疋 - 漢字私註

説文解字

疋

足也。上象腓腸、下从。『〔管子〕弟子職』曰「問疋何止」。古文以爲『詩・大疋』字。亦以爲字。或曰字。一曰、疋、記也。凡疋之屬皆从疋。所菹切。

疋部

説文解字注

疋

足也。上象腓腸。《肉部》曰、腨、腓腸也。下从止。止、下基也。

『弟子職』曰。『弟子職』、『管子』書篇名。『漢・藝文志』以列於孝經十一家。是其單行久矣。「問疋何止」。謂問尊長之臥。足當在何方也。『〔禮記〕內則』曰「將衽、長者奉席、請何止」。止、一作趾、足也。

古文㠯爲『詩・大雅』字。雅各本作疋。誤。此謂古文叚借疋爲雅字。古音同在五部也。

亦㠯爲足字。此則以形相似而叚借。變例也。

或曰胥字。此亦謂同音叚借。如府史胥徒之胥徑作疋可也。

一曰、疋、記也。記下云「疋也」。是爲轉注。後代改疋爲疏耳。疋疏古今字。此與足也別一義。

凡疋之屬皆从疋。所菹切。五部。

康煕字典

部・劃數
部首

『唐韻』所菹切『集韻』『韻會』山於切『正韻』山徂切、𠀤音蔬。『說文』足也。弟子職、問疋何止。

又『集韻』寫與切、音胥。又所據切、音絮。義𠀤同。

又『廣韻』疎舉切『集韻』爽阻切、𠀤音所。記也。

又『廣韻』五下切『集韻』『韻會』『正韻』語下切、𠀤音雅。正也。古文爲【詩・大雅】字。『晉書・南陽王模傳』安定太守賈疋。

又『五音集韻』譬吉切、音匹。『小爾雅』倍兩謂之疋。二丈爲兩、倍兩四丈也。『韻會』按古文大小雅、爾雅、字本作疋、今文皆作雅、而疋字但音匹矣。

又『集韻』、古作疋。註詳部首。

音訓義

ショ(呉) ソ(漢)⦅一⦆
ソ(推)⦅二⦆
ガ(漢) ゲ(呉)⦅三⦆
ショ(推)⦅四⦆
ショ(推)⦅五⦆
ソ(推)⦅六⦆
ショク(推)⦅七⦆
ヒキ(慣) ヒツ(漢) ヒチ(呉)⦅八⦆
あし⦅一⦆⦅四⦆⦅五⦆⦅六⦆⦅七⦆
官話
shū⦅一⦆
⦅三⦆
⦅八⦆
粤語
so1⦅一⦆
ngaa5⦅三⦆
pat1⦅八⦆

⦅一⦆

反切
廣韻・上平聲』所𦵔切
集韻・平聲一魚第九』山於切
『五音集韻・上平聲卷第二・魚第七・審・二疏』所葅切
聲母
審(正齒音・全清)
官話
shū
粤語
so1
日本語音
ショ(呉)
ソ(漢)
あし

⦅二⦆

反切
廣韻・上聲・語・所』踈舉切
集韻・上聲上・語第八・所』爽阻切
『五音集韻・上聲卷第七・語第六・審・二所』踈舉切
聲母
審(正齒音・全清)
日本語音
ソ(推)
記也。
足也。(『集韻』)

⦅三⦆

反切
廣韻・上聲・馬・雅』五下切
集韻・上聲下・馬第三十五・雅』語下切
『五音集韻・上聲卷第八・馬第十七・疑・二雅』五下切
聲母
疑(牙音・次濁)
官話
粤語
ngaa5
日本語音
ガ(漢)
ゲ(呉)
正しい。雅と通用し、古字とされる。

⦅四⦆

反切
集韻・平聲一魚第九』新於切
『五音集韻・上平聲卷第二・魚第七・心・四胥』相居切
聲母
心(齒頭音・全清)
日本語音
ショ(推)
あし

⦅五⦆

反切
集韻・上聲上・語第八・胥』寫與切
『五音集韻・上聲卷第七・語第六・心・四諝』私吕切
聲母
心(齒頭音・全清)
日本語音
ショ(推)
あし

⦅六⦆

反切
集韻・去聲上・御第九・疏』所據切
『五音集韻・去聲卷第十・御第七・審二䟽』所去切
聲母
審(正齒音・全清)
日本語音
ソ(推)
あし

⦅七⦆

反切
集韻・入聲上・燭第三・足』縱玉切
聲母
精(齒頭音・全清)
日本語音
ショク(推)
あし
を古くは疋に作る。(『集韻』)

⦅八⦆

反切
『五音集韻・入聲卷第十四・質第一・滂・四匹』譬吉切
聲母
滂(唇音・次清)
官話
粤語
pat1
日本語音
ヒキ(慣)
ヒツ(漢)
ヒチ(呉)
匹に同じ。
  • 布を數へる單位。
  • 馬など家畜を數へる助數詞。
  • 本邦では小動物を數へる助數詞。
本邦では錢を數へるときの助數詞。

解字

白川

足の下半部、膝から下の象形字。

『説文解字』に足なり。上は腓腸(こぶら)に象り、下はあし(趾)に從ふ。とあり、と殆ど同形。

金文の《免𣪘》になんぢに命じて周師(人名)をたすけ、林を𤔲をさめしむ(一部下揭)とあり、足を佐疋の意に用ゐる。《善鼎》に「佐疋」といふ語があり、佐胥することをいふ。

『説文解字』に一に曰く、疋記なりとあるのは、疏記、註釋を加へる意。

また『説文解字』に古文以て『詩』の『大疋(雅)』の字と爲すと雅の字に用ゐるといひ、清朝の小學家に大雅小雅を大疋小疋と記すものが多いが、その通用の義を説くものはない。思ふに雅、夏はもと通用の字。夏は舞容を示す字で、また頙と記し、その省文の疋が、雅と通用する。

藤堂

象形。あしの形を描いたもので、字と逆になつた形で、左右相對したあしのこと。

また、左右一對で組を成すので、匹に當ててヒツといふ音を表し、本邦ではヒキと誤讀した。

また、正と混同して、正雅の雅を表す略字として轉用された。

落合

と同源の字。

漢字多功能字庫

甲骨文、金文は、大腿から足裏までの足を象り、本義は足。甲骨文、金文のと疋は同字。戰國文字で分化し始め、足字の上部は形に書かれ、疋字の上部は圓形や「マ」形に書かれるやうになつた(季旭昇)。

甲骨文では本義に用ゐる。《合集》775反疾疋は、足に疾のあることを表す。

傳世文獻でも本義に用ゐる。

甲骨文ではまた人名に用ゐる。

金文では讀んでとなし、輔助を表す。免簋令女(汝)疋(胥)周師(訓讀文上揭)は、汝に命じて周朝の軍隊を輔助せしむ、の意。『爾雅・釋詁』胥、相也。『方言』胥、輔也。

また疏の通假字とする。《郭店楚簡・老子甲》簡28古(故)不可得而新(親)、亦不可得而疋(疏)。《馬王堆帛書・老子》甲乙本や王弼本『老子』は、疋を疏につくる。

また雎の通假字とする。《上博竹書一・孔子詩論》簡10關疋(雎)以色俞(喻)於豊(禮)。「關疋」は『詩』の篇名の『關雎』のこと。

また人名に用ゐる。《郭店楚簡・窮達以時》簡9子疋(胥)は、呉の名臣、伍子胥のこと。

屬性

U+758B
JIS: 1-41-5
人名用漢字

関聯字

疋に從ふ字を漢字私註部別一覽・止部・疋枝に蒐める。