鬼 - 漢字私註
説文解字
説文解字注
人所歸爲鬼。以曡韵爲訓。『釋言』曰、鬼之爲言歸也。《郭注》引『尸子』古者謂死人爲歸人。『左傳』子產曰、鬼有所歸。乃不爲厲。『禮運』曰、䰟氣歸於天、形魄歸於地。〔註1〕
从儿、甶象鬼頭。自儿而歸於鬼也。从厶。二字今補。厶讀如私。鬼陰气賊害、故从厶。陰當作侌。此說从厶之意也。神陽鬼陰。陽公陰私。居偉切。十五部。
凡鬼之屬皆从鬼。
古文从示。
- 註1
䰟氣歸於天、形魄歸於地。
の句は、『禮記・禮運』には見えず、『同・郊特牲』に見える。
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
- 古文
- 𩲡
- 𢇼
- 𣆠
『唐韻』『集韻』『韻會』𠀤居偉切、音詭。『說文』人所歸爲鬼。从人、象鬼頭。鬼隂气賊害、从厶。『爾雅・釋訓』鬼之爲言歸也。『詩・小雅』爲鬼爲蜮。『禮・禮運』列於鬼神。《註》鬼者精魂所歸。『列子・天瑞篇』精神離形。各歸其眞、故謂之鬼。鬼、歸也。歸其眞宅。
又『易・旣濟』高宗伐鬼方。『詩・大雅』覃及鬼方。《傳》鬼方、遠方也。
又星名。『史記・天官書』輿鬼鬼祠事、中白者爲質。《註》輿鬼、五星、其中白者爲質。
又姓。『前漢・郊祀志』黃帝得寶鼎、冕侯問於鬼臾區。《註》黃帝臣也。
又國名。『山海經』鬼國在負二之尸北。
又烏鬼。『杜甫・遣悶詩』家家養烏鬼。『漫叟詩話』川人家家養猪、每呼猪作烏鬼聲、故謂之烏鬼。『夢溪筆談』夔州圖經稱、峽中人皆養鸕鷀、以繩繫頸使捕魚、得則倒提出之、謂之烏鬼。『元微之江陵詩』病賽烏稱鬼。《自註》南人染病、競賽烏鬼。
又『揚子・方言』虔儇、慧也。自關而東趙魏之閒謂之黠。或謂之鬼。
- 部・劃數
- 鬼部五劃
『玉篇』古文鬼字。註詳部首。
- 部・劃數
- 广部五劃
『字彙補』古文鬼字。『亢倉子』𢇼神閒禍。
- 部・劃數
- 日部六劃
『篇韻』古文鬼字。註詳部首。
異體字
『説文解字』の重文。
音訓・用義
- 音
- クヰ(漢、呉) 〈『廣韻・上聲・尾・鬼』居偉切〉[guǐ]{gwai2}
- 訓
- おに
解字
白川
象形。鬼の形に象る。人鬼をいふ。
『説文解字』に人の歸する所を鬼と爲す。人に從ひ、鬼頭に象る。鬼は陰气賊害す。厶に從ふ。
とあり、厶を陰氣を示すものとするが、古くは鬼頭のものの蹲踞する形に作り、厶は後に加へたもの。
字は畏と形近く、畏忌すべきものを意味した。
藤堂
象形。大きな丸い頭をして足許の定かでない亡靈を描いたもの。
落合
鬼(死者の靈魂)の象形、または人が鬼の仮面を被つた姿。
甲骨文での用義は次のとほり。
- おに。死者の靈魂。畏怖の對象であり、また祭祀も行はれてゐる。《殷墟花園莊東地甲骨》113
乙卜、丁有鬼夢、亡禍。
- 占卜用語。凶を意味する。《合集》7153
王占曰、途諾、茲鬼、[⿰阝企]。在廳。
- 地名。殷に敵對して鬼方とも呼ばれた。但し戰鬪の記述は見られない。《合集》8591
己酉卜賓貞、鬼方昜、亡禍。
- 鬼日
- 厄日の意か。合文で記されることもある。《合集》14293
貞、…往、不[⿱夂耂]、鬼日。
甲骨文の異體字には下部を女に替へたものや、祭祀を象徵する示を加へたものもあり、後者は古文まで使用された。
古文で下部に死者を意味する符號(現用字のうち厶の部分)が附加された。
漢字多功能字庫
鬼字の甲骨文と金文は構形が異なると雖も、いづれも鬼神、鬼怪あるいは鬼魂の鬼を表す。
構形初義の面では、甲骨文の上部は田に似るが田に非ず、下部は卩。徐中舒は、以て人の身で頭の巨大な異物に象り、生きてゐる人とは異なる鬼を表す、とする。あるいは示を加へ、鬼神の意を顯はす。
金文は囟と人あるいは卩に從ふ。疑ふらくは人が死に魂氣が囟門より上に出るの意を表す(參・何琳儀)。身體から離れる魂氣はまさしく鬼魂である。あるいは攴を加へてその畏るべきを顯はし、また口を加へて飾りとするものがある。小盂鼎の鬼字は卩を省き戈を加へる。
用例の面では、甲骨文では神鬼の鬼を表し、また方國名や人名に用ゐる(徐中舒)。
金文での用義は次のとほり。
- 本義に用ゐ、鬼を表す。陳[貝方]簋
龏(恭)夤鬼神、畢龏(恭)愧(畏)忌。
- 殷周の西北の部族名に用ゐる。梁伯戈
鬼方
。 - 用ゐて畏となす。齊侯鎛
余彌心鬼(畏)誋(忌)
。 - 人名に用ゐる。
- 「鬼薪」は刑罰の名で、宗廟のために薪を採ることにその名を得るもので、罰として各種勞役をなす。
『左傳・僖公五年』鬼神非人實親、惟德是依。
屬性
- 鬼
- U+9B3C
- JIS: 1-21-20
- 當用漢字・常用漢字
- 𩲡
- U+29CA1
- 𢇼
- U+221FC
- 𣆠
- U+231A0
- 𩲚
- U+29C9A
關聯字
鬼に從ふ字
『説文解字・鬼部』のほか、以下の字など。
- 蒐
- 畏
鬼聲の字
- 瑰
- 餽
- 槐
- 瘣
- 傀
- 褢
- 䫥
- 嵬
- 騩
- 媿
- 螝
- 塊
- 魁
- 隗