言 - 漢字私註

説文解字

言

直言曰言、論難曰語。从口䇂聲。凡言之屬皆从言。語軒切。

三・言部

説文解字注

言

直言曰言、論難曰語。『〔詩〕大雅・毛傳』曰、直言曰言、論難曰語。論、正義作荅。鄭注『〔周禮〕大司樂』曰、發端曰言、荅難曰語。注『〔禮記〕襍記』曰、言、言己事。爲人說爲語。按三注大略相同。下文語、論也。論、議也。議、語也。則詩傳當從定本『集注』矣。『爾雅〔釋詁〕』『毛傳』言、我也。此於雙聲得之。本方俗語言也。

从口䇂聲。語軒切。十四部。

凡言之屬皆从言。

康煕字典

部・劃數
部首
古文
𢍗
𢍬

『唐韻』語軒切『集韻』『韻會』魚軒切、𠀤𤬝平聲。〔音1〕『說文』直言曰言、論難曰語。『周禮・大司樂註』發端曰言、答述曰語。『釋名』言、宣也。宣彼此之意也。『易・乾卦』庸言之信。『書・湯誓』朕不食言。《傳》言已出而反吞之也。『周禮・地官・大司徒』以鄕八𠛬糾萬民、七曰造言之𠛬。《註》譌言惑衆也。『論語』寢不言。《註》自言曰言。『史記・商君傳』貌言華也、至言實也、苦言藥也、甘言疾也。『唐書・徐伯彥傳』言者、德之柄也、行之主也、身之文也。

又辭章也。『書・洪範』五事、一曰貌、二曰言。《疏》言者、道其語有辭章也。『禮・曲禮』士載言。《註》言、謂會同要盟之辭。

又一句爲一言。『左傳・定四年』趙𥳑子曰、夫子語我九言。『論語』一言以蔽之。

又一字爲一言。『戰國策』臣請三言而已矣、曰海大魚。『前漢・東方朔傳』凡臣朔固已誦四十四萬言。

又猶議也。『屈原・離騷』初旣與余成言兮、後悔遁而有他。

又號令也。『周語』有不祀則修言。

又助語辭。『易・師卦』田有禽利執言。《註》語辭也。

又『爾雅・釋詁』言、我也。『詩・周南』言告師氏。《傳》言、我也。師、女師也。

又『博雅』問也。『周禮・春官』冢人、及葬、言鸞車象人。《註》言問其不如法度者。

又『廣雅』從也。

又『釋名』委也。

又言言、高大貌。『詩・大雅』崇墉言言。《註》高大也。

又簫名。『爾雅・釋樂』大簫謂之言。《註》編二十三管、長尺四寸。『韻會』或作䇾。

又官名。『書・舜典』命汝作納言、夙夜出納朕命、惟允。《傳》納言、喉舌之官。『唐書・高祖紀』攺納言爲侍中。

又幘名。『後漢・輿服志』幘者、賾也。尚書賾收、方三寸、名曰納言、示以忠正、顯近職也。

又地名。『詩・國風』出宿于干、飮餞于言。《傳》適衞所經之地也。

又山名。『隋書・地理志』郉州內丘縣有千言山。又『山海經』大荒之中有山、名曰大言、日月所出。

又州、縣名。『宋史・劉翊傳』有言州。『魏書・地形志』有萬言縣。

又人言、砒石別名。『本草綱目』砒出信州、故隱信字爲人言。

又姓。『潛夫論』桓叔之後有言氏、韓後姬姓也。又複姓。『潛夫論』魯之公族有子言氏。

又『正韻』夷然切、音延。義同。

又『集韻』牛堰切、音𤬝。〔音3〕訟也。

又『集韻』『正韻』𠀤魚巾切、音銀。〔音2〕和敬貌。『禮・玉藻』二爵而言言斯。《註》言言、與誾誾同、意氣和悅貌。『集韻』亦作訢。

又叶眞韻。『韓愈・孔戣墓銘』白而長身、寡笑與言、其尚類也、莫之與倫。

又叶五剛切、音昂。『詩・商頌』鬷假無言。叶上羹平、下爭彊。羹音郞、平音旁、爭音章。

又叶五姦切、音顏。『古詩』四座且莫諠、願聽歌一言。請說銅爐器、崔嵬象南山。

又叶魚戰切、音彥。『楊修・節遊賦』迴旋詳觀、目周意倦。御子方舟、載笑載言。

『說文』本作𠱫。从口䇂聲。䇂、辠也、犯法也。『釋名』言之爲䇂也、寓戒也。鄭樵曰、言从舌从𠄞。𠄞、古上字、言出於舌上也。

部・劃數
廾部八劃

『玉篇』古文言字。註詳部首。

部・劃數
廾部十二劃

『字彙補』古文言字。註詳部首。

音訓義

音
ゲン(漢) ゴン(呉)⦅一⦆
ギン(漢) ゴン(呉)⦅二⦆
ゲン(推)⦅三⦆
訓
いふ⦅一⦆
こと⦅一⦆
ことば⦅一⦆
ここに⦅一⦆
官話
yán⦅一⦆
yín⦅二⦆
粤語
yín⦅一⦆

⦅一⦆

反切
『廣韻・上平聲・元・言』語軒切
『集韻・平聲二・元第二十二・言』魚軒切
『五音集韻・中平聲卷第三・元第七・疑三言』語軒切
聲母
疑(牙音・次濁)
等呼
三
推定中古音
ŋɪʌn
官話
yán
粤語
jin4
日本語音
ゲン(漢)
ゴン(呉)
訓
いふ
こと
ことば
ここに
義
ものをいふ。言葉を發する。述べる。言述。言行。言動。言及。言明。
言葉。言語。言辭。
言葉を數へる助數詞。一言一句。
ここに。『詩』などに助辭として用ゐる。意味は無い。
我。單數一人稱代名詞。
言言とは高大なるさま。
釋
『廣韻』言: 言語也。『字林』云「直言曰言、荅難曰語。」『釋名〔釋言語〕』云「言、宣也、宣彼之意也。」又姓、孔子弟子有言偃。語軒切。五。
『集韻』言言: 魚軒切。『說文』「直言曰言」。一曰我也。又姓。古作言。文八。
『康煕字典』上揭。

⦅二⦆

反切
『集韻・平二・諄・銀』魚巾切
『五音集韻・中平聲卷第三・眞第一・疑三銀』語巾切
聲母
疑(牙音・次濁)
等呼
三
官話
yín
日本語音
ギン(漢)
ゴン(呉)
義
誾、訢に通ず。
言言とは和らぎ謹むさま。
釋
『集韻』言訢: 鄭康成曰「言言、和敬皃。」亦作訢。
『康煕字典』上揭。

⦅三⦆

反切
『集韻・去聲上・願第二十五・𤬝』牛堰切
『五音集韻・去聲卷第十一・願第七・疑三𤬝』語堰切
聲母
疑(牙音・次濁)
等呼
三
日本語音
ゲン(推)
釋
『集韻』言: 訟也。
『康煕字典』上揭。

解字

白川

辛と口の會意。辛は入墨に用ゐる針の形。口は祝詞を收める器。盟誓のとき、もし違約するときは入墨の刑を受けるといふ自己詛盟の意をもつて、その盟誓の器の上に辛を添へる。その盟誓の辭を言といふ。

『說文』に字を䇂聲に從ふとするが、卜文、金文の字は辛に從ふ。

『說文』に直言を言と曰ひ、論難を語と曰ふとするが、言語は本來論議することではなく、『詩・大雅・公劉』は都造りのことを歌ふもので、于時言言、于時語語。(時ここに言言し、時に語語ギョギョす)といふのは、その地靈を襃め囃して所清めをする言靈的な行爲をいふ。言語は本來呪的な性格を持つものであり、言を神に供へて、その應答のあることを音といふ。神の「音なひ」を待つ行爲が、言であつた。

藤堂

辛(切れ目をつける刃物)と口の會意。口を塞いでもぐもぐいふことを音、諳といひ、はつきりかどめをつけて發音することを言といふ。

落合

甲骨文は口に從ひ䇂聲の形聲字。上古音は言が疑紐元部、䇂が溪紐元部で同部。䇂は刃物の一種で、同じく刃物の象形である辛や丵に替へた異體もある。殷代の作例は䇂に從ふものが多い。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. いふ。報告する。《合集》21631甲…卜子、不言多亞。
  2. 發聲。疾病の部位とされてをり、發聲に關する器官の意かも知れない。《合集》440貞、有疾言、惟𧉘。
  3. 祭祀名。西言とするものが多い。《合集》26730丙申卜旅貞、今夕、王西言。
  4. 地名またはその長。《合集》4519辛巳卜內、言其有遘。

金文以降には辛に從ふ字體が主に用ゐられるやうになり、更に隸書で辛の部分が簡略化された。

音は同源字。西周代に言に指示記號の短線を加へた形として派生した。加へられた記號については、音字の字義を表す指示記號とする説と、差異化のための記號とする説があるが、いづれが正しいか不明。

漢字多功能字庫

甲骨文、金文は、舌と一に從ひ、舌の先の上に横劃を加へる。一説に一は指示符號で、恐らく言語が舌から出る意といふ(于省吾)。後期金文で一の上に更に短い横劃を加へて飾筆とし、後世の言の形となつた。

甲骨文では本義に用ゐ、「貞言其㞢疾。」のやうに言語を表す。また、祭名に用ゐる。

金文での用義は次のとほり。

『郭店楚簡・緇衣』此言之玷『詩・大雅・抑』白圭之玷、尚可磨也。斯言之玷、不可為也。

季旭昇

甲骨文は舌に從ひ、上に一を加へて舌頭から外へ向かつての動作を表す。あるいは舌に加へる一を分化の符號と視る。(龍宇純『中國文字學』初版p209、姚孝遂『古漢字的形體結構及其發展階段』)

徐超

學者は舌の上に短橫を加へて指示符號として舌の出だす所の「言」を表すとする。あるいは短橫は區別の符號。本義は説話、言語。動詞の義を引伸して告知、訴説、議論、陳述などの義となし、名詞の義を引伸して言論、見解、學説、著作などの義となす。

言と音は古く一字、言葉が出れば音が有るからであらう。後世、區別のために短橫を加へて音字となす。金文に、舌字の從ふ口の中に橫點を有するものがあり、舌に指示符號を加へた後もまた音となす。

卜辭にあるいは歆と讀み、饗のこと。銘文にあるいは説話、説出(口外)の義に用ゐる。

謝廖科

『「音」字の成り立ちについて』(東北大學中國語學文學論集、第21/22合倂號、pp.1-22、2017年、web)に、大篇説(郭沫若)、祭器説(白川)、舌上説(鄭樵)、木鐸説(徐中舒主編『甲骨文大辞典』 )、形聲説(『說文』、 呉其昌、劉釧)を擧げ、前四説には難があり、形聲説に理があるとする。

屬性

言
U+8A00
JIS: 1-24-32
當用漢字・常用漢字
𢍗
U+22357
𢍬
U+2236C

関聯字

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