泰 - 漢字私註
説文解字
滑也。从廾从水、大聲。他蓋切。臣鉉等曰「本音他達切。今『左氏傳』作汏輔、非是。」
- 十一・水部
古文泰。
- 別條に揭出する。
説文解字注
滑也。此以曡韵爲訓。字从𠬞水。水在手中。下澑甚利也。與《辵部》達字義近。皆他達切。『周易』泰、通也。否、塞也。『左傳〔宣四年〕』汏輈及鼓跗著于丁寧、汏輈以貫笠轂。皆滑之意也。滑則寛裕自如。故引伸爲縱泰。如『論語』泰而不驕、是也。又引伸爲泰侈。如『左傳』之汏侈、『西京賦』之心奓體泰、是也。汏卽泰之隸省。隸變而與淅米之汏同形。作汰者誤字。从𠬞水。會意。大聲。他葢切。十五部。按隸作泰。字形字音字義皆與古絶異。
古文泰如此。按當作。从、取滑之意也。从大聲。轉寫恐失其眞矣。後世凡言大而以爲形容未盡則作太。如大宰俗作太宰、大子俗作太子、周大王俗作太王、是也。謂太卽『說文』夳字。夳卽泰、則又用泰爲太。展轉貤繆。莫能諟正。
康煕字典
- 部・劃數
- 水部・五劃
- 古文
- 夳
『唐韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤他蓋切、音太。『說文』滑也。
又大也。『前漢・郊祀歌』揚金光、橫泰河。
又通也。『易・泰卦』天地交泰。
又甚也。『詩・小雅』昊天泰憮。
又寬也、安也。『論語』君子泰而不驕。
又侈也。『晉語』恃其富寵以泰於國。
又丘名。『爾雅・釋丘』右陵泰丘。
又風名。『爾雅・釋天』西風謂之泰風。《註》西風成物、物豐泰也。
又山名。『爾雅・釋山』泰山爲東嶽。又有小泰山、在朱虛縣、汶水所出。
又州名。本晉海陵郡、今屬揚州府。又泰安州、本唐泰州、屬濟南府。俱見『廣輿記』。
又澤名。『山海經』瀤澤之水、東北流、注于泰澤。
又社名。『蔡邕・獨斷』天子之宗社曰泰社。
又尊名。『禮・明堂位』泰、有虞氏之尊也。
又『韻補』叶他計切、音替。『曹植・七啓』元化參神、與靈合契。惠澤播於黎苗、威靈鎭乎無外。超隆平於殷周、踵羲皇而齊泰。
『說文』亦省作太。从水。俗作㣺、非是。
別揭。
別揭。
音訓
- 反切
- 『廣韻・去聲・泰・泰』他蓋切
- 『集韻・去聲上・夳第十四・夳』他蓋切
- 『五音集韻・去聲卷第十・泰第十二・透・一泰』他蓋切
- 官話
- tài
- 粤語
- taai3
- 日本語音
- タイ(漢、呉)
- 訓
- やすい
- やすらか
- ゆたか
- おごる
- はなはだ
- おほきい
解字
白川
大と𠬞と水の會意。大は人の正面形。𠬞は左右の手。水中に陷つた人を兩手で助け上げる形で、安泰の意とする。
『説文解字』に滑らかなり
とし、廾に從ひ、水に從ふ。大の聲なり。
とするが、大は廾を加へる對象で人。
泰はまた略して太に作る。大、太、泰は通用するところがある。
藤堂
水と兩手と音符大の會意兼形聲。兩手でたつぷりと水を流すさまを示す。
落合
『説文解字』は大を聲符とする形聲字とする。その他、兩手でたつぷりと水を流すさま、水に落ちた人を助ける形、水路を擴げる樣子、水に浸かつてゆつたりしてゐる人の様子、身體を洗ふ人の形、の各説がある。
いづれが字源か明らかではないが、太と同樣の字義で用ゐられてをり、また太と同じく大を聲符とするので、太の指示記號の部分を秦代に再解釋したものと思はれる。
𡗗の部分は大と廾が重なつた形。
漢字多功能字庫
廾と水に從ひ大聲。後に大と廾は一體に連なつて𡗗の形に變化し、遂には泰に作る。『説文解字』は本義を滑らかとするが、古書にその用法は見えず。『説文解字』はまた冭を泰の古文とする。冭は太に同じ。太は大の分化字。何琳儀『戰國古文字典』典籍之中大、太、泰三字往往通用。大為象形、太為分化、泰為假借。
用ゐて大、太に同じ。『尚書・泰誓』の篇名。孔傳大會以誓眾。
孔穎達疏此會中之大、故稱泰誓也。
大を表し讚美の語に用ゐる。『漢書・禮樂志』揚金光、橫泰河。
太に同じく、度を過ぎることを表す。
- 『詩・小雅・巧言』
昊天已威、予慎無罪。昊天泰憮、予慎無辜。
鄭玄箋已、泰、皆言甚也。
- 『論衡・自紀』
今不曰所言非、而云泰多。
『周易』六十四卦の一。乾上坤下。『周易・泰』《象》曰、天地交、泰。
李鼎祚集解引荀爽曰坤氣上升、以成天道。乾氣下降、以成地道。天地二氣、若時不交、則為閉塞。今既相交、乃通泰。
泰に通達(通ず)、通暢(圓滑、滯りがない、流暢、淀みがない)の意がある。『廣雅・釋詁』泰、通也。
- 唐・白居易〈采詩官〉
言者無罪聞者誡、下流上通上下泰。
安寧、安泰を表す。
- 『莊子・庚桑楚』
宇泰定者、發乎天光。
郭象注夫德宇泰然而定、則其所發者天光耳、非人耀。
- 『潛夫論・慎微』
政教積德、必致安泰之福。
寬裕を表す。
- 『荀子・議兵』
凡慮事欲孰、而用財欲泰。
楊倞注泰、不吝賞也。
奢侈を表す。
- 『國語・晉語』
夫卻昭子、其富半公室、其家半三軍、恃其富寵、以泰于國。
韋昭注奢泰於國。
驕縱(傲慢で身勝手)、傲慢を表す。『玉篇・水部』泰、驕也。
- 『左傳・襄公三十年』
大人之忠儉者、從而與之。泰侈者因而斃之。
- 『論語・子罕』
拜下、禮也。今拜乎上、泰也。
何晏集解時臣驕泰、故於上拜。
また山名、泰山のこと。五嶽の首たる東嶽。その主峰は山東省泰安市にある。『爾雅・釋山』泰山為東嶽。
- 『史記・周本紀』
漢興九十有餘載、天子將封泰山、東巡狩至河南。
屬性
- 泰
- U+6CF0
- JIS: 1-34-57
- 當用漢字・常用漢字
- 夳
- U+5933
- JIS X 0212: 24-78
- 冭
- U+51AD
- JIS: 2-3-14
- JIS X 0212: 18-88