升 - 漢字私註
説文解字
十龠也。从斗、亦象形。識蒸切。
- 十四・斗部
説文解字注
十合也。十合各本作十龠。誤。今正。『〔漢書〕律曆志』曰、合龠爲合、十合爲升、十升爲斗、十斗爲斛、而五量嘉矣。作十龠則不可通。古經傳登多作升。古文叚借也。禮經注曰、布八十縷爲升。升字當爲登。今之禮皆爲升。俗誤已行久矣。按今俗所用又作陞。經有言升不言登者、如『周易』是也。有言登不言升者、『左傳』是也。从斗象形。斛左耳爲升。右耳爲合。以象耳形也。各本作亦象形。非。識蒸切。六部。合龠爲合。龠容千二百黍。十字各本無。今補。不補則五量惟升斗斛見於本書。且失其相絫之數矣。絫下云「增也。一曰十黍之重。」正爲銖字張本。鬲下云「鼎屬。實五觳。」又云「斗二升曰觳。」正爲角部觳下無此義、故補之。《亼部》合下無「一曰十龠爲合」之文。《龠部》下無「一曰龠容千二百黍」之文。此處之當補、正同鬲下。非沾足也。「合龠爲合」見『律曆志』。而『尙書正義』引作十龠。『月令正義』引作合。『通典』引作十。『六典』說唐制作合。是『漢書』古本不同。要以下文云合者合龠之量、躍於龠、合於合、『廣雅』二龠曰合、𣃔之。知十龠之非矣。古者一分一合謂之判合。叚是十龠、則此量不得名合。不得云合於合、合二龠爲合。猶之十二銖㒳之爲兩也。
康煕字典
- 部・劃數
- 十部二劃
『唐韻』識蒸切『集韻』『韻會』書蒸切、𠀤音陞。『說文』籥也。十合爲升。『前漢・律歷志』升者、登合之量也。古升上徑一寸、下徑六分、其深八分。龠十爲合、合十爲升。
又成也。『禮・樂記』男女無辨則亂升。
又『廣韻』布八十縷爲升。『禮・雜記』朝服十五升。
又卦名。『易・升卦』升元亨、用見大人、勿恤、南征吉。
又降之對也。『書・畢命』道有升降。《註》猶言有隆有汙也。
又登也、進也。『詩・小雅』如日之升。『易・坎象』天險不可升也。
又『前漢・梅福傳』民有三年之儲曰升平。
異體字
或體。
音訓
- 音
- ショウ(漢、呉) 〈『廣韻・下平聲・蒸・升』識蒸切〉[shēng]{sing1}
- 訓
- ます。のぼる。のぼす。みのる。
解字
白川
象形。穀量を量る器の形を象る。勺形の器。斗の字形もこれと近く、一斗を入れる。
『呂覽・孟夏』に農乃升麥。
(農(官名)乃ち麥を升む)とあつて、供薦の意に用ゐる。
升降の意に用ゐるのは、陞の意。昇、陞の意に用ゐることがある。
藤堂
枡と手の會意。穀物や液體を枡に入れて持ち上げ、量るさまを示す。持ち上げるの意。昇や陞はその原義を傳へ、升や枡は、ますの意に專用された。
落合
液體を汲むための柄杓の象形。汲んだ液體を表す小點を加へた字形が升に當たり、それがないものが後に斗に分化した。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 體積の單位。具體的な量は不明。《合集》30986
其蒸二升。
- 祭祀名。《天理大學附屬天理參考館 甲骨文字》783
丙辰卜貞、文武丁丁升、其牢。
- 地名またはその長。《甲骨綴合集》494
翌日辛、從升。
漢字多功能字庫
甲骨文は斗と一點に從ふ。斗は水を汲むために用ゐる長柄の勺で、升は斗を用ゐて酒あるいは糧食を盛るさまを象り、それを獻じて神祇を祭り、一切を進めるの意を派生し、また容量の單位に用ゐる。甲骨文、金文の升と斗の形は近く、兩字の差は一點のみ、この小點は盛るところの酒あるいは糧食を表す。點のあるのが升、點のないのが斗。斗は升より大きく、一斗の液體や糧食を升の中に空けると、滿ち溢れて出て來る。升が斗より小さく、滿たしやすいことを反映して、甲骨文の升の小點は滿ち溢れて出て來る液體や糧食を象り、點のあるのが升、點のないのが斗である所以である(孫雍長)。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 容量の單位。
- 祭祀のときに祭品を進獻すること。
- 神を祭る建物に昇ること。
金文での用義は次のとほり。
- 酒鬯を進獻すること。友簋
升于厥文且(祖)考
。 - 容量の單位。魏鼎
三斗一升
。
戰國の各國の度量衡の標準は不劃一で、秦の始皇帝は六國を倂合した後、丞相隗狀、王綰に令して秦の孝公の時代の商鞅變法の制定するところの標準を全國に頒行せしめた。これ即ち秦始皇二十六年詔書にいふところの乃詔丞相狀、綰、法度量、則不壹、歉(嫌)疑者、皆明壹之。
この劃一の過程で、升、斗などの器物にも影響があつた。
屬性
- 升
- U+5347
- JIS: 1-30-3
- 當用漢字・常用漢字
- 𦫵
- U+26AF5
関聯字
升に從ふ字を漢字私註部別一覽・斗部・升枝に蒐める。