雍 - 漢字私註

説文解字

雝
雝𪆫也。从聲。
隹部

説文解字注

雝
雝渠也。渠《鳥部》作𪆫。鉉本同。从隹邕聲。於容切。九部。經典多用爲雝和、辟雝。𣜩作雍。

康煕字典

部・劃數
隹部・五劃
古文

『唐韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤於容切、音廱。『玉篇』和也。『書・堯典』黎民於變時雍。

又『爾雅・釋天』太歲在戊曰著雍。

又水名。『水經』四方有水曰雍。

又縣名。『前漢・地理志』漁陽郡雍奴縣。

又『前漢・中山靖王傳』雍門子壹微吟。《註》張晏曰:齊之賢者、居雍門、因以爲號。蘇林曰、六國時人、名周。

又『廣韻』姓也。祭仲壻雍糾。見『左傳・桓十五年』。

又『集韻』通作。『班固・兩都賦』乃流辟雍。○按【禮・王制】作辟雝。

又『集韻』委勇切、音壅。『周禮・秋官・司寇』雍氏。《註》謂隄防止水者也。『釋文』雍、於勇反。

又『集韻』祐也。『揚雄・甘泉賦』雍神休。《註》晉灼曰、雍、祐也。師古曰、雍、聚也。雍讀曰擁。

又『廣韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤於用切、音㙲。『廣韻』九州名。雍、擁也。東崤、西漢、南裔、北居庸、四山之所擁翳也。『書・禹貢』黑水西河惟雍州。『釋文』雍、於用切。○按【爾雅・釋地】作雝。

又『韻會』國名。『左傳・僖二十四年』郜雍曹滕。《註》雍國、在河內山陽縣。『釋文』雍、於用反。

又『廣韻』姓也。『韻會』文王子雍伯之後。

部・劃數
隹部・十劃

『唐韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤於容切、音邕。『說文』雝渠也。『爾雅・釋鳥』䳭鴒、雝渠。《註》雀屬。

又『詩・邶風』雝雝鳴雁。《傳》雝雝、雁聲和也。又『大雅』雝雝喈喈。

又『詩・召南』曷不肅雝。《傳》雝、和。又『周頌』有來雝雝。《箋》雝雝、和也。

又地名。『詩・周頌』于彼西雝。《傳》雝、澤也。

又姓。『晉語』郉侯與雝子爭田。○按【左傳】作

又『正韻』尹竦切、音勇。『詩・小雅』無將大車、維塵雝兮。《箋》雝、蔽也。『釋文』於勇反。

又『正韻』於用切、音灉。『詩・小雅・塵雝釋文』又作壅。於用反。

音訓・用義

(1) ヨウ(漢) 〈『廣韻・上平聲・鍾・邕』於容切〉[yōng]{jung1}
(2) ヨウ 〈『集韻』委勇切、音壅、上聲腫韻〉
(3) ヨウ(漢) 〈『廣韻・去聲・用・雍』於用切〉{jung3}
(1) やはらぐ
(2) ふさぐ

雝渠は音(1)に讀み、鶺鴒を指す。

雝雝は音(1)に讀み、和らぎ樂しむさま、また雁の聲をいふ。

音義(2)は壅との通用。

また擁と通じ、いだく、まもる、たすけるの意。音(2)に讀む。

雍州は音(3)に讀む。

解字

白川

形聲。聲符は。金文の字形は(水)と吕(宮室の象)との會意字。古く璧雝と呼ばれた聖所。溢流した水がふさがれて流れず、沼澤が形成され、渡り鳥が來る。これを祖靈が時を定めて歸來するものとして、池中の島に宮を築いて神殿とした。璧はまるく巡る。その中央に祀所を設ける。金文に「𬝧京辟雝」として見えるもので、『詩・大雅・文王有聲』に鎬京辟廱の名が見える。金文にはその大池に漁して魚鳥の類を神饌とする記述がある。

『説文解字』に雝渠なりとし、水鳥の名とするが、字の本義とし難い。

雍和の意があり、《大盂鼎》に德經を敬雝す、《䣄王鼎》にて賓客をたのしましめん(白文下揭)といふ。

金文の「璧雝」は經籍に「辟雍」「辟廱」に作る。

會意。金文の璧雝を經籍に璧雍、辟雍に作り、雝は雍の初文、雍は雝の省略形と考へられる。雍は『説文解字』未收。

雝は川、、隹の會意。金文には川と吕(宮室の象)と隹の會意の形に作る。水が池、澤となるところに、渡り鳥が時節を定めて來ることを、祖靈が鳥形靈となつて飛來するものと考へ、そこに吕(宮)を作つて祀つた。水が璧のやうに四方を巡り、その中島に祀所を建てたものを璧雝といふ。故に雍容、雍和の意がある。

雍は應と聲義近く、應は廟所に祈り、隹(鳥)卜ひなどをして、神の反應があり、應諾を得ることをいふ。鷹は鳥占に用ゐ、いはゆる「うけひ狩り」をしたものであらう。

藤堂

雝は(鳥)と音符の會意兼形聲。邕は、(村里)の會意字で、堀を巡らして守つた村や建物を表す。雝は、外枠で圍んで鳥を安全に守ることを表す。外部との道を塞いで、内部を和やかに保つこと。

雍はその異體字。

落合

會意。甲骨文は鳥の象形のの略體、及び四角形のから成る。人工の池を配した祭祀施設(四角形が池の形)を表す字で、隹は池に鳥が集まつた樣子であらう。後代には「辟雍」とも稱されてゐる。異體字には隹、水、丁のいづれかを省略したものなどがある。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. 施設名。辟雍。
    • 《合集》721貞、翌乙亥、酒雍、伐于廳。
    • 《殷墟花園莊東地甲骨》237甲寅、歲祖甲牝、雍見。
  2. 地名またはその長。第一期(武丁代)には領主が子雍とも呼ばれてゐる。《合補》11326壬戌卜貞、王田雍、往來亡災。
  3. 祭祀名か。《殷墟小屯中村南甲骨》296・末尾驗辭丁未卜貞、雍監、彘。
雍己
先王の名。殷代中期の王。《天理大學附屬天理參考館 甲骨文字》322己未卜…貞、王賓大戊眔雍己彡、…禍。在十月。

字形は篆文で水と丁の部分が意味と發音の兩方を表すの形となつた。更に隸書で雍に簡略化された。

後代の雍は丸い形に作られたが、殷代前期の副都である偃師商城などからは方形で作られた雍が發見されてをり、甲骨文の字形に對應してゐる。

漢字多功能字庫

雝と雍は同じ字。甲骨文はと正方形に從ひ、あるいは二つの方形が重なる。構形初義不明。

一説に方形は宮の初文。雝は璧雝(古代の大學)の本字。璧雝の宮外に休む鳥のある水があるさまに象る(羅振玉、陳邦懷)。一説に方形は雝の初文で、連環の形に象る(于省吾)。一説に鳥が足に環を嵌められて高く飛べぬさまに象り、引伸して阻塞、壅塞などの意を表すとする(徐中舒)。金文は甲骨文の字形を承け、方形を圓に變へ、吕の形と混ざる。

甲骨文では人名、地名に用ゐる。

金文での用義は次のとほり。

戰國竹簡では通じて壅となす。《上博楚竹書五・三德》毋雝(壅)川

《段注》雝渠也。渠、鳥部作𪆫。鉉本同。經典多用爲雝和、辟雝。隸作雍。

屬性

U+96CD
JIS: 1-80-22
U+96DD
JIS: 2-91-84

關聯字

雍に從ふ字を漢字私註部別一覽・囗部・雍枝に蒐める。