太 - 漢字私註
説文解字
- 泰の重文。
古文泰。
- 十一・水部
説文解字注
古文泰如此。按當作。从、取滑之意也。从大聲。轉寫恐失其眞矣。後世凡言大而以爲形容未盡則作太。如大宰俗作太宰、大子俗作太子、周大王俗作太王、是也。謂太卽『說文』夳字。夳卽泰、則又用泰爲太。展轉貤繆。莫能諟正。
康煕字典
- 部・劃數
- 大部(一劃)
『集韻』他蓋切、音汰。與大泰𠀤同。『說文』滑也。一曰大也、通也。○按經史太字俱作大。如大極、大初、大素、大室、大玄、大廟、大學及官名大師、大宰之類。又作泰、如泰卦、泰壇、泰誓、泰春、泰夏、泰秋、泰冬之類。范氏撰【後漢書】父名泰、避家諱、攺从太。毛氏韻增、經史古太字無點、後人加點以別小大之大、非。【字彙】引之、失考。
又姓。文王四友太顚之後。見『統譜』。
又叶力至切、音利。『歐陽修・祭龍文』宜安爾居、靜以養智。冬雪春雨、其多已太。
又『集韻』他達切、音獺。太末、漢縣名。在會稽西南。
亦作太。
- 部・劃數
- 大部・二劃
『字彙補』古文泰字。『說文長箋』天地交泰、故从二大。
- 部・劃數
- 冫部・三劃
『集韻』他蓋切、音汰。『玉篇』今作泰。『說文』大也、通也。或省作太。亦作大泰。『易・泰卦』天地交泰。
又『說文』泰、滑也。
又『六書故』冭、他達切、音獺。冰凍滑冭也。俗作汰澾。【左傳〔宣四年〕】伯棼射王汰輈【註】汰、過也、箭過車轅上也。
音訓
- 反切
- 『廣韻・去聲・泰・泰』他蓋切
- 『集韻・去聲上・夳第十四・夳』他蓋切
- 『五音集韻・去聲卷第十・泰第十二・透・一泰』他蓋切
- 官話
- tài
- 粤語
- taai3
- 日本語音
- タイ(漢、呉)
- タ(慣)
- ダ(慣)
- 訓
- おほきい
- ふとい
- はなはだ
解字
白川
形聲。聲符は大。
『説文解字』泰字條に滑らかなり
とあり、その古文として太の字形を擧げてゐる。泰は水の上に、人を兩手で押し上げてゐる形で、人を水沒から救ひ、安泰にする意。大の下の點は、水の省略形と見てよい。
もと泰と同義の字であるが、のちその副詞形、また修飾語的な用義の字となつた。『玉篇』大部に太を錄して甚なり
といひ、副詞とする。
古い時期には大、太を嚴密に區別することがなく、金文に大宗、大子、大室、大廟、大史の字は、すべて大につくる。漢碑には大守、大尉をまた太守、太尉に記すことがあり、太守の例が多く、ほぼその慣用字となる。
太、泰はもと一字、大、太、泰は聲義近く通用の字であるが、それぞれ慣用を異にするところがある。
藤堂
落合
指示。甲骨文は人の正面形である大の股の部分に指示記號を加へた形。恐らく人が脚を大きく擴げてゐるさまを表してをり、後に轉じて物事の甚だしいことを指すやうになつた。但し甲骨文には人名の用例しか見られない。大亦聲。
【補註】落合が太の甲骨文として擧げる字を、漢字多功能字庫は亢として擧げる。いづれを採るべきか判斷不能。
甲骨文では第一期(武丁代)〜一二間期(祖己代)に人名に用ゐる。《合集》10302令太往于畫。
字形は古文で指示記號が一または二になり、隸書で丶になつた。
泰は秦代に初出。大に廾、水を加へた形。太の指示記號の部分を再解釋したものと思はれる。
亢は篆文に初出。字形の類似から太の同源字と推定されてゐる。しかし、字義としては頸部を指す字であり、また字音も大きく異なるので、字形が偶然に類似したもので、繼承關係はないかも知れない。
漢字多功能字庫
太は大から分化した後起の字。大の下部に折れた劃を加へ、指示字の目印とし、大と區別する。大聲(于省吾)。字形は《古陶文彙編》2.4を參照のこと。戰國楚系文字は大の右上に斜劃を加へて分化の符號とする。『説文解字』は泰の古文とし、冭に作る。《段注》夳、後世凡言大而以為形容未盡則作太。
大の下の丶、一、二などはいづれも分化の符號。
太は大に同じ。『廣雅・釋詁一』太、大也。
- 『尚書・禹貢』
既修太原、至于岳陽。
孔穎達疏太原、原之大者。
- 『莊子・天下』
建之以常無有、主之以太一。
成玄英疏太者廣大之名。
太は身分あるいは世代が高いことを表す。
- 『史記・高祖本紀』
六年、高祖五日一朝太公。
- 『漢書・高帝紀下』
今上尊太公曰太上皇。
副詞となし、度を超してゐることを表す。
- 『論語・雍也』
居簡而行簡、無乃太簡乎。
- 『戰國策・秦策』
大臣太重者國危、左右太親者身危。
副詞となし、最、極を表す。
- 『韓非子・說疑』
是故禁奸之法、太上禁其心、其次禁其言、其次禁其事。
- 『呂氏春秋・恃君』
昔太古嘗無君矣。
屬性
- 太
- U+592A
- JIS: 1-34-32
- 當用漢字・常用漢字
- 夳
- U+5933
- JIS X 0212: 24-78
- 冭
- U+51AD
- JIS: 2-3-14
- JIS X 0212: 18-88