相如列傳』
且庸人尚羞之、況於將相乎。
また副詞となし、難道(まさか〜ではあるまい)を表す。
- 『左傳・僖公十五年』
晉其庸可冀乎。
は、晉はまさか冀を求めるまい、の意。 - 『管子・大匡』
雖得賢、庸必能用之乎。
屬性
- 庸
- U+5EB8
- JIS: 1-45-39
- 當用漢字・常用漢字
- 𠆌
- U+2018C
- 𠭻
- U+20B7B
關聯字
庸聲の字
- 𪅟
- 鄘
- 傭
- 𧴄
- 慵
- 鱅
- 墉
- 鏞