拂 - 漢字私註
説文解字
説文解字注
過擊也。徐鍇曰「擊而過之也」。《刀部》曰「刜、擊也。」與拂義同。
从手弗聲。敷勿切。十五部。
康煕字典
- 部・劃數
- 手部・五劃
『唐韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤敷勿切、音髴。〔音1〕『說文』過擊也。《徐鍇曰》擊而過之也。
又『廣韻』去也、拭也、除也。『禮・曲禮』進几杖者、拂之。《疏》拂去塵埃也。『後漢・黨錮傳』激揚名聲、互相題拂。
又絕也。『吳語』吾將許越成、而無拂吾慮。
又『正韻』矯也、逆也。
又拂塵具。『南史・𨻰顯達傳』麈尾蠅拂、是王謝家許。
又舞名。『唐書・禮樂志』白鳩、吳拂、舞曲也。『通鑑辨誤』王僧虔奏、大明中、卽以宮縣合和鞞拂。按鞞拂皆舞名、拂舞出自江左、舊云吳舞、檢其歌、非吳舞也。
又『集韻』『韻會』𠀤符勿切、音佛。〔音6〕與咈通。違也、戾也。『易・頤卦』顚頤拂經于丘。『詩・大雅』四方以無拂。《箋》拂、猶佹也、言無復佹戾者。
又『集韻』『韻會』『正韻』𠀤薄密切。〔音2〕與弼同。輔也。『孟子』入則無法家拂士。
又『集韻』普密切、讀與匹近。〔音5〕拂泊、風動貌。
又方未切、音沸。〔音3〕㧍拂、形似也。通作髴。
又父沸切、音狒。〔音4〕與㩌同。搏擊也。又『道藏・馮夫人詩』挺穎德音子、神英乃高拂。天岳臨空搆、洞𡎲深幽䆳。
異體字
- いはゆる新字体。
音訓義
- 音
- フツ(漢) ホチ(呉) ホツ(唐)⦅一⦆
- ヒツ(漢) ビチ(呉)⦅二⦆
- ヒ(推)⦅三⦆
- ヒ(推)⦅四⦆
- ヒツ(推)⦅五⦆
- フツ(推)⦅六⦆
- 訓
- はらふ⦅一⦆
- さからふ⦅一⦆
- もとる⦅一⦆
- 官話
- fú⦅一⦆
- bì⦅二⦆
- 粤語
- fat1⦅一⦆
- bat6⦅二⦆
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・入聲・物・拂』敷勿切
- 『集韻・入聲上・勿第八・拂』敷勿切
- 『五音集韻・入聲卷第十四・物第三・敷三拂』敷勿切
- 聲母
- 敷(輕唇音・次清)
- 等呼
- 三
- 官話
- fú
- 粤語
- fat1
- 日本語音
- フツ(漢)
- ホチ(呉)
- ホツ(唐)
- 訓
- はらふ
- さからふ
- もとる
- 義
- はらふ。打ち拂ふ。拂ひ除ける。
- 除く。取り去る。拭ふ。
- 逆らふ。もとる。違ふ。背く。
- 本邦では支拂ふ意に用ゐる。
- 釋
- 『廣韻』
拂: 去也、拭也、除也、擊也。敷勿切。十二。
- 『集韻』
拂: 敷勿切。『說文』過擊也。文三十三。
- 『康煕字典』上揭。
⦅二⦆
- 反切
- 『集韻・入聲上・質第五・𢐀』薄密切
- 『五音集韻・入聲卷第十四・質第一・並三弼』房密切
- 聲母
- 並(重唇音・全濁)
- 等呼
- 三
- 官話
- bì
- 粤語
- bat6
- 日本語音
- ヒツ(漢)
- ビチ(呉)
- 義
- 輔ける。弼に同じ。
- 釋
- 『集韻』
𢐀𢐡㢸𢼥𢏇弼拂𠨒𠡂𢘍: 薄密切。『說文』輔也、重也。徐鍇曰、㐁、舌也。舌柔而弜剛以柔从剛輔弼之意。或从二㐁、古作㢸𢼥𢏇、隷作弼。或作拂𠨒𠡂𢘍、通作佛。『說文〔丿字條〕』「右戾也。象左引之形。」文二十三。
- 『康煕字典』上揭。
⦅三⦆
- 反切
- 『集韻・去聲上・未第八・沸』方未切
- 『五音集韻・去聲卷第十・未第六・非三沸』方味切
- 聲母
- 非(輕唇音・全清)
- 等呼
- 三
- 日本語音
- ヒ(推)
- 釋
- 『集韻』
拂佛: 㧍拂、形似也。或作佛、通作髴。
- 『康煕字典』上揭。
⦅四⦆
- 反切
- 『集韻・去聲上・未第八・屝』父沸切
- 『五音集韻・去聲卷第十・未第六・奉三𦦷』扶沸切
- 聲母
- 奉(輕唇音・全濁)
- 等呼
- 三
- 日本語音
- ヒ(推)
- 義
- 㩌の省文。
- 釋
- 『集韻』
㩌拂: 楚謂搏擊曰㩌。或省。
- 『康煕字典』上揭。
⦅五⦆
- 反切
- 『集韻・入聲上・質第五・拂』普密切
- 『五音集韻・入聲卷第十四・質第一・滂三拂』普密切
- 聲母
- 滂(重唇音・次清)
- 等呼
- 三
- 日本語音
- ヒツ(推)
- 釋
- 『集韻』
拂: 普密切。拂汨、風動皃。文一。
- 『康煕字典』上揭。
⦅六⦆
- 反切
- 『集韻・入聲上・勿第八・佛』符勿切
- 『五音集韻・入聲卷第十四・物第三・奉三佛』符勿切
- 聲母
- 奉(輕唇音・全濁)
- 等呼
- 三
- 日本語音
- フツ(推)
- 義
- もとる。違ふ。『康煕字典』は咈との通用とする。
- 佛と通ず。
- 釋
- 『集韻』
佛拂: 符勿切。大也。一曰戾也。或作拂。文二十一。
- 『康煕字典』上揭。
解字
白川
形聲。弗聲。弗に否定の意があり、その動作にあらはれることを拂といふ。
『説文解字』に過擊するなり
とあり、『說文通訓定聲』に蘇俗に之れを拍と曰ふ
と見える。拍は強くうちはらふ意。
藤堂
手と音符弗の會意兼形聲。弗は、弓(垂れたつる)と八印(左右にはねる)から成り、垂れたつるを左右に拂つて切るさま。拂は、左右に拂ひ除ける動作を示す。手を左右に振るのは拒否し否定する表現でもある。
漢字多功能字庫
- 漢・張衡〈思玄賦〉
寒風淒其永至兮、拂穹岫之騷騷。
- 『北史・斛律金傳』
金以鞭拂馬、神武乃還。
拭ふ、はたくの義に用ゐる。『廣韻・物韻』拂、拭也。
『桯史・記龍眠海會圖』瓶、鉢、杖、拂、個有所執
。ゆゑにまたはたきを指す。
また取り除く、拔き取る意に用ゐる。唐・韓愈〈答張籍書〉拂其邪心
。李白〈贈何七判昌浩〉不然拂劍起、沙漠收奇勳
。
また振動の義を有す。晉・郭璞〈江賦〉䖺䗤拂翼而掣耀、神蜧蝹蜦以沉遊
。
また甩動(甩は振り回すの意)を表す。晉代『高士傳・披裘公』公投鎌嗔目拂手而言
。
また打扮(裝ふ、着飾る、扮裝する、成り濟ますの意)の語義を表し、南朝の詩歌に見える。〈雜詠五首・鏡台〉照粉拂紅妝、插花理雲鬢。
違逆を表す。『漢書・杜周傳』臣竊有所憂、言之則拂心逆指。
刜と通じ、叩き切ることを表す。『漢書・王莽傳上』拂其頸、衝其匈(胸)
。
怫と通じ、憤怒を表す。『旬子・性惡』兄弟相拂奪矣。
弼と通じ、輔佐を表す。『孟子・告子下』入則無法家拂士
。
屬性
- 拂
- U+62C2
- JIS: 1-57-36
- 人名用漢字
- 払
- U+6255
- JIS: 1-42-7
- 當用漢字・常用漢字