廷 - 漢字私註
説文解字
朝中也。从廴𡈼聲。
- 二・廴部
説文解字注
朝中也。朝中者、中於朝也。古外朝、治朝、燕朝、皆不屋、在廷。故雨霑服失容則廢。从廴𡈼聲。特丁切。十一部。『甘祿字書』『佩觿』音定。『廣韵』同。
康煕字典
- 部・劃數
- 廴部・四劃
『廣韻』特丁切『集韻』『韻會』『正韻』唐丁切、𠀤音亭。『說文』朝中也。『廣韻』朝廷也。『論語』其在宗廟朝廷。《疏》朝廷、布政之所。『釋文』廷、停也、人所集之處。又『廣韻』正也。『韻會』直也。
又『廣韻』廷者、平也。
又廷尉、官名。『前漢・百官表』廷尉、秦官。《註》廷、平也、治獄貴平、故以爲號。
又『廣韻』『韻會』『正韻』𠀤徒徑切、亭去聲。義同。
音訓・用義
- 音
- テイ(漢) 〈『廣韻・下平聲・靑・庭』特丁切〉[tíng]{ting4}
- 訓
- には。たひらか。
解字
白川
形聲。聲符は𡈼。金文の字形は、土主を圍んで鬯酒を加へる儀禮の場を示すもので、廟所の中廷。土主の傍らに人をしるし、土上に人の立つ形の𡈼と異なるが、同聲に讀む。
『説文解字』に朝中なり
とあり、冊命賜與の禮などは、その中廷で行はれた。
のち屋廡の形を加へて庭となるが、今は屋廡のないところを庭といふ。
藤堂
廴(のばす)と音符𡈼の會意兼形聲。𡈼とは、人が眞つ直ぐ立つ姿を描き、その伸びた脛のところを一印で示した指示字。廷は、眞つ直ぐな平面が廣く伸びた庭。
落合
甲骨文は、人のやうな形、土、及び小點に從ひ、恐らく人が土盛りに液體を撒く形。酒を注ぐ儀禮とする説もある。
甲骨文での用義は不明。《合集》18731…廷…。
周代には「には」(朝禮を行ふ庭で、朝廷の語源)の意味となつてゐるが、甲骨文には缺損片の一例のみにしか見えず、原義は確實ではない。
金文では區切りを表す匸(古くは乚の形)が追加されてをり、恐らく施設としての廷の領域を表してゐる。
更に古文では人と土を重ねた𡈼を聲符とする字形が作られたが、これが本來の發音であつたか否かは不明。
篆文では小點が省かれ、匸が廴に替はつた。また繁文の庭も作られてゐる。
漢字多功能字庫
金文は∟に從ひ𡈼聲。あるいは聲符を㐱(彡を人に加へて成る)に改める。廷は堂下の門に至る間の覆はれてゐない空地のことで、故に∟は堂下の空地に象る。本義は堂前の空地。𡈼は人と土に從ひ、人が土地の上に立つさまに象り、亦聲符。廷は廷中に人が立つの意。小篆は依然として𡈼に從ふが、隸變の後には壬に誤る。
古く臣が君に覲えるとき、君は堂上に南面して坐り、堂を亦た朝と稱す。臣は堂下廷中に北面して立つ。故に朝廷と總稱する(林義光)。後世には广を加へて庭に作る。『論語・鄉黨』其在宗廟朝廷
邢昺疏朝廷、布政之所。
廷は君王が朝に上り政を布く所で、冊命の禮を行ふ主な場所である。
廷はまた動詞となし、朝見を表す。「不廷」とは背叛し入朝しないことをいふ。毛公鼎率褱不廷方
の「不廷方」とは入朝しない國のこと。
文獻に庭に作る。
- 『尚書・周官』
惟周王撫萬邦、巡侯甸、四征弗庭
。 - 『左傳・隱公』
以王命討不庭
。
屬性
- 廷
- U+5EF7
- JIS: 1-36-78
- 當用漢字・常用漢字