令 - 漢字私註
説文解字
發號也。从亼卪。
- 註に
徐鍇曰、號令者、集而爲之。卪、制也。
といふ。 - 九・卩部
説文解字注
發號也。《号部》曰、號者、嘑也。《口部》曰、嘑者、號也。發號者、發其號嘑以使人也。是曰令。《人部》曰、使者、令也。義相轉注。引伸爲律令、爲時令。『詩・箋』曰、令、善也。按『詩』多言令。毛無傳。古文『尚書』言靈。見『〔書〕般庚』、『〔同〕多士』、『〔同〕多方』。『般庚・正義』引『釋詁』靈、善也。葢今本『爾雅』作令、非古也。凡令訓善者、靈之假借字也。从亼卪。號嘑者招集之卪也。故从亼卪會意。力正切。古音在十二部。
康煕字典
- 部・劃數
- 人部・三劃
『集韻』『正韻』𠀤力正切、零去聲。律也、法也、告戒也。『書・囧命』發號施令、罔有不臧。『禮・月令』命相布德和令。『周禮・秋官』士師掌士之八成、四曰犯邦令、五月撟邦令。
又三令。『前漢・宣帝紀』令有先後、有令甲、令乙、令丙。
又縣令。漢法、縣萬戸以上爲令、以下爲長。
又時令、月令、所以紀十二月之政。
又善也。『詩・大雅』令聞令望。『左傳・成十年』忠爲令德、非其人猶不可、况不令乎。
又姓。
又『集韻』郞丁切『正韻』離呈切、𠀤音零。厮役曰使令。
又丁令、地名。見『前漢・張湯傳』。或作丁零。又令狐、亦地名。
又令狐、複姓。
又『詩・齊風』盧令令。《註》盧、田犬。令令、犬頜下環聲。
又與鴒通。『詩・小雅』脊令在原、兄弟急難、卽鶺鴒鳥。
又令適、甓也。與瓴甋同。
又『集韻』郞定切、音笭。令支、縣名。在遼西。
又『廣韻』力延切『集韻』陵延切、𠀤音連。亦縣名。『前漢・地理志』金城郡有令居縣。
又『集韻』盧景切、音領。官署之長。
又叶呂張切、音良。『韓愈・谿堂詩』凡公四封、旣富以强。謂公吾父、孰違公令。叶下邦。
『說文』載卩部。从亼从卩。發號也。《徐曰》亼卽集字、人而爲之節制。會意。
音訓・用義
- 音
- (1) レイ(漢) リャウ(呉) 〈『廣韻・去聲・勁・令』力政切〉[lìng]{ling6}
- (2) レイ(漢) リャウ(呉) 〈『廣韻・下平聲・清・跉』吕貞切〉[líng/lìng]{ling4}
- (3) レイ(漢) リャウ(呉) 〈『廣韻・下平聲・靑・靈』郎丁切〉[líng]{ling4}
- 訓
- (1) よい。のり(法令)。
- (2) しむ。せしむ。
音(2)の官話現代音はlìng。
脊令は音(3)に讀み、鶺鴒に同じ。
令狐は複姓。音(3)に讀む。
現代漢語では、官話lǐng、粤語ling1に讀んで、紙の數量の單位に用ゐる。一令は印刷原紙五百枚。米のreamに相當。英のreamは480枚。本邦で平判紙千枚を一連とするのもreamに由來する。
解字
白川
象形。禮冠を著けて、跪いて神意を聞く人の形に象る。古くは令、命の二義に用ゐた。
『説文解字』に號を發するなり。亼卩に從ふ。
と會意に解する。人を亼めて玉瑞の節(卩)を頒かち、政令を發する意とするが、卜文、金文の字形は、神官が目深に禮帽を著けて跪く形で、神意を承ける象とみられる。
金文に「大令(命)」のやうに命の字としても用ゐ、西周後期に至つて、祝禱の器の形を添へて命の字となる。
鈴も初めは令に從つて鈴に作り、のち𬫦に作る。鈴は神を降し、また神を送るときに用ゐる。
令、命は神意に關して用ゐる語。
神意に從ふことから令善の意となり、また命令の意から官長の名、また使役の意となる。
藤堂
△印(覆ひの下に集めることを示す)と人の跪く姿の會意で、人々を集めて、神や君主の宣告を傳へるさまを表す。清く美しいの意を含む。もと、神々しい神のお告げのこと。轉じて長上の言ひ附けのこと。
落合
會意。甲骨文は、屋根の象形である今や入の下に卩を加へた形。卩は坐つた人の象形であり、王の居所に呼ばれて命令を受けてゐる樣であらう。
甲骨文では、命令する、命令して何かをさせる意に用ゐる。《殷墟小屯中村南甲骨》375王令疛人墾田于盉。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は、亼と卩に從ふ。亼は口の倒置形。卩は跪坐する人の形に象る。全字で跪坐する人に向いて口を開き號令を與へる意と解く。令と命は古くは一字、後に分化して二字となつた。
甲骨文では動詞に用ゐ、命令することを指す。
- 《合集》14295
今一月、帝令雨。
- 《合集》20451
王令御(禦)方
は、王が方國を防ぐことを命ずることをいふ。
金文での用義は次のとほり。
- 動詞に用ゐ、命令することを指す。乍冊睘卣
王姜令乍(作)冊睘安尸(夷)白(伯)
は、王姜が冊睘を作り夷伯に安否を問ふことを命ずることをいふ。 - 名詞に用ゐ、命令を指す。大保𣪕
王降征令于大保
は、王が太保に對し遠征の命令を下すことをいふ。 - 任命を指す。曶鼎
曶、令女(汝)更(賡)乃且(祖)考𤔲卜事。
曶、汝の祖の掌つてゐた占ひを續けるやう汝を任命する、の意。 - 命令から引伸して賞賜を指す。獻𣪕
楷白(伯)令氒(厥)臣獻金車
は、楷伯は獻といふ名の家臣に青銅の車を賞賜することをいふ。 - 金文に「天令」の語があり、傳世典籍の「天命」のこと。彔白[冬戈]𣪕蓋
惠弘天令(命)
は、仁惠(慈しみ深い)、寬大なる天命を指す(王輝)。 - 生命は天より與へられることから、賜與の意から引伸して生命、壽命を指す。頌鼎
通彔(祿)、永令(命)
は、完全な福蔭、長い壽命を指す。 - 用ゐて鈴となす。成周鈴一
王成周令(鈴)。
秦簡での用義は次のとほり。
- 本義に用ゐ、命令を指す。《睡虎地秦簡・秦律十八種》簡101
其叚(假)公、叚(假)而有死亡者、亦令其徒、舍人任其叚(假)。
もし官有の器物を借用し、借りた人が死亡したら、徒弟あるいは下僕に責を負ふやう命ずべし、の意。 - 官名に用ゐる。《睡虎地秦簡・封診式》簡24
即令令史某齒牛、牛六歲矣
は、すぐさま令史某に牛の齒を調べるやう命じ、牛は既に六歳になつてゐた、の意。
傳世古籍での用義は次のとほり。
- 命令から引伸して「せしむ」の意を有す。『廣雅・釋詁一』
令、使也。
- 『戰國策・趙策一』
故貴為列侯者、不令在相位。
- 『戰國策・趙策一』
- 美好の意を有す。『爾雅・釋詁上』
令、善也。
- 『詩・大雅・卷阿』
如圭如璋、令聞令望。
鄭玄箋令、善也。
- 『詩・大雅・卷阿』
屬性
- 令
- U+4EE4
- JIS: 1-46-65
- 當用漢字・常用漢字
關聯字
令に從ふ字を漢字私註部別一覽・卩部・令枝に蒐める。