放 - 漢字私註
説文解字
説文解字注
本文には異同なく、註には甫妄切。十部。
といふのみ。
康煕字典
- 部・劃數
- 攴部・四劃
- 古文
- 匚
『唐韻』『集韻』『韻會』𠀤甫妄切、音舫。『說文』逐也。『小爾雅』棄也。『書・舜典』放驩兜于崇山。《疏》放逐。『左傳・宣元年』晉放其大夫胥甲父于衞。《註》放者、受罪黜免、宥之以遠。
又『書・武成』放牛于桃林之野。《疏》據我釋之、則云放。
又『禮・曲禮』毋放飯。《註》去手餘飯於器中。
又『左傳・昭十六年』獄之放紛。《註》放、縱也。
又『論語』隱居放言。《何晏註》放、置也、不復言世務。
又『孟子』如追放豚。《趙岐註》放逸之豕。
又『博雅』妄也。『玉篇』散也。『增韻』肆也、捨也。『正韻』廢也。
又『廣韻』分兩切『集韻』甫兩切『正韻』妃兩切、𠀤音昉。同倣。學也。『玉篇』比也。『類篇』效也。『書・堯典』曰若稽古帝堯、曰放勳。《疏》能放效上世之功。
又『周禮・天官』食醫、凡君子之食恆放焉。《註》放、猶依也。
又『孟子』放乎四海。《趙岐註》放、至也。
又『集韻』分房切。方、或作放、倂船也。『前漢・禮樂志』神裴回若留放、殣冀親以肆章。
集韻
- 卷・韻・小韻
- 平聲三・陽第十・方
- 反切
- 分房切
分房切。『說文』併船也。象兩舟。
或从水。亦作放舫。
方、一曰矩也、道也、類也、且也。
亦姓。
文二十四。
- 卷・韻・小韻
- 上聲下・養第三十六・昉
- 反切
- 甫兩切〔音2〕
效也。
或从人〔仿〕。亦作方㑂。
- 卷・韻・小韻
- 去聲下・漾第四十一・放
- 反切
- 甫妄切〔音1〕
甫妄切。
『說文』逐也。
古作匚。
文七。
音訓義
- 音
- ハウ(漢)(呉)⦅一⦆
- ハウ(漢)(呉)⦅二⦆
- ハウ(漢)(呉)⦅三⦆
- 訓
- はなつ⦅一⦆
- はなす⦅一⦆
- おふ⦅一⦆
- まかす⦅一⦆
- ほしいままにする⦅一⦆
- おく⦅一⦆
- ならふ⦅二⦆
- 官話
- fàng⦅一⦆
- fǎng⦅二⦆
- fāng⦅三⦆
- 粤語
- fong3⦅一⦆
- fong2⦅二⦆
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・去聲・漾・放』甫妄切
- 『集韻・去聲下・漾第四十一・放』甫妄切〔集韻2〕
- 『五音集韻・去聲卷第十二・漾第一・非三放』甫妄切
- 聲母
- 非(輕脣音・全清)
- 等呼
- 三
- 官話
- fàng
- 粤語
- fong3
- 日本語音
- ハウ(漢)(呉)
- 訓
- はなつ
- はなす
- おふ
- まかす
- ほしいままにする
- おく
- 義
- 解き放つ、逃がす。放免、解放など。
- 追ひ遣る、退ける、遠ざける。追放、放逐、放伐など。
- 棄てる、置く。放棄、放置、放擲など。
- したいやうにさせる。また、したいやうにするさま。放恣、放任、放言、放縱、放蕩など。
⦅二⦆
- 反切
- 『廣韻・上聲・養・昉』分网切
- 『集韻・上聲下・養第三十六・昉』甫兩切〔集韻1〕
- 『五音集韻・上聲卷第九・養第一・非・三昉』分兩切
- 聲母
- 非(輕脣音・全清)
- 等呼
- 三
- 官話
- fǎng
- 粤語
- fong2
- 日本語音
- ハウ(漢)(呉)
- 訓
- ならふ
- 義
- 倣に通じ、眞似する、見倣ふ、學ぶ。放古、放效など。『廣韻』
上〔倣〕同。
『集韻』效也。
⦅三⦆
- 反切
- 『集韻・平聲三・陽第十・方』分房切〔集韻〕
- 『五音集韻・下平聲卷第五・陽第一・非三・方』府良切
- 聲母
- 非(輕脣音・全清)
- 等呼
- 三
- 官話
- fāng: 藤堂に據る。漢語資料未見。
- 日本語音
- ハウ(漢)(呉)
- 義
- 藤堂は、仿、舫に當て、左右に張り出して竝べる意で、「ならべる」と訓ずるとする。
- 『集韻』は、『説文解字』に
併船也
とする方を亦た放に作るとする。 - 『五音集韻』は
併舡也
とする汸の或體として擧げる。
解字
白川
方と攴の會意。方は架屍の形。これを毆つて邪靈を放逐する共感呪術的な呪儀。
『説文解字』に逐ふなり
と訓じ、方聲とするが、方は毆擊を加へる對象物。
その架屍に頭部の形を加へたものは敫で、徼の初文。巫女を毆つものは微、長髮の人を毆つものは徵、傲。邪靈を微くし、徼めるところを徵するもので、敵に傲る相似た呪法をいふ。みな古代祭梟(首祭)の俗を示す字。
藤堂
攴(動詞の記號)と音符方の會意兼形聲。方は、兩側に柄の伸びた耜を描いた象形字。放は、兩側に伸ばすこと。緊張や束縛を解いて、上下左右に自由に伸ばすこと。
落合
方亦聲とする説もあるが、方の字源が明確ではないため、いづれも否定できないものの、積極的に支持する論據もない。
漢字多功能字庫
金文では倣效(眞似る、手本にする)を表す。
- 中山王方壺
有純德遺訓、以陀(施)及子孫。用朕所放(倣)。
『廣雅』放、效也。
古書での用例は次の如し。
- 『尚書・堯典』
曰若稽古、帝堯曰放勛。
孔穎達疏能放效上世之功。
- 『墨子・法儀』
巧者能中之、不巧者雖不能中、放依以從事、猶逾己。
金文ではまた讀んで方となす。多友鼎玁狁放(方)𤼈(興)
(參・李學勤)
倣效の義より引伸して依據を表す。
- 『論語・里仁』
放于利而行、多怨。
- 『國語・楚語』
盜賊司目、民無所放。
韋昭注放、依也。
驅逐、放逐を表す。
- 『左傳・襄公二十九年』
齊公孫蠆、公孫竈放其大夫高止於北燕。
杜預注放者、宥之以遠。
- 『楚辭・九章・悲回風』
求介子之所存兮、見伯夷之放迹。
王逸注放、放逐。
釋放を表す。
- 『韓非子・說林上』
管仲、隰朋從於桓公而伐孤竹、春往冬反、迷惑失道。管仲曰、老馬之智可用也。乃放老馬而隨之、遂得道。
- 唐・白居易〈七德舞〉
怨女三千放出宮、死囚四百來歸獄。
捨棄、放棄を表す。
- 『論語・衛靈公』
放鄭聲、遠佞人。鄭聲淫、佞人殆。
- 『漢書・哀帝紀』
鄭聲淫而亂樂、聖王所放、其罷樂府。
顏師古注放、棄也。
放縱、不拘束を表す。『廣雅・釋言』放、妄也。
- 『孟子・滕文公下』
湯居亳、與葛為鄰、葛信放而不祀。
趙岐注放縱無道、不祀先祖。
- 『呂氏春秋・審分』
聽其言而察其類、無使放悖。
高誘注放、縱也。
擱置、放下(ともに放置の意)を表す。『廣雅・釋詁四』放、置也。
- 『莊子・知北游』
神農隱几擁杖而起、嚗然放杖而笑。
- 『三國志・魏書・王毌丘諸葛鄧鍾傳』
(姜)維至廣漢郪縣、令兵悉放器仗。
發放(貸し附ける、支給する、放出する)、施與(惠み與へる)を表す。
- 唐・韓愈〈御史臺上論天旱人饑狀〉
陛下恩踰慈母、仁過春陽、租賦之間例皆蠲免、所徵至少、所放至多、上恩雖弘、下困猶甚。
- 『紅樓夢』第39回
這個月的月錢、連老太太、太太屋裡還沒放、是為甚麼?
また特に金錢を人に貸し附け、定期に利息を取ることを指す。
- 『後漢書・桓譚馮衍列傳』
今富商大賈、多放錢貨、中家子弟、為之保役、趨走與臣僕等勤、收稅與封君比入。
李賢注保役、可保信也。收稅、謂舉錢輸息利也。
屬性
- 放
- U+653E
- JIS: 1-42-92
- 當用漢字・常用漢字