實 - 漢字私註
説文解字
- 實
富也。从宀从貫。貫、貨貝也。
- 七・宀部
康煕字典
- 部・劃數
- 宀部・十一劃
- 古文
- 宲
- 𡾍
『唐韻』『廣韻』神質切『集韻』『類篇』『韻會』食質切、𠀤音失。〔音1〕『說文』實、富也。从宀从貫。貫、貨貝也。『廣韻』誠也、滿也。『增韻』充也、虛之對也。『易・本義』乾一而實、坤二而虛。『孟子』充實之謂美、充實而有光輝之謂大。『宋程頤曰』心有主則實、實則外患不能入。
又華實。『晉語』華則榮矣、實之不知、請務實乎。『史記・商鞅傳』貌言華也、至言實也。
又物成實也。『爾雅・釋草』果臝之、括樓𠛬昺疏。實卽子也。『禮・月令』季春、乃爲麥祈實。《註》謂於含秀求其成也。
又品物也。『左傳・莊二十二年』庭實旅百。《註》庭之所實𨻰有百品、言物備也。又『襄三十一年』其輸之、則君之府實也。
又軍實。『左傳・襄二十四年』齊社、蒐軍實。杜註祭社、因閱數軍器。
又『儀禮・特牲饋食』實豆籩。《註》謂取籩豆實之也。『周禮・春官・小宗伯註』豆實實於罋、簋實實於篚。
又具數也。『史記・始皇本紀』使黔首自實田。《註》謂令民自具頃畝實數也。
又『唐六典』凡里有手實法、歲終、具民之年與地闊狹爲鄕帳。
又驗也。『後漢・光武紀』使各實二千石、以下至黃綬。
又事跡也。『史記・莊周傳』率皆虛語、無事實。『韓非傳』反舉浮淫之蠹、加之功實之上。
又當也。『書・呂𠛬』閱實其罪。《註》使與法相當也。
又是也。『詩・大雅』實墉實壑。
又姓。
又『正字通』脂利切、音至。與至同。『禮・雜記』計於適者曰、吾子之外私寡大夫不祿、使某實。《註》言爲計而至此也。
『增韻』實、亦作寔。『韻會』實寔分爲二。
- 部・劃數
- 宀部・七劃
『玉篇』古文實字。註見十一畫。
又『舉要』从呆。
- 部・劃數
- 山部十五劃
『集韻』實古作𡾍。註見宀部十一畫。
異體字
簡体字。
いはゆる新字体。
音訓義
- 音
- ジツ(慣) ジチ(呉) シツ(漢)⦅一⦆
- 訓
- みちる⦅一⦆
- みのる⦅一⦆
- み⦅一⦆
- まこと⦅一⦆
- 官話
- shí⦅一⦆
- 粤語
- sat6⦅一⦆
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・入聲・質・實』神質切
- 『集韻・入聲上・質第五・實』食質切
- 『五音集韻・入聲卷第十四・質第一・床三實』神質切
- 聲母
- 牀(正齒音・全濁)
- 等呼
- 三
- 官話
- shí
- 粤語
- sat6
- 日本語音
- ジツ(慣)
- ジチ(呉)
- シツ(漢)
- 訓
- みちる
- みのる
- み
- まこと
- 義
- 滿ちる。充實。
- 植物の果、あるいはそのみのり。果實。結實。
- まこと。眞實。誠實。虛實。事實。實際。實情。
- 釋
- 『廣韻』
實: 滿也、誠也。神質切。一。
- 『集韻』
實𡾍宲: 食質切。『說文』「富也。从宀从貫。貫、貨貝也。」古作𡾍宲。文四。
- 『康煕字典』上揭。
解字
白川
宀と貫の會意。宀は宗廟、貫は貝貨を貫き連ねた形で、貝を宗廟に獻ずる意。その貫盈するところから、充實の意となる。
金文の《散氏盤》に鼎に從ふ字があり、また《國差𦉜》の字は、上部が冖に近い。鼎中に物を滿たして供へる意ともみられる。
充實の意から誠實、實行の意となり、その副詞に用ゐる。
藤堂
宀(屋根)と周(一杯)と貝(寶)の會意で、家の中に財寶を一杯滿たす意を示す。中身が一杯で缺け目がないこと。
落合
西周代に初出。二系統ある。
一つは家屋の象形の宀と貫に從ふ形で、『說文』は貫を貨貝としてをり、屋内に財貨を滿たす意味といふ解釋になる。
もう一つは宀と周と貝に從ふ形で、周に「みちる」の意味があることから、財寶が家屋にみちるといふ解釋になる。
文字の構造として、内部で修飾・被修飾の關係になることはある(例: 赤、雀)が、主語・動詞や他動詞・目的語になる例は殆ど無く、「貝が周ちる」「貝を周たす」といふ解釋は蓋然性が低い。但し、西周代の金文では周に從ふ字形の方がやや早く出現してゐるので、それが字源の可能性も否定はできない。
周聲とする説もあるが、上古音について實は質部、周は幽部と推定されてをり、相違が大きい。
漢字多功能字庫
西周の散氏盤銘文の實字は宀と周と貝に從ふ。周は琱の象形で、琱琢の玉を指し、屋内に貝や玉など寶物が充滿する意と解け、本義は富み實ちる意。小篆は宀と貫に從ふ。貫は古い錢幣の單位で、繩に通したものを一貫と稱す。屋に錢財が滿ちるの意。本義は富むこと。充實の意を派生する。
後には周の字が變化して、國差𦉜は田につくる。楚簡はあるいは目につくり、秦簡や小篆は毌につくり、毌と貝が組み合はさつて貫の形となつた。『説文解字』の分析は小篆に據る。
實字は、財寶が屋に滿ちるさまから、充實、滿足の義となる。以下、金文での用義。
- 充實、充滿の意。㝬簋
肆實朕多御(禦)。
『小爾雅・廣誥』實、滿也。
全句で、陳列に盡力し、我が衆多の禦祭を充實する、の意。國差𦉜用實旨酉(酒)
は、用ゐて以て美酒で滿たす、の意。 - 誠、眞實の意。散氏盤
實余有散氏心賊、則鞭千罰千。
この實は假定の辭で、もし事實であれば、の意であり、典籍では誠の字を用ゐる。全句で、もし本當に散氏に加害の心があるなら、鞭で千回打ち、千度罰する、の意。
《段注》に引伸之為艸木之實。
とあり、按ずるに、實に充實の義があり、それゆゑ内容が充實してゐる物もまた實と呼び、果實の義を派生する。『史記・大宛列傳』俗嗜酒、馬嗜苜蓿、漢使取其實來。
屬性
- 實
- U+5BE6
- JIS: 1-53-73
- 人名用漢字
- 宲
- U+5BB2
- 𡾍
- U+21F8D
- 实
- U+5B9E
- 実
- U+5B9F
- JIS: 1-28-34
- 當用漢字・常用漢字