苛 - 漢字私註
説文解字
小艸也。从艸可聲。
- 一・艸部
説文解字注
小艸也。引伸爲凡瑣碎之稱。从艸可聲。乎哥切。十七部。
康煕字典
- 部・劃數
- 艸部・五劃
『集韻』『韻會』『正韻』𠀤寒歌切、音何。『說文』小草也。
又『廣韻』政煩也。『禮・檀弓』苛政猛于虎。『前漢・高帝紀』父老苦秦苛法久矣。『師古註』苛、細也。
又『禮・內則』問衣燠寒、疾痛苛癢、而敬抑搔之。『爾雅・釋言』苛、妎也。《註》煩苛者、多疾妎。
又『周禮・春官・世婦』大喪、比外內命婦之朝、莫哭不敬者、而苛罰之。《註》苛、譴也。
又『晉語』朝夕苛我邊鄙。《註》苛、擾也。
又『素問』苛疾不生。《註》苛、重也。
又『揚子・方言』苛、怒也。
又姓。『正字通』漢苛異。
又上聲。『類篇』下可切、音荷。急也。
又『集韻』虎何切『羣經音辨』呼多切、𠀤音呵。苛察也。『鄭康成・說禮』司關掌苛察姦人。『前漢・王莽傳』大司空士夜過奉常亭、亭長苛之。
又『集韻』黑嗟切。義同。
音訓
- 音
- カ(漢) 〈『廣韻・下平聲・歌・何』胡歌切〉[kē]{ho1}
- 訓
- からい。きびしい。わづらはしい。いら。
解字
白川
形聲。聲符は可。
『説文解字』に小艸なり
とするが、『一切經音義・一』に『説文解字』を引いて尤劇なり
とし、苛酷の意とする。
可に呵叱の意がある。
藤堂
艸と音符可の會意兼形聲。可は、㇕印と口からなり、㇕型に曲折してきつい摩擦を起こす、喉を掠らせるなどの意。苛は、喉をひりひりさせる植物。轉じて、きつい摩擦や刺戟を與へる行爲のこと。
漢字多功能字庫
苛は後に多く細密で煩瑣なことを表し、引伸して殘酷、酷薄などを表す。
苛は多く細密煩瑣を表し、刻は過酷であることに重點を置く(王鳳陽)。『史記・淮陰侯列傳』大王之入武關、秋毫無所害、除秦苛法、與秦民約法三章耳。
「苛法」は秦代の繁多で細々とした法令の條文を指す。條文が繁多で多くを束縛し煩瑣に過ぎることを苛と呼ぶ。
- 《上博竹書二・容成氏》簡19
迲(去)苛而行柬(簡)
は、煩瑣な政令を除去して簡潔に纏めた政策を遂行するの意。 - 『淮南子・覽冥』
去煩苛之事、屏流言之迹。
は、繁雜で些細な事務を除去し、流言の擴がる經路を杜絶する、の意(參: 張玉春等)。
後に殘酷、苛酷の意を派生した。
- 『漢書・成帝紀』
凡事恕己、毋行苛刻。
- 『韓非子・內儲說下』
大不事君、小不事家、以苛刻聞天下。
「苛政猛於虎」の俗語の出典は『禮記・檀弓下』である。
金文では姓氏に用ゐる。秦苛𬂐勺冶吏秦、苛𬂐為之。
冶吏は鑄造の官吏。勺は酒水あるいは他の物を汲むための器具。この青銅の勺は冶吏の秦と苛𬂐の兩名によつて鑄造されたと記す。
璽印文字、戰國竹簡でも姓氏に用ゐる。
- 《古璽彙編》2257
苛慶
。 - 《漢印文字徵》
苛先印信
。 - 《包山楚簡》簡135
苛冒
。 - 《萬姓統譜》
苛、漢苛異、見『印藪』。
漢簡では假借して痾となし、疾病を表す。
- 《馬王堆・十問》簡35-36
身無苛(痾)𢘲(殃)
は、身體に病無く災ひ無しの意。 - 《馬王堆・十問》簡80
苛(痾)疾不昌、筋骨益強。
は、疾病生ぜず、筋骨が日增しに強壯となるの意。 - 『呂氏春秋・先識覽・知接』
常之巫審於死生、能去苛病。
「苛病」は「痾病」のこと。「常之巫」は齊・桓公の醫師。常之巫は能く生死を察知し、能く疾病を除く、の意。
屬性
- 苛
- U+82DB
- JIS: 1-18-55
- 常用漢字(平成22年追加)