小 - 漢字私註
説文解字
物之微也。从八丨見而分之。凡小之屬皆从小。私兆切。
- 二・小部
説文解字注
物之微也。从八丨見而八分之。八、別也。象分別之形。故解从八爲分之。丨才見而輒分之。會意也。凡㮯物分之則小。私兆切。二部。凡小之屬皆从小。
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
『唐韻』『集韻』『韻會』私兆切『正韻』先了切、𠀤蕭上聲。『說文』物之微也。从八从亅。見而分之。《徐曰》亅、始見也。八、分也。始可分別也。『玉篇』細也。『易・繫辭』其稱名也小、其取類也大。『左傳・襄三十一年』君子務知大者遠者、小人務知小者近者。又『周禮・天官』有小卿、副貳、大卿、卽小宰等也。
又狹隘也。『書・仲虺之誥』好問則裕、自用則小。
又輕之也。『左傳・桓十三年』莫敖狃於蒲騷之役、將自用也、必小羅。
又『詩・邶風』慍于羣小。《註》小、衆妾也。
又『韻輯』白小、魚名。
又叶蘇計切、音細。『白居易・懺悔偈』無始劫來、所造諸罪。若輕若重、無大無小。了不可得、是名懺悔。
音訓
- 音
- セウ(漢、呉) 〈『廣韻・上聲・小・小』私兆切〉[xiǎo]{siu2}
- 訓
- ちひさい。すこし。こ。を。
解字
白川
象形。微小なるものに象る。金文の字形は、貝または玉を示すものであらう。
『説文解字』に物の微なるものなり。八に從ふ。丨かに見えて、之れを八分す。
とするが、卜文、金文の字形は、相似た三點を配するのみの形。
字は恐らく𧴪、瑣の字形に含まれるものと同じく、貝、玉の類。これを連ねるを少といふ。
藤堂
象形。丨の兩脇に點々をつけ、棒を削つて小さく細く削ぐさまを描いたもの。
落合
甲骨文は指示記號の小點を竝べた形。甲骨文では、小點は水滴(益など)、穀物の實(利の異體など)、土砂(埋など)の意で使はれてをり、特定の物體の象形ではなく、一般に小さな物を表す指示記號である。
一點多い異體字が少の元となつてゐるが、甲骨文では必ずしも嚴密な區分はない。
甲骨文での用義は次のとほり。
- ちひさい。ちひさな。「年少」や「格下」の意でも用ゐられる。《殷墟花園莊東地甲骨》14
乙酉卜子、有之⿰阝心南小丘其⿰豕⿱凶十、獲。
- すくない。すこしく。小規模の。この場合は少と釋す。《合集》20912・後半驗辭
庚辰卜勺、今夕、其雨。允雨、少。
- 地名。殷に敵對して小方と呼ばれた。《合集》20478
丙子卜、小方不其征。
- 系譜上で近い祖先神の呼稱に用ゐられる。小乙や小丁など。小丁は祖丁の別稱。
- 小子
- 年少の男子。《殷墟花園莊東地甲骨》353
庚戌卜、小子[⿱乇口]妣庚。
- 小山
- 神名。いづれの山嶽の神格かは不明。《合集》30329
敕小山、即宗、迺嶽于之。
- 小王
- 祭祀對象。王に次ぐ地位の人物。《合集》20022
戊午卜勺、侑小王。
- 小示
- 近い先王の集合。《合補》184
小示卯、叀羊。
- 小母
- 祭祀對象。父の側室の序列を表した語であらう。《合集》651
貞、小母畀奚。
- 小臣
- 殷王の臣下。小尹とも呼ばれる。人名や職名を附して「小臣某」や「小某臣」とする用法もある。《甲骨拼合集》186
己巳卜亘貞、王夢玉、不惟德小臣爿。
- 小吿
- 兆辭の一種。卜兆出現時に音が小さかつたことであらう。
- 小宗
- 祭祀施設。位置などは不明。殷都には大宗も置かれてゐる。《天理大學附屬天理參考館 甲骨文字》460
己丑卜、在小宗侑、勺歲、自大乙。
- 小⿱冖羊
- 祭祀犧牲の種別。文獻資料にいふ「小牢」と同じく羊と豚のセットと推定されてゐる。《殷墟花園莊東地甲骨》157
丁丑、歲妣丁小⿱冖羊。
- 小采
- 午後の時間帶を表す語。小食とも言ふ。《合集》20966・驗辭
三日丙申、昃雨、自東、小采既。
- 小⿰𬔖⿹𠃌一
- 王の側室の序列を表示する語。《合集》23714
丙申卜出貞、作小⿰𬔖⿹𠃌一日、叀癸。八月。
- 小掃
- 甲骨の貢納記錄に附される語。甲骨から肉や脂がやや取り除かれてゐたことの表示であらう。《甲骨拼合集》264・貢納記錄
壬戌、子央示二屯。小掃。
漢字多功能字庫
小の構形初義に二種類の見方がある。
- 三小點で物の微小なるを表す(商承祚、于省吾)。
- 沙の初文であり、細小なる砂粒を以て微小を表す(馬敍倫)。
小と少は一字から分化したもの。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 小を表す。《粹》1004「小雨」
- 時を記すのに用ゐる。「小食」は午後を表し、「小采」は黃昏の頃合を表す。
金文での用義は次のとほり。
- 小を表す。嬴霝德鼎
嬴霝德乍(作)小鼎
。 - 多く「小子」の語が見え、未成年の貴族の子弟を指し、また低級職官を指す。
- 「小臣」は王公に下屬する管理を指し、また低級官吏を指す。
屬性
- 小
- U+5C0F
- JIS: 1-30-14
- 當用漢字・常用漢字
關聯字
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