耒 - 漢字私註
説文解字
説文解字注
耕曲木也。各本「耕」上有「手」。今依『廣韵・隊韵』、『周易音義』正。下文云、耕、犁也。謂犁之曲木也。『禮記音義』引『字林』亦云耕曲木。『〔周禮〕考工記』車人爲耒、庛長尺有一寸、中直者三尺有三寸、上句者二尺有二寸。自其庛緣其外、以至於首、以弦其内、六尺有六寸。《注》云、庛讀爲棘刺之刺。刺耒下前曲接耜。緣外六尺有六寸。内弦六尺。應一步之尺數。按經多云耒耜。據鄭說耒以木、耜以金。沓於耒刺。京房云、耜、耒下耓也。耒、耜上句木也。許《木部》耜作枱。耒耑也。耕犁也。許說與京同、與鄭異。鄭本匠人、謂犁爲耜、統言之也。許分別金謂之犁、木謂之枱、析言之也。
从木推丯。『考工記』曰、直庛則利推。從木推丯㑹意。盧對切。十五部。
古者𡍮作耒枱。枱見《木部》。今之耜字也。各本作㭒、誤。㭒、臿也。㠯振民也。此出『世本』。『世本』有『作篇』。振、舉救也。
凡耒之屬皆从耒。
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
『廣韻』『集韻』『韻會』𠀤盧對切、音類。〔音2〕『說文』手耕曲木也。从木推丯。古者𡍮作耒㭒以振民也。『古史考』神農作耒。『易・繫辭』揉木爲耒。『禮・月令』孟春之月、乃擇元辰、天子親載耒耜。『周禮・冬官考工記車人』車人爲耒庛、長尺有一寸、中直者三尺有三寸、上句者二尺有二寸。《註》耒謂耕耒、庛謂耒下岐。
又水名。『水經』耒水、出桂陽柳縣南山。
又『集韻』魯猥切、音磊。〔音4〕又魯水切、音壘。〔音1〕義𠀤同。
又『集韻』倫追切、音纍。〔音3〕果實垂貌。一曰耕多草。
音訓義
- 音
- ルイ(漢)(呉)⦅一⦆
- ライ(漢)(呉)⦅二⦆
- ルイ(推)⦅三⦆
- ライ(推)⦅四⦆
- ルイ(推)⦅五⦆
- 訓
- すき⦅一⦆⦅二⦆⦅三⦆⦅四⦆
- 官話
- lěi⦅一⦆
- 粤語
- leoi6⦅二⦆
- loi6(又讀)
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・上聲・旨・壘』力軌切
- 『集韻・上聲上・旨第五・壘』魯水切〔康煕1〕
- 『五音集韻・上聲卷第七・旨第四・來・三壘』力軌切
- 聲母
- 來母(半舌音・次濁)
- 官話
- lěi
- 日本語音
- ルイ(漢)(呉)
- 訓
- すき
- 義
- 田器。(『廣韻』『集韻』)
⦅二⦆
- 反切
- 『廣韻・去聲・隊・纇』盧對切〔康煕2〕
- 『集韻・去聲上・隊第十八・纇』盧對切
- 『五音集韻・去聲卷第十・隊第十四・來・一纇』盧對切
- 聲母
- 來母(半舌音・次濁)
- 粤語
- leoi6
- 日本語音
- ライ(漢)(呉)
- 訓
- すき
- 義
- 耒耜。(『廣韻』)
⦅三⦆
- 反切
- 『集韻・平聲一・脂第六・累』倫追切〔康煕3〕
- 『五音集韻・上平聲卷第一・脂第五・來・三㶟』力追切
- 聲母
- 來母(半舌音・次濁)
- 日本語音
- ルイ(推)
- 義
- 田器。(『集韻』)
- 果實垂貌。一曰耕多草。(『康煕字典』)
⦅四⦆
- 反切
- 『集韻・上聲上・賄第十四・磊』魯猥切〔康煕4〕
- 『五音集韻・上聲卷第七・賄第十一・來・一磥』落猥切
- 聲母
- 來母(半舌音・次濁)
- 日本語音
- ライ(推)
- 義
- 田器。(『集韻』)
⦅五⦆
- 反切
- 『集韻・去聲上・至第六・類』力遂切
- 『五音集韻・去聲卷第十・至第五・來・三類』力遂切
- 聲母
- 來母(半舌音・次濁)
- 日本語音
- ルイ(推)
- 義
- 耜柄。(『集韻』)
解字
白川
力と又の會意。力はすきの象形。そのすきを持つ形。金文の圖象にその形のものがあり、卜文の耤は力を踏んで耕す形に作る。
『説文解字』に手もて耕す曲木なり
とし、木もて丯を推すに從ふ
とするが、その曲木が耒の形。丯は雜草、あるいは契刻の形で、耒とは關係がない。
藤堂
象形。三つ叉の刃のあるすきを描いたもので、畑をすいて縱に筋目をつけるすき。
落合
耜の形を詳細に表示した形。但し甲骨文には單獨では見えず。
漢語多功能字庫
金文は下部が分岐した田畑を耕すのに用ゐる道具に象る。本義は農具で、言ひ傳へによれば大禹が水を治めたときに土を掘り起こすのに用ゐた。小篆は變じて木と丯に從ふ。『説文解字』は丯を亂草(稻科雀茅屬の植物)の一種、木は除草の道具を代表するとする。『説文解字』𣐇(耒)、手耕曲木也。从木推丯。(後略)
農業に從事することは生計に結び附くので、耒は漢字の重要な部首となつた。
耒と力の性質は近く、表意符號として通用することがある。しかしそれによつて耒と力が一つの字とは言へない。形と構造の上から見れば、力、耜、臿は一系をなし、木の棒の樣式の原始的な農具が發展して成り、耒は木の股を用ゐて作られる原始的な農具が發展して成つた(裘錫圭)。
耒は農具に用ゐる外、言ひ傳へではまた大禹が水を治めたときに水を治めたときに土を掘り起こすのに用ゐた道具でもある。『韓非子・五蠹』禹之王天下也、身執耒臿以為民先。
いま紹興市の郊外に大禹陵があり、山頂の大禹の立像は、手に持つのはまさに「耒臿」で、その形狀は金文の耒字にとてもよく似てゐる。
金文では氏族名に用ゐる。耒父己尊耒父己
。今日まで、紹興の近郊の禹陵邨一帶では、禹の「姒」姓の外に、「耒」姓があり、恐らくはいづれも歷史の殘餘であらう。
屬性
- 耒
- U+8012
- JIS: 1-70-48
關聯字
耒に從ふ字を漢字私註部別一覽・耒部に蒐める。