幷 - 漢字私註
説文解字
相從也。从从幵聲。一曰从持二爲并。
- 八・从部
説文解字注
相从也。从舊作從。今正。合也。兼也。从从幵聲。府盈切。十一部。一曰从持二干爲𢆙。干舊奪。今依『韵會』本補。上言形聲。此言會意。干、經典用爲竿。如『〔詩・鄘風・干旄〕』孑孑干旄、是也。二人持二竿、是人持一竿。幷合之意。或曰、當出⿱人幵篆。解云、或从人。人持二干爲⿱人幵。人持二干爲⿱人幵者、猶又持二禾爲兼也。俗幷字之所本也。漢隷作幷。
康煕字典
- 部・劃數
- 干部五劃
『唐韻』府盈切『集韻』『韻會』𤰞盈切『正韻』補明切、𠀤餅平聲。『說文』本作。从二人、幵聲。一曰从持二干爲。隷作幷。相从也。『周禮・冬官考工記』輿人爲車。凡居材大與小無幷。《註》幷謂偏邪相就也。
又『廣韻』幷、合也。『謝靈運・初去郡詩』廬園當巖栖、𤰞位代躬耕。顧己雖自許、心跡猶未幷。
又『玉篇』幷、兼也。同也。
又州名。『書・舜典』肇十有二州。《註》舜分冀州爲幽州、幷州。『廣韻』春秋時爲晉國、後屬趙、秦爲太原郡、魏復置幷州。『韻會』唐爲太原府。
又姓。『廣韻』出『姓苑』。『萬姓統譜』幷韶有文藻、吏部以幷姓無先賢、下其選格。
又『廣韻』『集韻』『韻會』𤰞正切『正韻』陂病切、𠀤餅去聲。『廣韻』幷、專也。『禮・檀弓』趙文子曰、陽處父行幷植於國。《註》幷、猶專也。謂剛而專己。『釋文』幷、必正反。
又與倂同。『集韻』倂、或省作幷。『賈誼・過秦論』幷吞八荒。『謝靈運・擬鄴中詩序』天下良辰、美景、賞心、樂事、四者難幷。
又『韻會』與偋通。『莊子・天運篇』至貴國爵幷焉。《註》幷、棄除也。
又叶𤰞陽切、音旁。『張籍・祭韓愈詩』偶有賈秀士、來兹亦同幷。移船入南溪、東西縱篙桹。
廣韻
合也。
亦州名。舜分兾州爲幽州并州。春秋時爲晉國、後屬趙。秦爲太原郡。魏復置并州。
又姓。出『姓苑』。
府盈切。四。
專也。
音訓
- 音
- (1) ヘイ(漢) 〈『廣韻・下平聲・清・并』府盈切〉[bīng]{bing1}
- (2) ヘイ(漢) 〈『廣韻・去聲・勁・摒』𢌿政切〉[bìng]{bing6/bing3}
- 訓
- あはせる。ならぶ。ならべる。
州名(幷州)は音(1)に讀む。
上揭の訓義に用ゐる音については資料により見解が分かれる。
- KO字源、『廣韻』は音(1)に讀むとする。
- 『廣韻』は音(2)の訓を
專也
とするが、意義が摑み難い。
- 『廣韻』は音(2)の訓を
- 『康煕字典』は音(1)に讀むとするも、また倂に同じとする。
- 倂は『廣韻』に上聲二聲、去聲一聲に屬し、現代音は去聲。
- 藤堂は音(2)に讀むとする。
- 現代音は官話、粤語とも去聲。
解字
白川
『説文解字』に相ひ從ふなり。从に從ひ、幵聲。
とするが、聲が合はず、また幵に從ふ形でない。また一に曰く从二を持するに從ふを并と爲す。
といふ。
卜文、金文の字形はその足許を連ねてをり、繫束する意かと思はれる。
藤堂
落合
指示。人を竝べ、更にそれを繫ぐ指示記號を加へた字。倂せることを意味する。
甲骨文での用義は次のとほり。
- あはせる。王の馬車に用ゐる馬を組み合はせる意味で用ゐられてゐる。《合集》36987
叀幷駁。
- 地名。主に田獵地として見える。《合集》10959
叀盤呼、田于幷。
篆文で二人を繫ぐ指示記號を分斷して幵に從ふ字形がつくられた。篆文の形から幵聲とする説もあるが、誤り。
漢字多功能字庫
并
甲骨文は从と一橫劃あるいは二橫劃に從ふ。金文は从と二橫劃に從ふ。从は側面の人の形を二つ前後に相從ふ形を象り、橫劃は二人が相連なる意の符號。戴家祥は二人が相連なり、和合の意とする。
甲骨文では地名、方國名に用ゐる。
金文では兼併、吞併を表し、後に人を加へて倂字となつた。
- 中山王鼎
吳人并(併)雩(越)、雩(越)人修教備恁(任)、五年覆吳。
- 商鞅量
廿六年、皇帝盡并(併)兼天下。
幷
幷と併は同字。合併の義を表す。併字は後起の字で、今、繁體字に併を用ゐ、簡體字に并を用ゐる。また并は並の簡化字に用ゐ、繁體の併、並は古籍でも通用が見える。しかし現代漢語では兩者には區別があり、併は一つに合はせることを意味し、並は二物を竝べることを表す。
屬性
- 幷
- U+5E77
- JIS: 1-94-92
- 并
- U+5E76
- JIS: 1-54-85
関聯字
幷に從ふ字を漢字私註部別一覽・人部・幷枝に蒐める。