女 - 漢字私註
説文解字
婦人也。象形。王育說。凡女之屬皆从女。尼呂切。
- 十二・女部
説文解字注
婦人也。男、丈夫也。女、婦人也。立文相對。『〔儀禮〕喪服經』每以丈夫婦人連文。渾言之女亦婦人。析言之適人乃言婦人也。『左傳〔襄三十年〕』曰、君子謂宋共姬女而不婦、女待人、婦義事也。此可以知女道婦道之有不同者矣。言女子者對男子而言。子皆美偁也。曰女子子者、系父母而言也。『集韵』曰、吳人謂女爲娪。牛居切。靑州呼女曰娪。五故切。楚人謂女曰女。奴解切。皆方語也。象形。王育說。不得其居六書何等、而惟王育說是象形也。葢象其揜斂自守之狀。尼呂切。五部。小徐王育說三字在从女下。凡女之屬皆从女。
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
- 古文
- 𠨰
『唐韻』『正韻』尼呂切『集韻』『韻會』碾與切、𠀤茹上聲。『博雅』女、如也。言如男子之敎、人之陽曰男、隂曰女。『易・繫辭』坤道成女。『詩・小雅』乃生女子、載寢之地、載衣之裼、載弄之瓦。『禮・內則』女子生、設帨於門右。『淮南子・地形訓』土地各以類生、澤氣生女。
又已嫁曰婦、未字曰女。『禮・曾子問』嫁女之家、三夜不息燭、思相離也。
又星名。須女四星、主布帛、爲珍寶藏、一名婺女。十二月旦在北、二月旦中。又織女三星、天女也、主苽果絲帛、𠀤見『星經』。
又水名。『山海經』嶧臯之山、其水出焉、東流注于激女之水。
又玄女、九天妃也。黃帝與蚩尤戰、不勝、歸太山、遇一婦人、曰、吾所謂玄女者。見『玄女戰法』。
又金女、西王母也、厥姓緱氏、見『集仙錄』。
又靑女、霜神也、至秋三月地氣下藏、靑女乃出、以降霜雪、見『淮南子・天文訓』。
又奼女、丹汞也。河上奼女、得火則飛、見『參同契』。
又國名。女子國、在巫咸北。『郭璞・圖贊』女子之國、浴于黃水。乃媷乃字、生男則死。又東女國、女主號賔就。見『唐書・西域傳』。又扶桑東千里有女國、其人容貌端正、身體有毛、見『通考』。
又姓。湯賢臣女鳩、女房、漢賢良女敦、晉大夫女叔寬。
又梵言阿摩、此言女、言母。蘇弗室利、此言善女。
又鸚䳇名雪衣女、見『漢武外傳』。鵲名神女、見『古今注』。蜆名縊女、見『爾雅・釋蟲』。螟蛉名戎女、見『毛詩・註疏』。
又『集韻』『韻會』𠀤忍與切。同汝、對我之稱。
又『廣韻』『集韻』『韻會』𠀤尼據切、茹去聲。以女妻人曰女。『書・堯典』女于時。
- 部・劃數
- 厂部・三劃
『集韻』女古作𠨰。註見部首。
音訓
- 音
- (1) ヂョ(漢) ニョ(呉) 〈『廣韻・上聲・語・女』尼呂切〉[nǚ]{neoi5}
- (2) ヂョ(漢) ニョ(呉) 〈『廣韻・去聲・御・女』尼據切〉[nǜ/nǚ]{neoi6}
- (3) ジョ(漢) ニョ(呉) 〈『集韻』忍與切、同汝〉[rǔ]{jyu5}
- 訓
- (1) をんな。むすめ。
- (2) めあはす
- (3) なんぢ
音義(2)について藤堂は官話發音をnǜとするが、漢語資料はnǚとし、(1)との讀み分けを示さず。
解字
白川
象形。女子が跪いて坐する形に象る。手を前に交へ、裾をおさへるやうに跪く形。
動詞として妻にすること、また代名詞として二人稱に用ゐる。代名詞には、のち汝を用ゐる。
藤堂
象形。なよなよとした體つきの女性を描いたもの。
落合
象形。甲骨文は正坐した女性が手を前で合はせてゐる姿。左に合はせた手の部分があり、下部の足の形は卩と同樣。
甲骨文の異體字に兩點を加へた形があり、字形は母に當たるが、明確な區別はされてをらず、後代に分化した。
甲骨文に簪を著けた形の異體字もあるが、大と夫のやうな意味上の違ひはない。但し、簪を強調した形は、妻字。
甲骨文は占卜の内容であるため、對話などは記されてゐないが、殷金文や西周金文では女を假借して二人稱に用ゐてゐる。
甲骨文での用義は次のとほり。
- をんな。《合集》728
…卜爭、子𫻨于母禋彘小⿱冖羊、侑服女一。
- 母。この場合、釋字に母を用ゐる。實母以外の父の側室も母と呼ばれる。《合補》315
貞、翌庚申、侑于母庚。
- 妻。この場合も釋字に母を用ゐる。王妃は「司母」と呼ばれる。神話上の配偶關係にも用ゐられる。《合集》685
貞、燎于王亥母豚。
- むすめ。女子。對義語は子。《合補》4031
王占曰、其惟戊娩、不吉、其女。
- 否定の助辭。「なし」と訓ずる。母の同源字の毋に當たり、假借の用法。《甲骨拼合集》145
婦好毋其有子。
- 司母
- 王の后妃。
- 西母
- 神名。
- 東母
- 神名。
- 河女
- 祭祀對象。神話における河の女性親族か。
- 婦女
- 妻と娘。
甲骨文の要素としては、女性に關する事柄のほか、女性の名前を表す字に多く使はれてゐる。また、祭祀を表す字に使はれることもあり、この場合には、手を前で合はせた人の姿の用法も含まれる。
甲骨文や金文では旁となることが多く、古文以降、偏とされることが多くなつた。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は、女子が兩膝、兩爪先を地に著け、臀部を踵の上に乘せ、兩手を胸の前で重ね僅かに下に垂らす形。今の日本や韓國の女性の坐る姿が依然としてこのやうな姿で、支那の古代の風俗を殘してゐる。後期金文は書寫を簡便にして、臀部が踵を壓する跪坐の形態を段々と失つた。また、甲骨文、金文では女と母は混淆してをり、女を母と讀む例がある。
甲骨文では用法が五つある。
金文では用法が四つある。
- 婦女を表す。師㝨簋
士女羊牛
。 - 讀んで母となし、母親を表す。司母戊方鼎
司女(母)戊
。 - 二人稱代名詞に用ゐる。後世典籍では汝に作る。夨令方彝
今我唯令女(汝)二人
。 - 讀んで如となし、如同(〜と同じ、〜のやうである)を表す。中山王鼎
事愚女(如)智
。
屬性
- 女
- U+5973
- JIS: 1-29-87
- 當用漢字・常用漢字
- 𠨰
- U+20A30
関聯字
女に從ふ字を漢字私註部別一覽・女部に蒐める。