巳 - 漢字私註

説文解字

巳
巳也。四月、陽气巳出、陰气巳藏、萬物見、成文章、故巳爲蛇、象形。凡巳之屬皆从巳。詳里切。
十四巳部

説文解字注

巳
巳也。〔史記〕律書』曰、巳者、言萬物之巳盡也。『〔漢書〕律曆志』曰、巳盛於巳。『淮南・天文訓』曰、巳則生巳定也。『釋名〔釋天〕』曰、巳、畢布巳也。辰巳之巳旣久用爲巳然巳止之巳。故卽以巳然之巳釋之。『〔易〕序卦傳』蒙者、蒙也。比者、比也。剝者、剝也。『毛詩傳』曰、虚、虚也。自古訓故有此例。卽用本字、不叚異字也。『〔詩〕小雅・斯干・箋』云、似讀爲巳午之巳。巳續妣祖者、謂巳成其宫廟也。此可見漢人巳午與巳然無二音。其義則異而同也。『廣雅・釋言』巳、㠯也。乃淺人所改。近大興朱氏重刻汲古閣說文改爲己也。殊誤。四月昜气巳出。陰气巳臧。今藏字。萬物見。句。成彣彰。故曰巳也。故巳爲它象形。巳不可像也。故以蛇象之。蛇、長而冤曲垂尾。其字像蛇。則象陽巳出陰巳藏矣。此六字一句讀。巳者、蛇象也。𢁓者、古文豕也。此近十二屬之說。而與『論衡・物勢篇』義各不同。祥里切。一部。凡巳之屬皆从巳。

康煕字典

部・劃數
己部(零劃)

『唐韻』詳里切『集韻』『韻會』象齒切『正韻』詳子切、𠀤音似。『說文』已也。四月陽氣已出、隂氣已藏、萬物皆成文章、故巳爲蛇、象形。『史記・律書』巳者、言陽氣之已盡也。『前漢・律歷志』振美於辰、已盛於巳。『釋名』已也、如出有所爲、畢已復還而入也。『玉篇』嗣也、起也。『爾雅・釋天』太歲在巳曰大荒落。

又『韻會』上巳、節名。『韓詩章句』鄭國之俗、三月上巳、之溱洧兩水之上、執蘭招魂續魄、祓除不祥。『宋書・禮志』自魏以後、但用三日、不以巳也。

又『韻補』古巳午之巳、亦讀如已矣之已。『增韻』陽氣生于子、終于巳。巳者、終巳也、象陽氣旣極回復之形、故又爲終巳字。今俗以有鉤挑者爲終已字、無鉤挑者爲辰巳字、是蓋未知其義也。

音訓

シ(漢) 〈『廣韻・上聲』詳里切〉[sì]{zi6}

解字

白川

象形。蛇の形に象る。

十二支の第六「み」に用ゐる。

『説文解字』に十二支獸の意によつて説を成してゐるが、卜文では「み」に當たる字にを用ゐてをり、無根據。

字は蛇の象形だが、《大盂鼎》ああ(下揭)、《吳王光鑑》往け(下揭)、また《欒書缶》にすでに其の吉金をえら、《蔡公盤》に祐受することむこと毋しのやうに用ゐる。古くは巳、の區別が明らかでなく、金文の用義例によつていへば、巳はのちの巳、已の字に用ゐられてゐる。恐らく聲義の通ずる字であつたのであらう。

藤堂

象形。原字は、頭と身體が出來かけた胎兒を描いたもので、の中と同じ。種子の胎の出來始める六月。十二進法の六番目に當てられてから、原義は忘れられた。

落合

蛇の象形。、也と同源の字。の聲符で、甲骨文では祀を巳(虫)に作るものもある。

甲骨文では十二支の巳にはを用ゐる。

漢字多功能字庫

甲骨文、金文の構形に二説ある。一説に胎兒の形に象るといふ(高田忠周、『説文解字』包字條)。一説に蛇の形に象るといふ(『説文解字』)。

甲骨文、金文ではまたの省體として用ゐる。工吳王劍工(攻)吳王乍(作)元巳(祀)用

祀に用ゐる他、金文の用法に五つある。

  1. 十二支名。車嗇夫鼎癸巳
  2. 終止を表し、典籍ににつくる。許子鐘眉壽母(毋)巳(已)
  3. 句首の嘆詞に用ゐる。盂鼎巳、女(汝)妹辰又(有)大服。『尚書・大誥』巳、予惟小子。孔安國傳巳、發端嘆辭也。
  4. 句末の語辭に用ゐ、典籍に已につくる。吳王光鑑往巳(已)弔(叔)姬,虔敬乃后。
  5. 巳巳は喜び樂しむさまを表し、典籍では怡怡につくる。『論語・子路』朋友切切偲偲、兄弟怡怡。馬融注怡怡、和順之貌。

屬性

U+5DF3
JIS: 1-44-6
人名用漢字

関聯字

巳に從ふ字を漢字私註部別一覽・巳部に蒐める。