王 - 漢字私註

説文解字

王
天下所歸往也。董仲舒曰、古之造文者。三畫而連其中謂之王。三者、天、地、人也、而參通之者王也。孔子曰、一貫三爲王。凡王之屬皆从王。
註に李陽冰曰「中畫近上。王者、則天之義。」といふ。
王部
𠙻
古文王。

康煕字典

部・劃數
玉部(零劃)

『廣韻』『集韻』『韻會』𠀤雨方切、音徨。『廣韻』大也、君也、天下所法。『正韻』主也、天下歸往謂之王。『易・坤卦』或從王事。又『隨卦』王用享于西山。『書・洪範』無偏無黨、王道蕩蕩。『詩・小雅』宜君宜王。《註》君、諸侯也。王、天子也。○按秦漢以下、凡諸侯皆稱王、天子伯叔兄弟分封于外者亦曰王。

又諸侯世見曰王。『詩・商頌』莫敢不來王。《箋》世見曰王。

又凡尊稱亦曰王。『爾雅・釋親』父之考爲王父、父之妣爲王母。

又法王、象王、皆佛號。『華嚴偈』象王行處落花紅。『岑參詩』况値廬山遠、抽簪禮法王。《註》法王、佛尊號也。

又姓。

又『諡法』仁義所往曰王。

又王屋、山名。『書・禹貢』至于王屋。《疏》正義曰、王屋在河東垣縣東北。

又弓名。『周禮・冬官考工記』弓人、往體寡、來體多、謂之王弓之屬。

又王連、遠志也。見『博雅』夫王、芏草也。見『爾雅・釋草疏』。

又王鴡、鳥名。『爾雅・釋鳥』鴡鳩、王鴡。《註》鵰類、今江東呼之爲鶚。

又王鮪、魚名。『周禮・天官・人』春獻王鮪。《註》王鮪、鮪之大者。

又蛇名。『爾雅・釋魚』蟒、王蛇。《註》蟒、蛇最大者、故曰王蛇。

又蟲名。『爾雅・釋蟲』王蛈蜴。【註】卽螲蟷、似䵹鼄、在穴中、有蓋。今河北人呼蛈蜴。『博雅』虎、王蝟也。

又『廣韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤于放切、音旺霸王也。『正韻』凡有天下者、人稱之曰王、則平聲。據其身臨天下而言曰王、則去聲。『詩・大雅』王此大邦。《箋》王、君也。『釋文』王、于况反。『前漢・高帝紀』項羽背約而王君王於南鄭。《師古註》上王字、于放反。

又『廣韻』盛也。『莊子・養生主』神雖王、不善也。《註》謂心神長王。『釋文』王、于况反。

又音往。『詩・大雅』昊天曰明、及爾出王。《傳》王、往也。《朱註》音往。

〇按王本古文玉字。註詳部首。

異體字

『說文解字』の重文。古文。

音訓・用義

(1) ワウ(漢、呉) 〈『廣韻・下平聲・陽・王』雨方切〉
(2) ワウ(漢、呉) 〈『廣韻・去聲・漾・迋』于放切〉
(1) きみ

音(2)は、王となる意に用ゐる。また、盛んなることを表す。

解字

白川

象形。鉞の刃部を下にして置く形に象る。王位を象徵する儀器。

『説文解字』に天下の歸往する所なりと歸往の意を以て説くが、音義説に過ぎない。字形について、董仲舒説として古の文を造る者、三畫して其の中を連ね、之れを王と謂ふ。三なる者は天地人なり。而して之れを參通する者は王なり。とするが、卜文、金文の下劃は強く彎曲して、鉞刃の形をなしてゐる。

藤堂

と一印(天)と一印(地)の會意。手足を擴げた人が、天と地の間に立つさまを示す。

あるいは下が大きく擴がつた斧の形を描いた象形字ともいふ。

もと偉大な人の意。

落合

象形。鉞の象形であるのうち刃の部分のみを表したもの。縱橫の向きが變はつてゐる。

鉞の刃を王の意に用ゐたことについては、鉞が罪人の處刑に使はれたことから、王が持つ權力を象徵したといふ説がある。また鉞は古くから武器として用ゐられたので、王の軍事力の象徵とする説もある。但し殷代には主に工具として用ゐられてゐた。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. 王。殷王朝の統治者。《合補》1979戊辰卜㱿貞、王德土方。
王夨
神名。別名に王[⿱宀夨]があり、また單に夨ともいふ。《合集》1051侑王夨、伐三、卯[⿱冖羊]。
王亥
神名。一時的(一二間期; 祖己代)に殷王の系譜に編入されたこともあり、文獻資料にも先王と看做すものがある。甲骨文には鳥の象形のを加へて表記する場合もあり、鳥神や風神とする説もある。《合補》100來辛亥、燎于王亥三十牛。
王恒
神名。王亥の兄弟神とする説もあるが、甲骨文では王亥との合祀などは見られない。《合集》14762貞、侑于王恒。
王族
王の軍隊。《合補》10519己亥貞、令王族追召方、及于…。
戴王使
王に服從することを意味する語。
小王
王に次ぐ地位の人物。

漢字多功能字庫

甲骨文、金文は、刃を下に向けた斧鉞の形に象る(吳其昌)。斧鉞は軍權の象徵。

王は戉を90度廻轉して原字と區別した字。早期金文の底劃は弧形を呈し、且つ弧筆は豐かで厚く、依然として刃の形を留める。後期金文の底劃は線條化されて一橫劃となり、容易に字と混じる。王字は上二橫劃が接近して底劃と離れてをり、玉字は三橫劃の距離が均等であることで區別する。後には二字をもつと區別するため、玉字に點を加へる。

甲骨文では王、は同じ字形を用ゐて表した(林澐)。斧鉞は王權の象徵であり、また武士の持つものであることによる。

甲骨文では多く商王を表す。《合集》5193正貞、王歸

金文では君王を表す。

戰國竹簡での用義は次のとほり。

屬性

U+738B
JIS: 1-18-6
當用漢字・常用漢字
𠙻
U+2067B

關聯字

王に從ふ字

王聲の字