否 - 漢字私註
説文解字
口部否字條
不也。从口从不。方九切。
- 二・口部
説文解字注
不也。从口不。按否字見《不部》。此誤增也。
不部否字條
不也。从口从不、不亦聲。徐鍇曰、不可之意見於言、故从口。方久切。
- 十二・不部
説文解字注
不也。不者、事之不然也。否者、說事之不然也。故音義皆同。『孟子・萬章』曰、然則舜僞喜者與。孟子曰、否。《注》孟子言舜不詐喜也。又咸丘蒙問、舜南面而立、瞽瞍亦北面而朝之。孟子曰、否。《注》言不然也。又萬章曰、堯以天下與舜、有諸。孟子曰、否。《注》堯不與之。又萬章問曰、人有言、伊尹以割烹要湯。孟子曰、否然也。萬章又問孔子於衞主癰疽。孟子曰、否然也。萬章又問百里奚自鬻於秦養牲者。孟子曰、否然注皆曰。否、不也。不如是也注以不如是釋否然。今本正文皆譌作否不然。語贅而注不可通矣。否字引申之義訓爲不通。如『易』之『泰』『否』、『〔書〕堯典』之否德、『〔詩〕小雅〔何人斯〕』之否難知也、『論語〔雍也〕』之予所否者皆、殊其音讀符鄙切。要之古音則同在弟一部。从口不。會意。不亦聲。方久切。古音在一部。
康煕字典
- 部・劃數
- 口部・四劃
- 古文
- 𠘶
『唐韻』方九切『集韻』『韻會』『正韻』俯九切、𠀤音缶。『說文』不也。《徐鍇曰》不可之意見於言、故从口。『集韻』口不許也。『書・益稷』否則威之。『詩・周南』害澣害否。又『小雅』嘗其旨否。『集韻』通作不。
又『廣韻』符鄙切『集韻』『韻會』部鄙切、𠀤音痞。『玉篇』閉不行也。『廣韻』塞也、易卦名。
又『集韻』『韻會』𠀤補美切、音鄙。『集韻』惡也。『正韻』穢也。『易・師卦』初六、師出以律、否臧凶。《疏》否爲破敗、臧爲有功。又『鼎卦』初六、鼎顚趾、利出否。《註》否、謂不善之物也。《疏》寫出否穢之物也。『詩・大雅〔抑〕』未知臧否。『又〔烝民〕』邦國若否。○按【釋文】【書・益稷】【詩〔大雅〕烝民】否字俱兼缶鄙二音。
又叶府眉切、音𤰞。『楚辭・九章』心純尨而不泄兮、遭讒人而嫉之。君含怒以待臣兮、不淸徵其然否。
又叶方矩切、音甫。『𨻰琳・大荒賦』覽六五之咎休兮、乃貧尼而富虎、嗣反覆其若兹兮、豈云行之臧否。
- 部・劃數
- 几部・四劃
『字彙補』古文否字。註見口部四畫。
音訓
- 音
- (1) ヒ(慣) フ(呉) フウ(漢) 〈『廣韻・上聲・有・缶』方久切〉[fǒu]{fau2}
- (2) ヒ(漢) 〈『廣韻・上聲・旨・否』符鄙切〉[pǐ]{pei2}
- 訓
- (1) いな。いなむ。しからず。あらず。
- (2) あし(否臧)。ふさぐ(否塞)。
解字
白川
不と口の會意。口は祝詞を收める器の形。その上を蓋ふことによつてこれを拒否し、妨げる意を表す。
『説文解字』に不らざるなり。口に從ひ、不に從ふ。
とし、口を口舌の形と解する。
金文の《毛公鼎》に上下の若否
といふ語があり、上下神の諾否、すなはち神意を意味する。若は巫女が舞ひ祈る形で、神が應諾することをも若といつた。
また否には別に不、丕、否、咅といふ系列に屬するものがあり、不は萼不、その花蔕が成熟する過程を丕、否、咅といひ、實のはじけ割れることを剖判といふ。
金文に「不𫠭」といふ譽め言葉があり、字はまた「不𫫘」に作る。
諾否、否定の否と、不、丕系列の字と、もと別系であらうが、いま否に兩義がある。
藤堂
口と音符不の會意兼形聲。不は、膨らんだ蕾を描いた象形字で、後世の菩(つぼみ)の原字。その音を借りて否定詞に當てる。否は、口を添へて言語行爲であることを示した字で、否定を表す言葉。呸と同じ。
落合
漢字多功能字庫
金文は不と口に從ひ、不は聲符。晩期金文に見える。古く不と否はもと一字で、否は最初は不を借用して表し、晩期にやうやく口を加へて否字を作つた。『説文解字』の註に徐鍇曰、不可之意見於言、故从口。
、《段注》に不也。不者、事之不然也。否者、說事之不然也。故音義皆同。
といふ。
金文での用義は次のとほり。
- 否定の副詞となし、用法は不に同じ。白龢父敦
毋敢否善
は毋敢不善(敢へて善ならざることなかれ) - 讀みて丕となす。晉公盆
否乍元女
大きい娘が嫁ぐの意。郭沫若は「否讀為丕,乍猶嫁也,元女謂長女。」(否は丕と讀み、乍は嫁ぐの意で、元女は長女のこと)といふ。
戰國竹簡でも否定の副詞に用ゐる。《上博楚竹書二・魯邦大旱》簡3子贛(貢)曰、否也
。
屬性
- 否
- U+5426
- JIS: 1-40-61
- 當用漢字・常用漢字
- 𠘶
- U+20636
關聯字
否に從ふ字を漢字私註部別一覽・不部・否枝に蒐める。