邑 - 漢字私註
説文解字
國也。从囗。先王之制、尊卑有大小。从卪。凡邑之屬皆从邑。
- 六・邑部
説文解字注
國也。鄭莊公曰、吾先君新邑於此。『左傳』凡偁人曰大國、凡自偁曰敝邑。古國邑通偁。『白虎通〔京師〕』曰、夏曰夏邑、商曰商邑、周曰京師。『尚書〔太甲上〕』曰西邑夏、『〔同・多士〕』曰天邑商、『〔同・康誥〕』曰作新大邑於東國雒、皆是。『周禮〔地官〕』四井爲邑。『左傳〔莊二十八年〕』凡邑、有宗廟先君之主曰都、無曰邑。此又在一國中分析言之。从囗。音韋。封域也。先王之制、尊卑有大小。从卪。尊卑謂公矦伯子男也。大小謂方五百里、方四百里、方三百里、方二百里、方百里也。《土部》曰、公矦百里伯七十里、子男五十里。從『孟子〔萬章下〕』說也。尊卑大小出於王命。故從卪。於汲切。七部。
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
『集韻』於汲切『集韻』『韻會』乙及切『正韻』一入切、𠀤音浥。『說文』國也。『正韻』都邑也。『釋名』邑、人聚會之稱也。『史記・五帝紀』舜一年而所居成聚、二年成邑。『周禮・地官・小司徒』四井爲邑、四邑爲丘。又『載師』以公邑之田任甸地、以家邑之田任稍地。《註》公邑、謂六遂之餘地。家邑、謂大夫之采地。
又王畿亦稱邑。『書・湯誓』率割夏邑。『詩・商頌』商邑翼翼。
又侯國亦稱邑。『書・武成』用附我大邑周。『詩・大雅』作邑于豐。
又於邑、氣逆結不下也。『楚辭・九章』氣於邑而不可止。『前漢・成帝贊』言之可爲於邑。《註》於邑、短氣也。
又邑邑、與悒悒通。『史記・商君傳』安能邑邑待數十百年。
又複姓。『廣韻』漢有邑由氏。
又『集韻』『正韻』𠀤遏合切、音姶。阿邑、與阿匼同、諂諛迎合貌。『前漢・張湯傳』以智阿邑人主、與俱上下。
又叶弋灼切、音藥。『後漢・杜篤・論都賦』成周之隆、乃卽中洛。遭時制都、不常厥邑。
『說文』从口、音圍、象四境。卪聲。尊𤰞大小有等、故从卪會意。偏旁作阝、俗从口从巴。非。
音訓
- 音
- イフ(漢) オフ(呉) 〈『廣韻・入聲・緝・邑』於汲切〉[yì]{jap1}
- 訓
- むら。みやこ。くに。
解字
白川
囗と巴の會意。巴は卪で人の跪坐する形。城中に人のある意で、城邑、都邑をいふ。
『説文解字』に國なり。囗に從ふ。先王の制、尊卑大小有り。卪に從ふ。
とあり、卪を大小の節の意とするが、卪は人の蹲踞する象。
囗の下に三人相竝んで立つものは衆、卜文に囗下に乑を記す。卜辭に大邑商の名が見え、王都を大邑といつた。周初の新邑は成周、後の洛陽で、成周とは武裝都市の意。
『左傳』に見える外交の辭に、自國のことを弊邑、小邑といふ。
また村落をいひ、金文の《𦅫鎛》に二百九十九邑と民人都鄙とを賜與することをいふ。
『左傳・莊二十八年』に凡邑、有宗廟先君之主曰都、無曰邑。
(凡そ邑に宗廟先君の主(位牌)有るを都と曰ひ、無きを邑と曰ふ。)と見える。
藤堂
囗(領地)と人の屈服したさまの會意。人民の服從するその領地を表す。中に塞ぎ込めるの意を含む。のち阝の形となり、町や村、または場所を表すのに用ゐる。
落合
甲骨文での用義は次のとほり。
- 都市。聚落。規模の大小を問はず使はれ、殷王朝の都は大邑商や天邑商などとも稱される。地名を附して「某邑」とする用法もある。《合補》1847
貞、茲邑其有震。
- 都市を數へる序數詞。《甲骨拼合集》295
…壬辰亦有來、自西插…、征我奠、[屮戈]四邑。
- 地名またはその長。第一期(武丁代)には領主が邑子とも呼ばれてゐる。《合補》1241
貞、邑不其來告。
- 三十邑
- 都市群。殷都周邊の小都市の概數であらう。
- 西邑
- 西方の都市。殷代前期の都である亳か。
字形は卩が楷書で巴に變化し、丁の形である方形と合はせて「邑」になつた。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は、囗と卩に從ふ。卩は跪坐する人に象る。囗は疆界を代表する。考古學の發掘で夏商の城郭は多く方形を呈し、證となすべし(參・徐中舒)。故に邑の本義は人の集まり住む所。『釋名・釋州國』邑、人聚會之稱也
。このほか、古人は國都を重視し、都を以て國を代表した。國名と都名は往々にして相通ず。商代、盤庚が殷に遷都した後、商朝をまた殷と呼ぶ。故に邑は國と呼び、暗に都邑を指す。甲骨文、金文ではしばしば大邑商、天邑商と稱し、商國を指す。《合集》36530才(在)大邑商
。𣄰尊隹珷王既克大邑商。
『尚書・周書』惟臣附于大邑周。
甲骨文ではまた人名に用ゐる。
金文での用義は次のとほり。
- 族名、人名に用ゐる。
- 都邑を表す。洹子孟姜壺
其人民都邑
。 - 區域の單位に用ゐる。齊鎛
侯氏易(賜)之邑二百又九十又九邑
。
戰國文字では地名に多用する。
屬性
- 邑
- U+9091
- JIS: 1-45-24
- 人名用漢字
關聯字
邑に從ふ字を漢字私註部別一覽・囗部・邑枝に蒐める。