田 - 漢字私註
説文解字
陳也。樹穀曰田。象四囗。十、阡陌之制也。凡田之屬皆从田。
- 十三・田部
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
『唐韻』待年切『集韻』『韻會』『正韻』亭年切、𠀤音闐。『說文』𨻰也。樹穀曰田、象四口。十、阡陌之制也。『玉篇』土也、地也。『正韻』土已耕曰田。『釋名』塡也。五稼塡滿其中也。『易・乾卦』見龍在田。『詩・小雅』雨我公田。『通典』古有井田、畫九區如井字形、八家耕之、中爲公田、乃公家所藉。圭田者、祿外之田、以供祭祀。加田者旣賞之、又重賜之田也。
又爰田、卽轅田。『左傳・僖十五年』晉於是乎作爰田。《註》分公田之稅、應入公者、爰之於所賞之衆。『晉語』作轅田。『前漢・食貨志』歲耕種者爲不易上田、休一歲者爲一易中田、休二歲者爲再易下田、三歲更耕之、自爰其處。農民戸人已受田、其家衆男爲餘夫、以口受田如比。《註》師古曰、爰、更互也、比例也。
又名田。『前漢・董仲舒傳』古井田法、雖難卒行、宜少近古。限民名田、以贍不足。『通典』名田、占田也。各爲立限、不使富者過制、則貧弱之。家可足也。
又代田。『通典』漢武征和三年、以趙過爲搜粟都尉。過能爲代田、一畮三甽、歲代其處、每耨必附根、根深能水旱。一歲之收常過縵田、一斛以上、用力少而得穀多。
又屯田。『正字通』漢晉率兵屯、領以帥、唐率民屯、領以官。宋率營田、以民。漢趙充國於金城、留步士萬人屯田、擊先零、條上屯田十二事、宣帝從之。明初兼行官屯、民屯、兵屯、商屯、腹屯、邊屯諸法。永樂時著令、每一都司另撥旗軍十一、名耕種、號樣田。據所收子粒多寡、以辨別歲之豐凶、軍之勤惰。雖養軍百萬、不費民閒一粒。兵法所謂屯田一石、可當轉輸二十石也。
又營田。『通典』宇文融括隱田曰、浮戸十共作一坊、官立廬舍、謂之營田戸。言爲官營田、非屯田戸也。
又職田、職分田也。『文獻通考』隋開皇中、始給職田、又給公廨田。唐貞觀、以職田給逃還貧戸、每畞給粟二斗、謂之地子。十八年復給職田。永泰元年、百官請納職田、充軍糧。宋眞宗興復職田。慶曆均公田、復限職田。紹興復職田。金元志官皆有職田。
又方田、卽均田。『通典』宋煕寧五年重修方田法、元豐罷之。郭諮攝肥鄕令、以千步方田法。四出量括、遂得其數、收逋賦八十萬。
又區田。『氾勝之書』湯有七年之旱、伊尹作爲區田法、敎民糞種、負水澆稼。賈思勰曰、區田、以糞氣爲美、不必皆良田。又不耕旁地、庶盡地力。
又籍田、天子親耕之田也。『禮・月令』孟春、天子帥三公九卿、躬耕帝籍。
又弄田。『前漢・昭帝紀』上耕於鉤盾弄田。『師古註』謂宴游之田、天子所戲弄。
又一井爲田。『魯語』季康子欲以田賦。《註》田、一井也。『管子・乗馬篇』五制爲一田、二田爲一夫。
又『書・無逸』文王𤰞服、卽康功田功。《註》康者、安民之功。田者、養民之功。言文王不侈服飾、專安養斯民也。
又獵也、與畋佃通。俗作𤝗。『易・恆卦』田无禽。《疏》田者、田獵也。『詩・鄭風』叔于田。《傳》田、取禽也。
又姓。『五音集韻』出北平、敬仲自𨻰適齊、後攺田氏。『史記・田敬仲完世家註』敬仲奔齊、以𨻰田二字聲相近、遂爲田氏。
又『黃庭經』尺宅寸田可治生。《註》尺宅、面也。寸田、兩眉閒爲上丹田、心爲絳宮田、臍下三寸爲下丹田。
又官名。『詩・豳風』田畯至喜。《傳》田畯、田大夫也。『左傳・昭二十九年』稷、田正也。《疏》稷爲田官之長。『周禮・夏官』田僕上士十有二人。
又星名。蒼龍之宿。『石氏星傳』龍左角曰天田。
又神名。『詩・小雅』以御田祖。《傳》田祖、先嗇也。『周禮・地官・大司徒』設其社稷之壝、而樹之田主。《註》田主、田神、后土田正之所依也。
又鼓名。『詩・周頌』應田縣鼓。《傳》田、大鼓也。『釋文』田如字、鄭作𣌾、音胤。
又車名。『周禮・夏官』田僕掌馭田路。《註》田路、木路也。
又地名。『爾雅・釋地』鄭有圃田。『左傳・隱八年』鄭伯請釋泰山之祀而祀、周公以泰山之祊易許田。《疏》許田、魯國朝宿之邑。又『僖二年』虢公敗戎于桑田。《註》桑田、虢地、在弘農陝縣東北。又『成六年』晉遷于新田。《註》今平陽絳邑縣是也。『後漢・郡國志』京兆藍田出美玉。
又州名。『韻會』廣南化外、唐開蠻洞置。
又草名。『爾雅・釋草』皇守田。《註》似燕麥、子如彫胡米、可食、生廢田中、一名守氣。
又『何晏・景福殿賦』騈田胥附。《註》騈田胥附、羅列相著也。
又『禮・奔喪』殷殷田田、如壞牆然。《疏》言將欲倒也。
又蓮葉貌。『江南曲』江南可採蓮、蓮葉何田田。
又『集韻』地因切、樹穀曰田。
又『正韻』蕩練切、音電。『詩・齊風』無田甫田。《朱註》田、謂耕治之也。『釋文』無田、音佃。
又『字彙補』池鄰切、音𨻰。『晉語』佞之見佞、果喪其田。『釋文』田音、與𨻰同。
又轉音亭。『韓愈・越裳操』孰荒于門、孰治于田、四海旣均、越裳是臣。又『法苑珠林頌』賢人慕高節、志願菩提音。御鶴翔伊水、策馬出王田。又『易林』邪徑賊田、惡政傷民。夫婦呪詛、太山覆顚。顚、音丁。
音訓
- 音
- デン(呉) テン(漢) 〈『廣韻・下平聲・先・田』徒年切〉[tián]{tin4}
- 訓
- た。たつくる。かり。
解字
白川
象形。田の區劃の形に象る。卜文では必ずしも方形ではないが、金文では方形に近い。
金文に見える賜與に「田一田」と「人一人」が對應する例が多く、その區劃は一夫の耕作面積に相當するものであつたのであらう。
『説文解字』に陳ぬるなり
と陳の意味とする。陳、田は古音近く、田齊の田は金文では𬯔につくる。
また田に田獵の意があり、『詩』『書』には田獵にすべて田を用ゐる。畋は後起の字。
藤堂
象形。四角に區切つた耕地を描いたもの。平らに伸びる意を含む。
また、田獵の田は、平地に人を配して平らに押していく狩りのこと。
落合
四角く區切つた耕作地の象形。支那では田と畑の區別はなく、畑は國字。
甲骨文では狩獵地または狩獵をする意味の動詞に轉用もされてゐる。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 耕作地。《合集》9472
令尹作大田。
- 狩獵地。《殷墟花園莊東地甲骨》244
丁卯卜、既雨、子其往于田、諾。御。
- 狩獵をすること。中後期の甲骨文には王が殷都近傍の都市で盛んに田を行つたことが記されてゐる。《合補》11291・末尾驗辭
戊辰卜貞、王田于[㇒㇒幺㇔㇔儿]、往來亡災。獲狐七。
- 職名。狩獵としての田が行はれた殷都近傍の都市領主であらう。多數形は多田。殷金文の圖象記號にも見える。《合集》36528
乙丑王卜貞、今禍巫九咎、余亡尊。過告侯田、冊𠭯方羌方羞方轡方、余其從侯田戴、戔四封方。
- 墾田
- 耕作地を作ること。
また甲骨文では田の形を鬼の顏面などを表すのに用ゐることもある。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は、田を象る。田の間の畦道が縱橫に交錯する形。本義は田地。古代、田獵と農業には密接な關係があり、田獵は農耕の準備作業であつた。古人は火を用ゐて野獸を驅逐し、野草や雜木が蔓延る野原を燒いて空き地にし、空き地を開墾して耕地とした。田獵には更に農田の獸害を除く作用もあつた。『禮記・月令』驅獸、毋害五穀。
耕田の田と田獵の田が完全に同じ字である所以である(裘錫圭)。
甲骨文での用義は以下のとほり。
- 農田を表す。《合集》28628
王其省田
は、王が農田を視察することを表す。 - 田獵、狩獵を表し、後には畋につくる。
- 《合集》24496
王往田
は、王が獸を狩りに行くことを表す。 - 《屯南》226
王其田獸、亡(無)𢦔(災)。
田獸は畋狩のことで、獵をすること。
- 《合集》24496
- 官名や爵稱に用ゐ、後世の甸に當たる。《合集》36511
多田(甸)
。田は本來商王が派して某地に赴かせ農墾に責を負ふ職官で、後に諸侯の性質を具有するやうになつた(裘錫圭)。
金文での用義は以下のとほり。
- 本義に用ゐ田地を表す。衛鼎
余舍女(汝)田五田
の末の田字は單位に用ゐられ、我は汝に田を五面給ふの意。 - 田器とは農具のこと。散氏盤
我既付散氏田器
は、我は既に散氏に農具を給うたの意。 - 讀んで甸となし、諸侯の爵稱。
- 令方彝「「諸侯、侯、田(甸)、男」。
- 大盂鼎
隹(唯)殷邊侯、田(甸)𩁹(與)殷正百辟率肆于酒
は、商朝周邊の侯、甸と百官はみな勝手氣儘に酒に溺れる、の意。
戰國中山國の金文は犬を加へて意符とし𤝗につくり、田獵の田を專門に表す。中山王圓壺茅(苗)蒐𤝗(田)獵
。
- 『穀梁傳・桓公四年』
春曰田、夏曰苗、秋曰蒐、冬曰狩。
- 『書・無逸』
不敢盤于遊田。
孔穎達疏田謂畋獵。
- 『易・恆』
田无禽。
孔穎達疏田者田獵也。
屬性
- 田
- U+7530
- JIS: 1-37-36
- 當用漢字・常用漢字
関聯字
田に從ふ字を漢字私註部別一覽・田部に蒐める。