倍 - 漢字私註
説文解字
反也。从人咅聲。
- 初句の段注に
此倍之本義。『〔禮〕中庸』爲下不倍。『〔同〕緇衣』信以結之。則民不倍。『論語』斯遠鄙倍。皆是也。引伸之爲倍文之倍。『〔周禮・春官〕大司樂〕注曰、倍文曰諷。不面其文而讀之也。又引伸之爲加倍之倍。以反者覆也。覆之則有二面。故二之曰倍。俗人䤨析。乃謂此專爲加倍字。而倍上、倍文則皆用背。餘義行而本義廢矣。倍之或體作偝。見『〔禮〕坊記』、『〔同〕投壼』、『荀𨜮子』。
- 八・人部
康煕字典
- 部・劃數
- 人部・八劃
- 古文
- 俖
『集韻』補妹切、音背。『說文』反也。『禮・緇衣』信以結之、則民不倍。『淮南子・人閒訓』單豹倍世離俗、巖居谷飮。
又鄙俗也。『論語』斯遠鄙倍矣。
又物財人事加等曰倍。『易・說卦』利市三倍。『詩・大雅』如賈三倍。『書・周官』夏商官倍、亦克用乂。又『左傳・僖三十年』燭之武曰、焉用亡鄭以倍鄰。《註》益也。又『越絕書』計倪曰、以智論之、以決斷之、以道佐之、斷長續短、一歲再倍、其次一倍。
又『韓愈・韓滂墓誌』滂讀書倍文、功力兼人。《註》倍文、謂背本暗記也。『周禮註』倍文曰諷、韓語本此。
又『集韻』『韻會』『正韻』𠀤蒲枚切、音裴。『賈子・容經篇』諺曰、君子重襲、小人無由入。正人十倍、邪僻無由來。
又倍尾、山名、通作陪。
又倍阿、鬼名。『莊子・達生篇』東北方之下者、倍阿鮭蠪躍之。『林獻齋註』屋中東方之鬼也。
音訓
- 音
- バイ、ベ(呉) ハイ(漢) 〈『廣韻・上聲・海・倍』薄亥切〉
- 訓
- ます。ますます。そむく(倍義、倍反)。そらんずる(倍文)。
解字
白川
形聲。聲符は咅。咅は孛(花の子房の膨らみ)が熟して果となり、剖ける意。それで兩倍の意となる。
『説文解字』に反くなり
と背叛の意とし、段注にそれを字の本義とするが、兩分することよりして背叛、倍譎の意を生ずる。
背、陪と聲義において通用する。
藤堂
人と音符咅の會意兼形聲。不は、ふつくらと膨れた蕾を描いた象形字で、胚の原字。しかし普通は、振り切つて拒否するといふ否定の言葉に當て、否とも書く。咅は、否の變形で、切り離し、振り切るの意を含む。解剖の剖の原字。倍は、二つに分け離すこと。兩斷すれば、その數は倍となるので、倍の意を表す。
漢字多功能字庫
- 『左傳・昭公二十六年』
倍奸齊盟
孔穎達疏倍、即背也。違背奸犯齊同之盟也。
- 『墨子・耕柱』
夫倍義而鄉祿者、我常聞之矣、倍祿而鄉義者、於高石子焉見之也。
また背を向けることを表す。
- 『管子・中匡』
管仲反、入、倍屏而立、公不與言。
- 『史記・淮陰侯列傳』
兵法右倍山陵、前左水澤、今者將軍令臣等反背水陳、曰破趙會食、臣等不服。
また增加を表す。
- 『左傳・僖公三十年』
越國以鄙遠、君知其難也、焉用亡鄭以倍鄰。
杜預注倍、益也。
- 『墨子・節用上』
聖人為政一國、一國可倍也。
引伸して加倍、つまり元の數に同じだけの數量を增加することを表す。
- 『孟子・公孫丑上』
當今之時、萬乘之國行仁政、民之悅之、猶解倒懸也。故事半古之人、功必倍之、惟此時為然。
- 『孫子・謀攻』
故用兵之法、十則圍之、五則攻之、倍則分之、敵則能戰之、少則能逃之、不若則能避之。
また副詞となし、いつそう、ますますの意。
- 唐・王維〈九月九日憶山東兄弟〉
獨在異鄉為異客、每逢佳節倍思親。
- 北宋・周邦彥〈丁香結〉
淡暮色、倍覺園林清潤。
屬性
- 倍
- U+500D
- JIS: 1-39-60
- 當用漢字・常用漢字