弼 - 漢字私註
説文解字
卩部𠨒字條
説文解字注
輔信也。相輔之信也。信者、卪也。从比、故以輔釋之。『周禮〔地官〕掌節』掌守邦節而辨其用、以輔王命。
从卪比聲。當云从比卪、比亦聲。古音在十五部。大徐毗必切。
『虞書』曰、𠨒成五服。『皋陶謨』文。〔註1〕今『尙書』作弻。
- 註1: 僞古文尚書は今文尚書の『皋陶謨』を『皋陶謨』と『益稷』に分け、引用部分は『益稷』に屬す。
弜部弼字條
- 弼
輔也。重也。从弜㐁聲。徐鍇曰「㐁、舌也、非聲。舌柔而弜剛、以柔从剛、輔弻之意。」房密切。
- 十二・弜部
- 𢐡
弻或如此。
並古文弻。
並古文弻。
説文解字注
- 弼
輔也。輔者、車之輔也。引申爲凡左右之偁。『〔爾雅〕釋詁』曰「弼、俌也」。『人部』曰「俌、輔也」。俌輔音義皆同也。『詩〔 秦風・小戎〕』曰、交韔二弓、竹閉緄縢。《傳》云、交韔、交二弓於韔中也。閉、紲。緄、繩。縢、約也。『小雅〔角弓〕』騂騂角弓、翩其反矣。《傳》曰、騂騂、調利皃。不善紲檠巧用則翩然而反也。『〔儀禮〕士喪禮・注』曰、柲、弓檠。弛則縛之於弓裏備損傷。以竹爲之。『詩』所謂竹柲緄縢。『木部』曰、榜、所以輔弓弩檠榜也。然則曰檠、曰榜、曰柲、曰閉者、竹木爲之。曰紲、曰縢者、縛之於弛弓以定其體也。弓必有輔而後正。人亦然。故輔謂之弼。
从弜㐁聲。徐鍇曰、㐁非聲。按非也。㐁下曰、一讀若誓。弻字从此。誓與弻同十五部也。房密切。『玉篇』曰、今字作弼。
- 𢐡
古文𢐀如此。从重㐁者、取會意。㐁、舌皃也。弛弓之檠、如口中之舌。二弓則二舌矣。重㐁以見二弓也。
亦古文𢐀。攴、小擊也。榜之則不無扑擊。
𢐀或如此。弗者、矯也。故从弗。弗亦聲。
康煕字典
- 部・劃數
- 弓部・九劃
- 古文
- 𠡂
- 㢸
- 𠨒
- 𢘍
- 𢏇
- 𢼥
『唐韻』房密切『集韻』『韻會』『正韻』薄密切、𠀤頻入聲。〔音1〕『說文』本作𢐀。㐁、舌也。舌柔而弓剛、以柔从剛、輔弼之意。『韻會』所以輔正弓弩者。『正韻』正弓器也。
又『爾雅・釋詁』俌也。《註》俌猶輔也。『書・大禹謨』明于五𠛬、以弼五敎。又『說命』夢帝賚予良弼。『越語』憎輔遠弼。《註》相道爲輔、矯過爲弼。
又戾也。『前漢・五行志』君臣故弼、兹謂悖。《註》弼、猶相戾也。悖、惑也。
又『爾雅・釋詁』重也。《註》弼輔、所以爲重疉也。
又『揚子・方言』弼、高也。
又通作拂。『孟子』入則無法家拂士。
又叶平祕切、音備。『李嵩・述志賦』赳赳干城、翼翼上弼。志馘奔鯨、截彼醜類。
『集韻』或作𢐡。
- 部・劃數
- 弓部・五劃
『集韻』弼古作𢏇。註詳九畫。
- 部・劃數
- 弓部・七劃
『玉篇』古文弼字。『廣雅』擊也。餘詳九畫註。
- 部・劃數
- 弓部・九劃
『說文』弼本字。
- 部・劃數
- 弓部・九劃
『類篇』同弼。
- 部・劃數
- 弓部・十二劃
『說文』𢐀字重文。
- 部・劃數
- 力部・五劃
『玉篇』古文弼字。註見弓部九畫。
- 部・劃數
- 卩部・四劃
『玉篇』『集韻』𠀤古文弼字。註見弓部九畫。
『正字通』與邑部𨚍義別。
- 部・劃數
- 心部五劃
『韻會』古文弼字。註詳弓部九畫。
又『玉篇』與怫同。
又『五音集韻』芳未切。與髴通。『前漢・郊祀歌』相放𢘍。《註》顏師古曰、放猶髣、𢘍猶髴也。
- 部・劃數
- 攴部六劃
『集韻』弼、古作𢼥。註詳弓部九畫。
音訓義
- 音
- ヒツ(漢) ビチ(呉)⦅一⦆
- 訓
- たすける⦅一⦆
- ただす⦅一⦆
- ゆだめ⦅一⦆
- すけ〔國訓〕
- 官話
- bì⦅一⦆
- 粤語
- bat6⦅一⦆
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・入聲・質・弼』房密切
- 『集韻・入聲上・質第五・𢐀』薄密切
- 『五音集韻・入聲卷第十四・質第一・並三弼』房密切
- 聲母
- 並(重唇音・全濁)
- 等呼
- 三
- 官話
- bì
- 粤語
- bat6
- 日本語音
- ヒツ(漢)
- ビチ(呉)
- 訓
- ゆだめ
- たすける
- ただす
- 義
- 弓矯。弓の形を矯正する器具。
- 君主を輔佐する。輔弼。
- 君主を輔佐する臣下。良弼。
- 過ちを正す。匡弼。
- 釋
- 『廣韻』
弼: 輔也、備也。房密切。十。 𢐀: 上同。『說文』作此。 㢸: 同上。 𠡂: 並古文。
- 『廣韻』
𢘍: 輔也。
- 『集韻』
𢐀𢐡㢸𢼥𢏇弼拂𠨒𠡂𢘍: 薄密切。『說文』輔也、重也。徐鍇曰、㐁、舌也。舌柔而弜剛以柔从剛輔弼之意。或从二㐁、古作㢸𢼥𢏇、隷作弼。或作拂𠨒𠡂𢘍、通作佛。『說文〔丿字條〕』「右戾也。象左引之形。」文二十三。
- 『康煕字典』上揭。
國訓
- 訓
- すけ
- 義
- 彈正臺(jawp)の次官。彈正大弼、彈正少弼。
解字
白川
形聲。聲符は弜(補註: 弜と同字か否か不詳)。百はもと㐁(敷物の形)に作り、席の象形。
『說文』に輔なり
(段注本)といひ、弓の形を直す檠󠄀の意とし、弜に從ひ㐁聲
とするが、聲が異なる。㐁が意符、弜が聲符であるから、㐁によつて字義を考へるべし。
金文の賜與に「金簟𢐀」とあるものは金飾りのある車の蔽ひで、『詩・小雅・采芑』に簟笰魚服
(魚皮で作つた箙)と歌はれてゐる簟笰が、金文の簟𢐀に當たり、弼は車の蔽ひを原義とする字。
輔弼の意に用ゐるのは、檠󠄀の意に用ゐてのち、義が轉じたものであらう。
藤堂
弓二つと㐁の會意。㐁は、丙(ももを開いたさま)の下に一印をつけて、ももを開かぬやうに締めた姿を示す。弼は、弓を兩側から締め附けて、歪みを正す弓矯を示す。轉じて、そばから締め附けて不謹愼な動きをさせぬやうに輔佐すること。
漢字多功能字庫
金文は㐁に從ひ弜聲。㐁の甲骨文は簟の象形初文で、竹席(竹で編んだ蓆)の形に象る。
この字の釋義には二説がある。
吳大澂は、弼は車蔽のことで、車廂(車箱)の前後の遮蔽物を表し、ゆゑに㐁に從ふとする。
唐蘭は、弼字は竹席を用ゐて二張の弓を縛ること、『說文解字』の或體の𢐡は二つ重ねた竹席を用ゐて一張の弓を縛るさまに象り、弼の本義は弓を弛める(つまり弓弦を外す)ときに弓に卷き附けて弓を保護するのに用ゐる器物のことで、補助の義を派生する、とする。
番生簋蓋金簟弼
に二種類の解釋がある。一説には「簟弼」は車蔽のこととする。他の一説には弓を保護する器物で、弓柲(弓につける、弓を保護する竹片)のこと、典籍に柲、枈あるいは閉に作る、とする。按ずるに毛公鼎、番生簋では「簟弼」と車のアクセサリは一緒に賞賜されてをり、車蔽とする説の方が合理的であらう。このほか、弼はまた輔弼、輔佐を表す。者𣱼鐘哉弼王宅
。
『字彙』弼、輔也、助也、正也。
屬性
- 弼
- U+5F3C
- JIS: 1-41-11
- 𢏇
- U+223C7
- 㢸
- U+38B8
- 𢐀
- U+22400
- 弻
- U+5F3B
- JIS X 0212: 28-79
- 𢐡
- U+22421
- 𠡂
- U+20842
- 𠨒
- U+20A12
- 𢘍
- U+2260D
- 𢼥
- U+22F25