可 - 漢字私註
説文解字
𦘫也。从口丂、丂亦聲。凡可之屬皆从可。
- 五・可部
説文解字注
肎也。肎者、骨閒肉肎肎箸也。凡中其肎綮曰肎。可肎雙聲。从口𠀀。口气舒。𠀀亦聲。肯我切。十七部。
康煕字典
- 部・劃數
- 口部・二劃
『唐韻』肯我切『集韻』『韻會』『正韻』口我切、𠀤音坷。『說文』肯也。『廣韻』許可也。『韻會』可者、否之對。『書・堯典』囂訟可乎。『文中子・事君篇』達人哉山濤也、多可而少怪。
又僅可、未足之辭。『論語』子曰、可也𥳑。
又『禮・內則』擇于諸母與可者。《註》諸母、衆妾也、可者、傅御之屬也。
又所也。『禮・中庸』體物而不可遺。《註》體猶生也、可猶所也。不有所遺、言萬物無不以鬼神之氣生也。
又姓。『正字通』唐諫議大夫可中正、宋紹興進士可懋。
又『字彙補』苦格切、音克。『魏書・吐谷渾傳』可汗、此非復人事。『唐書・突厥傳』可汗猶單于也、妻曰可敦。
又叶孔五切、音苦。『韓愈・元和聖德詩』負鄙爲難、縱則不可。出師征之、其衆十旅。
又叶口箇切、軻去聲。『魏文帝・寡婦賦』伏枕兮不寐、逮平明兮起坐。愁百端兮猥來、心鬱鬱兮無可。
又『集韻』歌古作可。註詳欠部十畫。
又讀作何。『石鼓文』其魚隹可。『風雅廣逸註』隹可讀作惟何、古省文也。
音訓
- 音
- (1) カ(漢、呉) 〈『廣韻・上聲・哿・可』枯我切〉[kě]{ho2}
- (2) コク 〈『字彙補』苦格切、音克〉[kè]{hak1}
- 訓
- (1) よし。きく。ゆるす(許可)。べし。ばかり。
可汗は音(2)に讀む。
解字
白川
會意。口に從ふ。
『説文解字』に肎(肯)ふなり
とあり、『爾雅・釋言』に肎は可なり
とあるのと互訓。肎、可は雙聲の訓であるが、肎(肯)は肯綮の象、可は祝禱に關する字。
口は祝禱を收める器の形。その外側は木の枝で、後の柯に當たる。柯を以て祝禱の器を毆ち、神に呵してその祝禱の承認を認める意で、神が許可する意となる。
藤堂
屈曲した鉤型と口の會意。喉を屈曲させて聲を掠らせること。屈曲を經てやつと聲を出す意から、轉じて、樣々の曲折を經てどうにか認める意に用ゐる。訶や呵の原字。
落合
抽象的な字義であり、會意字ではなく、口を意符とする形聲字であらう。聲符については諸説あるが、字音が關聯し、且つ字形が近いものは河の初文(補註: 水と荷の初文に從ふ)の異體字(補註: 略體)の旁。從つて可の聲符は荷の初文の略體であると考へられる。甲骨文には荷の初文を類似形の乃や广のやうな形に替へた異體もある。
甲骨文での用義は次のとほり。
- よし。肯定の意。不可は否定の意。比較的よい狀態を意味しても用ゐられる。《合集》27991
自可至于寧、偪禦。
- 祭祀名。《合集》30355
勿可祖丁、升。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は、口と丂に從ふ。構形、初義に未だ定論はない。丂は枝柯(木の枝)に象る(屈萬里、李孝定)。一説には丂は曲柄斧の柯柄(斧の柄を柯とも呼ぶらしい)といふ(徐中舒)。後に假借して可以(できる。してよい。)の意。
一説に可は歌の古字(何琳儀、戴家祥)。金文では歌を訶に作る。『集韻』歌、古作可。
『釋名・釋樂器』人聲曰歌。歌、柯也。
このほか、林光義が可字を訓じて口と丂とに從ひ、号と同義。訶の古文に當たり、大言にして怒なり。
と曰ひ、腹を立てて大聲を出す意と解く。按ずるに金文に歌に用ゐる可は見えない。
甲骨文では可否の可に用ゐ、可以を表し、また地名に用ゐる。
金文での用義は次のとほり。
秦簡では借用して何となす。《睡虎地秦簡・封診式》可(何)謂、州告。
其論可(何)也。
『說文解字』𦘫也。(後略)
『玉篇』𦘫、今作肯
。
屬性
- 可
- U+53EF
- JIS: 1-18-36
- 當用漢字・常用漢字
關聯字
可に從ふ字を漢字私註部別一覽・口部・可枝に蒐める。