引 - 漢字私註

説文解字

引
開弓也。从
註に臣鉉等曰、象引弓之形。といふ。
十二弓部

説文解字注

引
開弓也。下曰、張也。是門可曰張、弓可曰開。相爲轉注也。施弦於弓曰張。鉤弦使滿、以竟矢之長亦曰張。是謂之引。凡延長之偁、開導之偁皆引申於此。『〔詩〕小雅・楚茨』、『〔同〕大雅・召旻』《毛傳》皆曰、引、長也。从弓丨。此引而上行之丨也。爲會意。丨亦象矢形。余忍切。十二部。

康煕字典

部・劃數
弓部(一劃)
古文

『唐韻』余忍切『集韻』『韻會』『正韻』以忍切、𠀤音蚓。『說文』開弓也。《徐鉉曰》象引弓之形。『周禮・冬官考工記』維體防之、引之中參。

又『廣雅』演也。『易・繫辭』引而伸之。

又『爾雅・釋詁』長也。『釋訓』子子孫孫引無極也。『書・梓材』引養引恬。

又相牽曰引。『禮・檀弓』喪服、兄弟之子、猶子也。蓋引而進之也。《註》牽引進之、同于己子。『史記・秦始皇紀』諸生轉相告引。

又『集韻』導也。『史記・韓長孺傳』奉引墮車、蹇。《註》爲天子導引而墮車、跛。

又卻也。『禮・玉藻』侍坐、則必退席。不退、則必引而去君之黨。《註》引、卻也。

又相薦達曰引。『史記・魏其侯傳』兩人相爲引重。《註》相薦達爲聲勢。『後漢・張皓王龔傳論』顯登者以貴塗易引。

又服氣法曰道引。『莊子・刻意篇』道引之士、養形之人。『史記・留侯世家』道引不食穀。

又治疾法有撟引。『史記・扁鵲傳』鑱石撟引。《註》謂爲按摩之法、夭撟引身、如熊顧鳥伸也。

又十丈爲引。『前漢・律歷志』其法用竹爲引、高一分、廣六分、長十丈。引者、信也。《註》信讀曰伸、言其長。

又『廣韻』『正韻』羊晉切『集韻』『韻會』羊進切、𠀤蚓去聲。『集韻』牽牛綍也。『禮・檀弓』弔於葬者、必執引。《疏》引、柩車索也。

又『集韻』一曰曲引。『蔡邕・琴操』有思歸引。

部・劃數
手部・三劃

『集韻』、古作㧈。註詳弓部一畫。

部・劃數
手部・四劃

『韻會』古作𢪉。『正字通』俗引字。○按【集韻】古文作巳。見前註。

音訓・用義

イン(漢、呉) 〈『廣韻・上聲・軫・引』余忍切〉[yǐn]{jan5}
ひく

解字

白川

の會意。

『説文解字』に弓を開くなりとあり、弓引く意。

古い形がなく、丨に從ふ意が明らかでない。

弓を射る意には射を用ゐる。

引はあるいは弓勢を直すために檃栝(ためぎ)を添へた形であるかも知れない。

藤堂

印の會意。丨印は直線狀に↓と引くさまを示す。

落合

會意。甲骨文は、人の正面形であるの略體に從ひ、人が弓を引いてゐる姿を表してゐる。その異體字に腕の部分を殘して人體を省略した形(補註: 漢字多功能字庫は弓と小撇に從ふとする)があり、この形が後代に繼承され、現用字の丨の部分が腕に當たる。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. 祭祀名。《懷特氏等所藏甲骨文集》1016丁未卜王曰、貞、父丁暮歲、其引三⿱冖羊。
  2. 地名またはその長。領主は伯引とも稱される。《殷墟花園莊東地甲骨》110庚申卜、引其死。
  3. 形容の語。甲骨文では大と同樣の意味であり、弓を擴げることからの引伸義であらう。《合集》5637王占曰、其惟丁、引[屮戈]。
引吉
大吉と同意。弘吉と釋されることもある。《英藏》2538癸亥王卜貞、旬亡禍。王占曰、引吉。在𠵤⿰𠂤朿。
引枝
吉凶語。詳細不明。《合集》19875乙巳卜…豭祖戊、引枝。

弘は同源字。古文で弓にの初文の厷が加へられ、更に篆文で厷が厶に簡略化されたもの。

【補註】漢字多功能字庫は弘の甲骨文として弓とに從ふ字を擧げるが、落合はその字を亡失字とする。

漢字多功能字庫

甲骨文、金文は、に從ひ、小撇を以て弓を引くことを表す。本義は弓を引くこと。後に小撇を段々と分離し、縱劃へと變はつた。(參: 『説文解字』、季旭昇)。

金文での用義は次のとほり。

《段注》施弦於弓曰張。鉤弦使满,以竟矢之長亦曰張。是謂之引。

屬性

U+5F15
JIS: 1-16-90
當用漢字・常用漢字
U+39C8
𢪉
U+22A89