雚 - 漢字私註
説文解字
小爵也。从雈吅聲。『詩』曰、雚鳴于垤。
- 四・雈部
説文解字注
雚爵也。三字句。爵當作雀。雚今字作鸛。鸛雀乃大鳥。各本作小爵。誤。今依『太平御覽』正。陸機《疏》云、鸛、鸛雀也。亦可證。陸云、似鴻而大。『莊子』作觀雀。《土部》垤下、《鳥部》鳳下皆作鸛。係俗改。从雈吅聲。工奂切。十四部。『詩』曰、雚鳴于垤。『豳風』文、今『詩』作鸛。『釋文』曰、本又作雚。
康煕字典
- 部・劃數
- 隹部十劃
『唐韻』工換切『集韻』『正韻』古玩切、𠀤音灌。『說文』雚、小爵也。从萑吅聲。『玉篇』水鳥。『詩・豳風』雚鳴于垤。『集韻』或作鸛。
又草名。『爾雅・釋草』雚、芃蘭。《註》雚芃蔓生、斷之有白汁、可啖。『釋文』雚、音貫。
又『集韻』胡官切、音桓。與芃同。詳艸部芃字註。
又『集韻』古丸切、音官。水鳥也。或作鸛。
音訓
- 音
- クヮン(漢、呉) 〈『廣韻・去聲・換・貫』古玩切〉[guàn]{gun3}
解字
白川
象形。毛角があり、大きな目をした鳥の形に象る。雈は毛角のある鳥で木菟。それに目を加へてゐる。
『説文解字』に小爵(雀)なり
とし、吅聲とするが、形聲字の構造法とし難い。
『玉篇』に水鳥なり
といふのは、猩々鷺の類であらう。
卜辭に「往きて雚せんか」「酒もて雚せんか」「雚してまつりせんか」「雚藉せんか」などの辭例があり、雚は農耕儀禮に關する祭儀をいふ字であらう。金文にも《效尊》に王、嘗に雚す
(下揭)とあり、農耕の重要な儀禮であるらしい。鳥形の字であるから鳥占を行ふ意かと思はれるが、儀禮の詳しいことは知られない。
藤堂
小鳥の名。のち、鷽(山鵲)と呼び、天候を豫知して朝夕に鳴くと言はれた。
落合
雈は冠羽を持つ鳥の姿に象る。雚はそれに二つの口を加へた會意の字體。甲骨文では、雈、雚は、觀の意味に用ゐられてゐる。
雚を鸛の初文とする説もあるが、鸛には目立つた冠羽はないので、元は鷺や朱鷺など別の鳥の象形であらう。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は、雈と吅に從ひ、吅は聲符。甲骨文はあるいは三口に從ひ、梟の類が鳴くさまと解く。雈と雚はもと一字で、梟の類を指す。吅は梟の兩目に象るとする學者もゐる(董作賓、趙誠)が、甲骨文には三口に從ふ形もあり、古文字に未だ口の形を眼睛を表すのに用ゐるものが見えず、疑はしい。戰國竹簡の雚字の上部の卝は亼に變形してゐる。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 讀みて觀となし、見ることを表す。《屯南》2232
王其雚日出
。 - 祭名。《合集》32138
雚歲。
金文での用義は次のとほり。
- 祭名に用ゐる。典籍の灌、祼に相當する。御尊
王才(在)圃、雚京。
(《集成》9890) 王は周の都に對して灌祭を行ふの意。『說文』祼、灌祭也。
『詩・大雅・文王』祼將于京
。 - 讀みて觀となす。效卣
王雚(觀)于嘗。
王は嘗の地を遊覽、巡察する、の意(方濬益、楊樹達)。
戰國竹簡でも讀みて觀となし、見ることを表す。《郭店楚簡・六德》簡24-25雚(觀)者(諸)『𠱾(詩)』、『箸(書)』則亦才(在)矣(壴)。雚(觀)者(諸)『豊(禮)』、『樂』則亦才(在)壴(矣)。雚(觀)者(諸)『易』、『春秋』則亦才(在)壴(矣)。
『說文』雚、小爵也。
段注爵當作雀。
桂馥義證小當為水
。雚の本義は梟であるが、水雀とする説も檢討に足る。
屬性
- 雚
- U+96DA
- JIS: 2-91-83
- JIS X 0212: 70-86
關聯字
雚に從ふ字を漢字私註部別一覽・隹部・雚枝に蒐める。