閒 - 漢字私註

説文解字

閒
隟也。从
十二門部
𨳢
古文閒。

説文解字注

閒
𨻶也。隙者、壁際也。引申之、凡有兩邊有中者皆謂之𨻶。𨻶謂之閒。閒者、門開則中爲際。凡罅縫皆曰閒。其爲有兩有中一也。『攷工記』說鐘銑與銑之閒曰銑閒。篆與篆、𡔷與𡔷、鉦與鉦之閒曰篆閒𡔷閒鉦閒。病與瘳之閒曰病閒。語之小止曰言之閒。閒者、稍暇也。故曰閒暇。今人分別其音爲戶閑切。或以代之。閒者、𨻶之可尋者也。故曰閒廁、曰閒迭、曰閒隔、曰閒諜。今人分別其音爲古莧切。『釋詁』『毛傳』曰、閒、代也。『釋言』曰、閒、俔也。『人部』曰、俔、閒見也。『厂部』曰、㕊、石閒見也。今音皆去聲。凡自其單出言之曰閒。从門月。會意也。門開而月入。門有縫而月光可入。皆其意也。古閑切。十四部。
𨳿
古文閒。此篆各本體誤。汗𥳑等書皆誤。今攷正。與古文恒同、中从古文月也。

康煕字典

部・劃數
門部四劃
古文
𨳡
𨳢

『唐韻』古閑切『集韻』『韻會』居閑切『正韻』居顏切、𠀤音蕑。『說文』隙也。从門从月。會意、亦形。『徐鍇曰』門夜閉。閉而見月光、是有閒𨻶也。『禮・樂記』一動一靜者、天地之閒也。『莊子・山木篇』周將處夫材不材之閒。又『史記・郭解傳』洛陽人有相讐者、邑中賢豪、居閒以十數、終不聽。《註》居中爲他道和輯之。『周語』我先王不窋、用失其官、而自𥨥於戎、翟之閒。

又容也。『禮・文王世子』凡待坐於大司成者、遠近閒三席。《註》閒、猶容也。『前漢・文帝紀』願請閒。『師古註』閒、容也。猶今言中閒也。請容暇之頃、當有所𨻰也。

又𥳑也。『釋名』閒、𥳑也。事功𥳑省也。

又車𤛉聲也。『詩・小雅』閒關車之𤛉兮。《傳》閒關、設𤛉聲也。

又黃閒、弩名。『前漢・李廣傳』射以大黃。《註》黃肩弩。晉灼曰:卽黃閒、大黃、其大者也。

又地名。『春秋・昭二十二年』大蒐于昌閒。

又人名。『史記・項羽紀』田角弟田閒、故齊將。又『樂毅傳』以樂毅子閒爲昌國君。《註》閒、紀閒反。

又『集韻』『韻會』何閒切『正韻』何艱切、𠀤音閑。『集韻』安也。『詩・周南・窈窕淑女傳』言后妃有關雎之德、是幽閒貞專之善女。《朱傳》有幽閒貞靜之德。『左傳・僖三十三年』皇武子曰、吾子取其麋鹿、以閒敝邑、若何。『周禮・地官・旅師』掌聚野之耡粟、屋粟、閒粟。《註》閒民無職事者所出。『釋文』𠀤音閑。『禮・王制』其餘以祿士、以爲閒田。『史記・信陵君傳』侯生乃屛人閒語。《註》閒音閑。謂靜語也。又『司馬相如傳』雍容閒雅、甚都。《註》韋昭曰、閒、讀曰閑。

又𨻶也。『禮・曲禮』少閒願有復也。《註》言欲須少空閒、有所白也。

又『廣韻』近也。『左傳・成十六年』以君之靈、閒蒙甲冑。《註》閒、猶近也。

又『廣韻』古莧切『集韻』居莧切『韻會』居諫切『正韻』居晏切、𠀤音襉。『爾雅・釋詁』代也。『書・立政』相我受民、和我庶獄庶愼、時則勿有閒之。《傳》閒、代也。『詩・周頌』皇以閒之。『儀禮・燕禮』乃閒歌魚麗、笙由庚。

又『爾雅・釋言』俔也。《註》左傳謂之諜。今之細作也。『釋文』閒音諫。

又『博雅』䛼也。『釋文』𧨚卽𧨚謗之𧨚。

又『廣韻』厠也。『易・屯卦註』固志同好、不容他閒。正義曰、閒者、厠也。五應在二、是堅固其志、在於同好、不容他人閒厠其閒也。『左傳・隱三年』石碏曰、遠閒親、新閒舊。『釋文』閒、閒厠之閒。

又迭也。『書・益稷』笙鏞以閒。《傳》閒、迭也。《疏》更迭閒厠、相代之義、故閒爲迭也。吹笙擊鐘、更迭而作。

又隔也。『前漢・楚元王傳』或脫𥳑、或閒編。《註》閒、古莧反。謂舊編爛絕、就更次之、前後錯亂也。『韋玄成傳』閒歲而祫。《註》閒歲、隔一歲也。

又與也。『左傳・莊十年』齊師伐我、公將戰、曹劌請見、其鄕人曰、肉食者謀之、又何閒焉。《註》閒、猶與也。

又空也。『前漢・高帝紀』步從閒道走軍。《註》閒、空也。投空𨻶而行、不公顯也。

又離也。『晉語』且夫閒父之愛、而嘉其貺。《註》閒、離也。

又遠也。『淮南子・俶眞訓』溝中之斷、則醜美有閒矣。《註》閒、遠也。

又非正色曰閒。『詩・衞風・綠兮衣兮傳』綠、閒色。

又『廣韻』瘳也。『正字通』病恆在身、無少空𨻶、今病旣損有空𨻶、故謂病瘳爲閒也。

又送也。

又『正字通』非訾、亦曰閒。

又致𨻶曰閒。『左傳・定四年』閒𢙄王室。

又以計愚敵曰反閒。孫子兵法、反閒者、因敵閒而用之也。

又地名。『戰國策』割河閒以事秦。《註》閒音諫。趙地。

又『集韻』賈限切、音𥳑。地名。引春秋、大蒐于昌閒。○按陸德明音義、閒如字、無作上聲讀者。未知集韻何據。

又『博雅』閒、覗也。『釋文』閒、孤限切。覗、音司。

又『集韻』下瞎切、音𤛉。『爾雅・釋詁』代也。施乾讀。

又『韻補』叶音巾。『高彪詩』人有計策、六奇五閒。總兹三事、謀則咨詢。

部・劃數
門部四劃

『集韻』古作𨳡。註詳本畫。

部・劃數
門部四劃

『玉篇』古文字。註詳本畫。

部・劃數
門部四劃

『正字通』同。俗字。

異體字

『説文解字注』の重文。古文。

『康煕字典』に同形の字を錄するが、音義が異なる別字。

簡体字。

音訓・用義

(1) カン(漢) ケン(呉) 〈『廣韻・上平聲・山・閒』古閑切〉[jiān]{gaan1}
(2) カン(漢) 〈『集韻』何艱切、音閑、平聲山韻〉[xián]{haan4}
(3) カン(漢) ケン(呉) 〈『廣韻・去聲・襇・襇』古莧切〉[jiàn]{gaan3}
(1) あひだ(時間、空間、中間)。ま。へや。ころ。このごろ。
(2) ひま。しづか。
(3) すきま(間隙、間斷)。へだてる(間接、離間)。うかがふ(間者、間諜)。かはる。いえる。

本邦では長さの單位に用ゐる。一間は六尺。

解字

白川

の會意。

『説文解字』に隙なり。門と月とに從ふ。とし、古文として𨳢を錄す。

月は月光であると解されてゐるが、金文の字形によつて考へると、廟門に肉を置いて祈る儀禮を示す字であるらしく、そこから離隔、安靜の意が生ずるのであらう。

左傳・定四年管蔡啟商、惎間王室(管(叔)蔡(叔)商をひらきて王室を惎閒す)とあり、その呪詛的方法を示す字と考へられる。

藤堂

會意。門の扉の隙間から月の見えることを表すもので、二つに分けるの意を含む。

本來の意のほか、の意にも用ゐられる。

漢字多功能字庫

金文はに從ふ。あるいは月ではなくや外に從ふ。月、夕いづれも月を表す。外は聲符。閒の異體の𨳿と『說文解字注』の古文や楚簡は同じ形。閒字は月光が門扉の隙間から入る形に象り(何琳儀)、本義は門の間の空隙。『説文解字』に隟なりとあり、隟は隙の古文。『說文解字注』は古文𨳢を𨳿に改め、註に門開而月入、門有縫而月光可入といふ。徐鍇は夫門夜閉、閉而見月光、是有閒𨻶也。と曰ふ。

閒の本義は門の隙間。

また閒隔、之閒のやうに、空間や時間の距離の意を派生する。

また中間の意を派生する。

また、離閒、疎遠ならしむるの意を派生する。

空隙、閒隔、離閒の義の閒の異體を間に作る。閒にまた空き時間、暇の意を派生する。閒暇の義の閒の異體をに作る。

金文での用義は次のとほり。

祕密の使者を派遣して昭王を迎へるの意。

金文は門とに從ふ。日光が門扉の隙間から射し込むさまを表し、本義は門に間隙あること、空間上の間隙の意を派生する。間は空隙を表す閒の異體字。閒はまた時間上の空隙、空閒、閒暇の義を派生し、閒字で表示し、簡化字をに作る。間隔の義(時間と空間の距離を表す)は間と閒の字に同時に保留されてゐる。

曹植〈贈白馬王彪〉蒼蠅間白黑,讒巧令親疎。蒼蠅の模樣は白黑交互で、讒言巧語は親しき人を疎遠にさせる、の意。

間隔、距離、空隙の意から、嫌隙(惡感情、仲違ひ、不和)、隔閡(わだかまり、隔たり)の意を派生する。

また動詞に用ゐ、離間する、疎遠にさせることを表す。『逸周書・武紀』間其疏、薄其疑。朱右曾校釋間、謂設事以離間之。疎遠な臣を離間し、疑心のある官員に迫る、の意。

二物の隔たるところは二者の中間であり、故に中間の意を派生する。

金文では、疑ふらくは地名となす。間右庫戈間右庫の「右庫」は右兵庫を指し、左兵庫と區別する。疑ふらくは全句で、間の地の右兵庫を指す。『類篇・門部』間、地名、『春秋傳』大蒐于昌間。あるいは假借して縣となし、縣内の右兵庫を指す(沈培)。

戰國竹簡では閒を借りて縣となす。《清華簡二・繫年》簡99𨳿(閒;縣)陳、蔡は、陳の地、蔡の地を縣となすことをいふ。

屬性

U+9592
𨳡
U+28CE1
𨳢
U+28CE2
U+9593
JIS: 1-20-54
當用漢字・常用漢字
𨳿
U+28CFF
U+95F4

關聯字

閒に從ふ字

漢字私註部別一覽・戶部・閒枝に蒐める。

其の他

𨳿
『康煕字典』に『説文解字注』の閒の古文と同形の字を錄するが、音義が異なる別字。