常 - 漢字私註
説文解字
説文解字注
下帬也。『釋名〔釋衣服〕』曰、上曰衣。下曰裳。裳、障也。以自障蔽也。『士冠禮〔儀禮〕』爵弁服、纁裳。皮弁服、素積。玄端、玄裳、黃裳、襍裳可也。『禮記・深衣』續衽、鉤邊。要縫半下。今字裳行而常廢矣。
从巾尙聲。从巾者、取其方幅也。引伸爲經常字。市羊切。十部。
常或从衣。
康煕字典
- 部・劃數
- 巾部・八劃
『唐韻』市羊切『集韻』『韻會』辰羊切、𠀤音裳。『玉篇』恆也。『正韻』久也。『易・坤卦』後得主而有常。『繫辭』動靜有常。『詩・周頌』𨻰常于時夏。《箋》謂𨻰久長之功、於是夏而歌之。『朱傳』謂君臣父子之常道。
又五常。『書・舜典愼徽五典傳』五典、五常之敎、父義、母慈、兄友、弟恭、子孝。又『五品傳』五品、謂五常。《疏》此事可常行、乃爲五常耳。
又神名。『荀子・九家易』兌爲常、西方之神也。
又地名。『詩・魯頌』居常與許。《傳》常許、魯南鄙西鄙也。
又州名。『隋書・地理志』毗陵郡平𨻰置常州。
又山名。『前漢・地理志』常山郡。《註》恆山在西、避漢文帝諱、故改曰常山。
又水名。『史記・夏本紀』常衞旣從。《註》常水、出常山上曲陽縣。『書・禹貢』作恆。
又旂名。『周禮・春官』司常掌九旗之物名、日月爲常。『又』王建大常。『釋名』日月爲常。謂畫日月於其端、天子所建、言常明也。
又常服。『詩・小雅』載是常服。《傳》日月爲常服、戎服也。
又『廣韻』倍尋曰常。
又車戟名。『釋名』車戟曰常、長丈六尺、車上所持也。八尺曰尋、倍尋曰常、故曰常也。
又木名。『爾雅・釋木』常棣。《註》關西棣樹、子如櫻桃、可食。『詩・小雅』彼爾維何、維常之華。
又姓。『廣韻』出河內。『前漢・常惠傳』惠、太原人、甘露中爲右將軍。
又與裳同。『說文』下帬也。《徐鉉曰》下直而垂、象巾、故从巾。今文作裳。
音訓・用義
- 音
- ジャウ(呉) シャウ(漢) 〈『廣韻・下平聲・陽・常』市羊切〉[cháng]{soeng4}
- 訓
- つね。つねに。ひさしい。とこしへに。かつて。
常棣はまた棠棣につくり、庭櫻、庭梅のこと。
解字
白川
形聲。聲符は尙。
『説文解字』に重文として裳を錄するが、今は區別して用ゐる。
常は一定幅の巾のこと。
金文に尙を常時の意に用ゐ、《㸓鼎》に必ず尙に厥の邑に處らしめよ
、《因𬁼敦》に永く典尙と爲せ
のやうに用ゐる。
嘗と通用し、「かつて」と訓ずることがある。
藤堂
もとは裳と同じで、長いスカートのこと。
のち、時間が長い、いつまでも長く續く、の意となる。
漢字多功能字庫
金文は巾に從ひ尚聲。巾は布に關はりあることを表す意符。本義は下半身に著ける衣服。巾と衣は意を同じくし、常と裳は本來は一字の異體である。
後に常を經常の常に借用し、裳が本義を表すやうになつた。古書では常と嘗が混用されてゐたが、明清以後、混用は次第に無くなつてきた。
金文では本義に用ゐ、下裳を表す。子犯編鐘衣、常(裳)、帶、巿
は、上衣、下裳、腰帶、蔽膝(禮服用の膝掛。古代、朝覲、祭祀の時に裳の上に著けた服飾。)を表す。
金文ではまた尚を借りて常規、常法の常を表す。
戰國竹簡での用義は次のとほり。
- 本義に用ゐる。
- 《新蔡楚簡・甲三》簡207
衣常(裳)
。 - 《睡虎地秦簡・日書甲種》簡121背
丁酉材(裁)衣常(裳)
。
- 《新蔡楚簡・甲三》簡207
- 掌の通假字となし、てのひらを表す。《馬王堆帛書・陰陽十一脈灸經乙本》第16行
臂巨陰脈、在於手常(掌)中。
朱駿聲は、常の本義は旗、裳は下衣といふ。金文の用例より、一考に値するが、常は下裳の本字たるべし。
屬性
- 常
- U+5E38
- JIS: 1-30-79
- 當用漢字・常用漢字