其 - 漢字私註

説文解字

𠔝
の重文第四。
籒文箕。
箕部

説文解字注

𠔝
籒文箕。依大徐作籒。按經籍通用此字爲語詞。渠之切、或居之切。

康煕字典

部・劃數
八部・六劃

『唐韻』『集韻』『韻會』渠之切『正韻』渠宜切、𠀤音碁。『韻會』指物之辭。『易・繫辭』其旨遠、其辭文。『詩・大雅』其在于今。

又助語辭。『書・西伯戡黎』今王其如台。『詩・周南』灼灼其華。『玉篇』辭也。

又姓。『韻會』漢陽阿侯其石。

又『唐韻』『集韻』『韻會』𠀤居之切、音姬。『韻會』語辭。『書・微子』若之何其。『詩・小雅』夜如何其。

又人名。『史記・酈生傳』酈生食其者、𨻰留高陽人也。《註》正義曰、酈食其、三字三音、讀曆異幾。『前漢・楚元王傳』高祖使審食其留侍太上皇。《註》師古曰、食音異、其音基。

又山名。『前漢・武帝紀』四月、幸不其。《註》其音基、山名。『廣韻』在琅邪。

又地名。『韻會』祝其、卽夾谷也。

又『集韻』『韻會』居吏切。『正韻』吉器切、𠀤音寄。『韻會』語已辭。『詩・檜風』註1彼其之子。通作記。『禮・表記』引『詩』彼記之子。又通己註2。『左傳・襄二十七年』引『詩』彼己之子。

『韻會』或作忌。『詩・鄭風』叔善射忌。

註1
『詩・檜風』に彼其之子の句は見えず、『詩・鄭風・羔裘』に見える。
註2
中國哲學書電子化計劃のテキストは已に作るが、直後の『左傳・襄二十七年』引用と合はないので己に直した。

部・劃數
二部・二劃

『集韻』古作亓。註詳八部六畫。

又姓。唐亓志紹、宋亓贇、明亓宣、亓驥。

集韻

四聲・韻・小韻
平聲一・之第七・姬
反切
居之切

不其、邑名。在在琅邪。

亦姓。

四聲・韻・小韻
平聲一・之第七・其
反切
渠之切

渠之切。

辭也。豈也。

亦姓。

古作丌亓。

文五十七。

異體字

或體。

音訓

(1) キ(漢) 〈『廣韻・上平聲』渠之切〉[qí]{kei4}
(2) キ(漢) 〈『廣韻・上平聲・姬』居之切〉[jī]{gei1}
(1) それ。その。

音(2)は句末の助辭に用ゐる。

酈食其は音(2)に讀む。

解字

箕の形に象り、初形は𠀠。後にに從ふ。丌聲と解するも可か。の初文。

其字を假借義に用ゐるため、繁文の箕で原義を表す。

白川

象形。箕の形で、の初文。

其を代名詞、副詞に用ゐるに及んで、のち箕がつくられた。

金文には箕を簸揚する形、またに從ふ形がある。

終助詞として、己、記、忌と通用する。

藤堂

象形。甲骨文は、穀物を載せる四角い箕の形を描いたもの。金文は、その下に臺の形を加へた。

其はの原字だが、その音を借りてやや遠い所の物を指す指示詞に當てた。單獨では主語や客語に用ゐない。

落合

箕の象形。甲骨文は𠀠に當たる形。

甲骨文では假借して相對的な未來の時制を表す發語の助辭に用ゐる。

甲骨文の要素としては原義で使はれてゐる。

其の字形は、金文で兩手の形の、または机の形のを加へた形。古文までは初文の𠀠の形も倂用されてゐた。

漢字多功能字庫

甲骨文は𠀠に作り、箕の形を象り、の初文。甲骨文では虛詞に用ゐ、應該(〜すべき、〜の筈)、假設(假定)などを表す。『詩・衛風・伯兮』其雨其雨は、雨は降らうか、雨は降らうか、の意で、甲骨文今日其雨(《合集》00006)不其雨の用法と同じ。朱熹注其者、冀其將然之辭。

金文は甲骨文を承け、箕の形に象る。後に𠀠の下に一劃を加へ、一劃の下にまた二つの小さい横劃を加へ、小横劃はまた縱劃に變はり、の形となり、箕を卓上に置くさまに象る。丌は其の聲符。

金文の異體に、を加へるものがある。

金文での用法は次のとほり。

屬性

U+5176
JIS: 1-34-22
人名用漢字
U+4E93
𠔝
U+2051D

関聯字

其に從ふ字を漢字私註部別一覽・其部に蒐める。