蛇 - 漢字私註
説文解字
- 它の重文。
它或从虫。臣鉉等曰「今俗作食遮切」。
- 十三・它部
説文解字注
它或从虫。它篆本以虫篆引長之而巳。乃又加虫左旁。是俗字也。
康煕字典
- 部・劃數
- 虫部・五劃
『唐韻』食遮切、音茶。〔音2〕『集韻』『韻會』𠀤時遮切、音闍。〔音6〕毒蟲也。『左傳・莊十四年』內蛇與外蛇鬭。《疏》蛇、北方水物。『酉陽雜俎』蛇、有水、草、木、土四種。『爾雅翼』蛇、草居、常飢、每得食稍飽、輒復蛻殻、冬輒含土入蟄、及春出蟄則吐之。『埤雅』牛以鼻聽、蛇以眼聽。
又『莊子・達生篇』以鳥養養鳥者宜棲之深林、浮之江湖、食之以委蛇。《註》委蛇、泥鰌。
又星名。『左傳・襄二十八年』蛇乗龍。《註》蛇、玄武之宿、虛、危之星。『晉書・天文志』騰蛇二十二星、在營室北、天蛇也。
又地名。『後漢・郡國志』南陽郡隨西有斷蛇丘。《註》卽銜珠之蛇。
又姓。『通志・氏族略』姚萇、蛇后、南安人。又有建武將軍蛇元、望出鴈門。
又『廣韻』弋支切、音移。〔音3〕『詩・召南』委蛇委蛇。《箋》委蛇、委曲自得之貌。『莊子・庚桑楚』與物委蛇、而同其波。『焦氏・易林』委蛇循河、至北海涯。
又『韻補』龍蛇之蛇、亦讀爲移。『詩・小雅』維熊維羆、維虺維蛇、大人占之。蛇字叶上羆字、下之字韻。
又徒河切、音駝。〔音5〕『張衡・西京賦』感河馮、懷湘娥、驚蛧蜽、憚蛟蛇。
又委蛇之蛇、亦叶音駝。『古音攷』『陸機・答賈謐詩』我求明德、濟同以和。魯公戾止、兗服委蛇。
又『集韻』陳知切、音馳。〔音4〕地名。『春秋傳』盟于毆蛇、『公羊傳』作毆虵、與曲池同。
又『字彙補』以遮切、音耶。〔音7〕『集韻』關中謂毒蟲曰蛇。
『韻會』本作它、湯河切。〔音1〕『說文』它、从虫而長、象冤曲垂尾形。上古草居患它、故相問無它乎。凡它之屬皆从它。託何切。臣鉉等曰、今俗作食遮切。『佩觿』蛇字從也、誤。
- 部・劃數
- 虫部・三劃
『唐韻』俗蛇字。
- 部・劃數
- 虫部・五劃
『正字通』俗蛇字。
音訓義
- 音
- タ(漢)(呉) ダ(慣)⦅一⦆
- ジャ(呉) シャ(漢)⦅二⦆
- イ(漢)(呉)⦅三⦆
- チ(推)⦅四⦆
- タ(推)⦅五⦆
- シャ(推)⦅六⦆
- ヤ(推)⦅七⦆
- 訓
- へび⦅一⦆⦅二⦆⦅六⦆
- 官話
- shé⦅二⦆
- yí⦅三⦆
- 粤語
- se4⦅二⦆
- ji4⦅三⦆
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・下平聲・歌・佗』託何切
- 『集韻・平聲三・戈第八・佗』湯河切
- 『五音集韻・中平聲卷第四・歌第十五・透・一佗』託何切
- 『康煕字典』引『韻會』湯河切〔康煕1〕
- 聲母
- 透(舌頭音・次清)
- 等呼
- 一
- 日本語音
- タ(漢)(呉)
- ダ(慣)
- 訓
- へび
⦅二⦆
- 反切
- 『廣韻・下平聲・麻・蛇』食遮切〔康煕2〕
- 『五音集韻・中平聲卷第四・麻第十七・床・三蛇』食遮切
- 聲母
- 牀(正齒音・全濁)
- 等呼
- 三
- 官話
- shé
- 粤語
- se4
- 日本語音
- ジャ(呉)
- シャ(漢)
- 訓
- へび
⦅三⦆
- 反切
- 『廣韻・上平聲・支・移』弋支切〔康煕3〕
- 『集韻・平聲一・支第五・移』余支切
- 『五音集韻・上平聲卷第一・脂第五・喻・四移』弋枝切
- 聲母
- 喻(喉音・次濁)
- 等呼
- 四
- 官話
- yí
- 粤語
- ji4
- 日本語音
- イ(漢)(呉)
- 義
- 委蛇。意味は後述する。
- 蛇蛇は、尊大に誇張していふさま。『詩・小雅・巧言』
蛇蛇碩言、出自口矣。
(蛇蛇(訑訑)たる碩言は、口より出づ。) - 蛇丘は縣名。(『廣韻』)
委蛇は次の意を有す。
- 寛ぐさま、從容自得するさま。『詩・召南・羔羊』
委蛇委蛇。
《箋》委蛇、委曲自得之貌。 - うねうねと曲がるさま。『楚辞・離騷』
駕八龍之婉婉兮、載雲旗之委蛇。
- 蛇行するさま。爬行するさま。
- 『史記・蘇秦傳』
嫂委蛇蒲服、以面掩地而謝。
- 『聊斎志異・卷一・宅妖』
近扶之、膩然而倒、委蛇入壁、移時始沒。
- 『史記・蘇秦傳』
- 從順なさま。『莊子・應帝王』
吾與之虛而委蛇。
唐・成玄英・疏委蛇、隨順之貌也。
⦅四⦆
- 反切
- 『集韻・平聲一・支第五・馳』陳知切〔康煕4〕
- 『五音集韻・上平聲卷第一・脂第五・澄・三馳』直離切
- 聲母
- 澄(舌上音・全濁)
- 等呼
- 三
- 日本語音
- チ(推)
- 義
- 毆蛇、地名。(『集韻』)
⦅五⦆
- 反切
- 『集韻・平聲三・戈第八・駝』唐何切
- 『五音集韻・中平聲卷第四・歌第十五・定・一駝』徒何切
- 『康煕字典』徒河切(音駝)〔康煕5〕
- 聲母
- 定(舌頭音・全濁)
- 等呼
- 一
- 日本語音
- タ(推)
- 義
- 蟲名。蠖也。(『集韻』)
⦅六⦆
- 反切
- 『集韻・平聲三・麻第九・闍』時遮切〔康煕6〕
- 聲母
- 禪(正齒音・全濁)
- 等呼
- 三
- 日本語音
- シャ(推)
- 訓
- へび
⦅七⦆
- 反切
- 『集韻・平聲三・麻第九・邪』余遮切
- 『五音集韻・中平聲卷第四・麻第十七・喻・四邪』以遮切
- 『康煕字典』引『字彙補』以遮切(音耶)〔康煕7〕
- 聲母
- 喻(喉音・次濁)
- 等呼
- 四
- 日本語音
- ヤ(推)
- 義
- 關中謂毒蟲曰蛇。(『集韻』)
解字
白川
形聲。聲符は它。它は蛇の象形。蛇はその形聲の字。
『説文解字』に它を正字として虫なり
とし、重文として蛇の字形を錄してゐる。
它はのち他などの意に用ゐられ、它、蛇の字が區別されるやうになつた。他、池の從ふ也も蛇形。
蝎と合はせて蛇蝎といふ。
藤堂
虫と音符它の會意兼形聲。它は、頭の大きい蛇を描いた象形字。蛇は、うねうねと伸びる意を含む。它が三人稱代名詞に轉用されたため、蛇字で它の元の意味を表した。
落合
篆文で作られた字形。虫に從ひ、它亦聲。它は虫から派生した同源字。
同源字には虫、它のほか、巳、也があり、上古音の段階で字音が互ひに異なつてゐるが、別源語に轉用されたのか、發音が分化したのかは不明。
漢字多功能字庫
初文は它に作り、蛇の形に象る。後に它を代詞に借用するため、秦漢の時期に它に虫を加へる。隸書の它はあるいは也の形に誤り、故に異體を虵に作る。
蛇は蛇を表す後起の本字。蛇は爬行する動物で、四肢がなく、身は細長く、肋骨を伸縮させて進む。『説文解字』它、虫也。(中略)蛇、它或从虫。
- 『左傳・成公二年』
丑父寢於轏中、蛇出於其下、以肱擊之、傷而匿之、故不能推車而及。
- 『馬王堆帛書・五十二病方』第368行
先善以水𣳦(洗)、而炙蛇膏令消、傅。三傅而巳(已)。
整理者注蛇膏、蛇的脂油。『名醫別錄』記蚺蛇膏、主皮膚風毒、與本方主治相符。
屬性
- 蛇
- U+86C7
- JIS: 1-28-56
- 常用漢字
- 虵
- U+8675
- JIS: 1-91-51
- JIS X 0212: 58-40
- 𧉮
- U+2726E