獄 - 漢字私註
説文解字
确也。从㹜从言。二犬、所以守也。魚欲切。
- 十・㹜部
説文解字注
确也。『〔詩〕召南〔行露〕傳』曰、獄、埆也。埆同确。堅剛相持之意。从㹜从言。魚欲切。三部。二犬所㠯守也。說从㹜之意。『韓詩』曰、宜犴宜獄。鄉亭之繫曰犴。朝廷曰獄。獄字从㹜者、取相爭之意。許云所以守者、謂𨻼牢拘罪之處也。
康煕字典
- 部・劃數
- 犬部・十劃
- 古文
- 𡈭
『唐韻』『正韻』魚欲切『集韻』『韻會』虞欲切、𠀤音玉。『說文』确也。从㹜从言。二犬、所以守也。『釋名』獄、确也。确實人之情僞也。『玉篇』二王始有獄。殷曰羑里、周曰囹圄。又謂之牢、又謂之圜土。『廣韻』臯陶所造。『易・賁卦』象曰、山下有火賁、君子以明庶政、无敢折獄。『書・立政』文王罔攸、兼于庶言、庶獄、庶愼。『詩・召南』誰謂女無家、何以速我獄。
又星名。『史記・天官書』獄漢星出正北、北方之野。星去地可六丈、大而赤、數動、察之中靑。
- 部・劃數
- 囗部・十四劃
『玉篇』古文獄字。註詳犬部十一畫。
異體字
簡体字。
音訓
- 音
- ゴク(呉) ギョク(漢) 〈『廣韻・入聲・燭・玉』魚欲切〉[yù]{juk6}
- 訓
- うつたへる(獄訟)。ひとや(牢獄)。
解字
白川
言と㹜の會意。言は神に詛盟すること。二犬はその犧牲として當事者の雙方から提出されるもので、これによつて審判が開始される。善が羊と誩とに從ひ、盟誓して羊牲を立て、羊神判を行ふのと似てゐる。
『説文解字』に确なり
と牢屋の意とし、二犬は守る所以なり
とするが、そのやうな立意の字ではない。
金文に「從獄」といふ語があり、獄訟に連なることをいふ。
獄舍のことは、古く夏臺、羑里、圓土、土室、囹圄、犴獄などといつた。
藤堂
二犬と言(角立てて言ふ)の會意で、二匹の犬が爭ふやうに、啀み合つて言ひ合ふことを示す。かたく刺々しいの意を含む。
漢字多功能字庫
金文は言と二犬に從ふ。㹜は二頭の犬が向かひ合つて互ひを攻擊するさまに象る。全字で言葉で以て爭訟するの義と解く(楊樹達、戴家祥)。本義は獄訟。小篆の形は金文に同じ。『説文解字』獄、确也。从㹜从言。(後略)
按ずるに『説文解字』は言が䇂聲に從ふこと、䇂が犯罪人を指すことから、獄は犯罪者を二頭の犬が守り、逃走を防止するさまと誤解してゐる。古文字の言は䇂に從はず、『説文解字』の説は正確ではない(楊樹達)。
金文での用義は次のとほり。
- 本義に用ゐ、訴訟を指す。六年召白虎𣪕(琱生𣪕)
公氒(厥)稟貝、用獄𧧒(刺)為白(伯)
は、公は既に貝幣を納め、伯父との獄訟の用となす、の意。 - 引伸して刑獄の義を有す。坍盨
勿吏(使)暴虐從(縱)獄
は、濫りに刑獄を加へることなかれ、の意。
戰國竹簡、秦簡でも、本義に用ゐ、獄訟を指す。
- 《上博竹書二・容成氏》簡29
咎(臯)陶既已受命、乃辨侌(陰)昜(陽)之氣、而聖(聽)其訟獄
は、臯陶は任命されて以後、陰陽の氣を辨別して吉凶を知り、それから雙方の訴へを聽いた、の意。 - 《睡虎地秦簡・法律答問》簡107
葆子以上、未獄而死若已葬、而誧(甫)告之、亦不當聽治、勿收、皆如家罪。
は、葆子以上は、獄訟の審判を得ずに死んだり埋葬されたりした後に、告訴する人があつても、受理すべきではなく、逮捕せず、すべて家罪と同じ例による、の意。
屬性
- 獄
- U+7344
- JIS: 1-25-86
- 當用漢字・常用漢字
- 𡈭
- U+2122D
- 狱
- U+72F1