句 - 漢字私註
説文解字
- 句あるいは𠯶につくる。
曲也。从口丩聲。凡句之屬皆从句。
- 三・句部
康煕字典
- 部・劃數
- 口部二劃
『唐韻』九遇切『集韻』『韻會』俱遇切、𠀤音屨。『玉篇』止也、言語章句也。『類篇』詞絕也。『詩・關雎疏』句古謂之言。秦漢以來、衆儒各爲訓詁、乃有句稱。句必聯字、而言句者、局也。聮字分疆、所以局言者也。
又僂句、地名、龜所出也。『左傳・昭二十五年』初、臧昭伯如晉、臧會竊其寶龜僂句。
又『禮・樂記』句中鉤。《疏》謂大屈也。言音聲大屈曲、感動人心、如中當於鉤也。又『周禮・冬官考工記・廬人』句兵欲無彈。《註》句兵、戈戟屬。『釋文』句、俱具反。又音鉤。
又『史記・叔孫通傳』臚句。《註》上傳語告下爲臚、下告上爲句。
又高句驪、遼東國名、漢爲縣。『前漢・地理志』元菟郡高句驪。又句容、縣名。『地理志』丹陽郡句容縣。
又『廣韻』古𠋫切『集韻』『韻會』『正韻』居𠋫切、𠀤音遘。『廣韻』句當。『宋史・曹彬傳』江南句當公事回。
又姓。『華陽國志』王平、句扶、張翼、廖化𠀤爲將。時人曰、前有王句、後有張廖。
又『類篇』拘也。
又與彀同。『詩・大雅』敦弓旣句。『釋文』句、說文作彀。張弓曰彀。
又『唐韻』『集韻』古侯切『韻會』『正韻』居侯切、𠀤音溝。俗作勾。『說文』曲也。『禮・月令』句者畢出。『左傳・哀十七年』越子爲左右句卒。《註》鉤伍相著、別爲左右屯。『前漢・趙充國傳』入鮮水北句廉上。《註》句廉、渭水岸曲而有廉稜也。
又『集韻』亦作區。『禮・樂記』區萌達。《註》屈生曰區。『釋文』區音勾、古侯反。
又句芒、春神。『禮・月令』其神句芒。
又句龍、社神。『左傳・昭二十九年』共工氏有子、曰句龍、爲后土。
又句繹、邾地。『春秋・哀二年』盟于句繹。又句瀆、齊地。『左傳・襄十九年』執公子牙于句瀆之丘。『前漢・地理志』濟隂郡、句陽縣。《註》左傳句瀆之丘也。
又寃句、句章、𠀤縣名。『前漢・地理志』會稽郡句章縣、濟隂郡寃句縣。《註》師古曰、句音鉤。又句吳。『史記・吳世家』自號句吳。《註》吳言句者、發聲也。猶言于越耳。
又『五音集韻』亦姓。『史記・仲尼弟子傳』句井疆。《註》正義曰、句作釣。
又『廣韻』其俱切『集韻』權俱切、𠀤音衢。須句、地名。『春秋・文七年』公伐邾、取須句。『音義』句、其俱反。
又句町、縣名。『前漢・地理志』牂牁郡句町縣。《註》師古曰、音劬挺。
又『字彙補』與絇同。履頭飾也。『周禮・天官・屨人』靑句。《註》句當爲絇。『前漢・王莽傳』句履。《註》師古曰、其形岐頭。
又『集韻』恭于切、音俱。本作拘。或作佝、𢳉止也。
又『史記・孝文紀』故楚相蘇意爲將軍、軍句注。《註》應劭曰、山險名也。索隱曰、句音俱。包愷音鉤。
又與矩同、方也。『莊子・田子方』履句履者知地形。『陸德明・音義』句音矩。徐云、其俱反。李云、方也。
又古有切、音九。『淮南子・地形訓』自東北至西北方、有岐踵民、句癭民。《註》句、讀若九。
『說文』本作𠯶。
異體字
或體。
音訓
- 音
- (1) ク(漢、呉) 〈『廣韻・去聲・遇・屨』九遇切〉[jù]{geoi3}
- (2) コウ(漢) ク(呉) 〈『廣韻・下平聲・侯・鉤』古侯切〉[gōu]{ngau1/gau1}
- (3) コウ(漢) ク(呉) 〈『廣韻・去聲・𠋫・遘』古候切〉[gòu]
- 訓
- (1) くぎる。くぎり。
- (2) まがる
- (3) あたる(句當)。かかはる。
解字
白川
勹と口の會意。勹は人の句曲してゐる形で、屈屍の象。口は祝詞を收める器。局と同じく、屈肢葬を示す字。
『説文解字』に丩聲とするが、丩に從ふ字ではない。
屈肢句曲の形より、句兵、句爪の意となり、句讀、章句に句曲の點を用ゐるので、またその意となる。
藤堂
└型と┐型と口の會意。鉤型で小さく圍つた言葉のことで、一區切りの文句を示す。
勾はもと句の崩れた字體だが、本邦では使ひ分ける。
落合
亡失字
甲骨文に勹と口に從ふ會意字(補註: 嚴密には[⿱口勹]に作る)があるが、亡失字。上位の人物に對して平伏して發言することを表し、甲骨文では、報告する、申し上げる意に用ゐる。《合集》21936癸丑、句伯率。
現用字
上述亡失字とは別に、金文で口を意符、丩を聲符とする形聲字がつくられ、現用の句字はこれを承ける。
[⿰爿句]
【補註】落合は別に亡失字の[⿰爿句]を擧げる。その旁は[⿱口勹]ではなく、口と丩に從ふ形。句字そのものではないが、句字の由來について考へるときに參考になり得るので、ここに記す。
甲骨文では缺損片にしか見えず、字形が意味するところは不明。句を聲符とする形聲字かも知れない。《合集》9378…[⿰爿句]…。
但し、句は(殷墟出土)甲骨文には類似形(補註: 上述亡失字)しか見えない。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は、口と丩に從ふ。丩も口も聲符の雙聲字。丩は二本の曲線が繫がるさまに象り、互ひに纏はることを表す。句は丩から分化した字で、口は分化を表す符號。故に句は丩字の纏はるの義を承ける。句は、後に鉤と解くものの外、句子(補註: 文)の句の意を派生する。
句字の甲骨文辭殘は用義不明。
【補註】漢字多功能字庫の擧げる甲骨文は、落合の擧げる亡失字([⿱口勹])とは別で、[⿰爿句]の旁と同形。白川『字通』は漢字多功能字庫の擧げる甲骨文と同形の字を擧げる。
金文での用義は次のとほり。
- 器名に用ゐ、彎曲の形狀を指し、器物を懸ける鉤狀の用具に用ゐ、後に鉤につくる。內公鐘鉤
內公乍(作)鑄從鐘之句(鉤)。
內は芮と讀み、姓氏。芮公が隨行に用ゐる鐘の鉤を鑄造したことをいふ。 - 通じて耇となし、年老いて腰の曲がることを表す。師器父鼎
用祈釁(沬)壽黃句(耇)吉康。
は、長壽、幸福、安寧を祈る意。
句子あるいは章句の意義が通用されるやうになつた後、鉤曲の句は次第に勾と書かれるやうになつた。
そのほかの用義。
- 后の通假字とするやうに、多種の通假字としての用途がある。鑄客簠
鑄客為王句(后)六室為之。
は、この青銅器は鑄造の職人が王后のためにつくつた、の意。 - 地名に用ゐる。三年𤼈壺
王才(在)句陵。
戰國竹簡での用義は次のとほり
- 苟の通假字とし、苟且(かりそめ; 其の場限り、さして重要でない、輕々しい、の意)、隨便(無頓着)の意を表す。
- 后の通假字とする。《清華簡一・尹至》簡1
湯曰、「各(格)! 女(汝)丌(其)又(有)吉志。」尹曰「句(后)! 我逨(越)今昀(旬日)。」
伊尹が湯を后と呼んでをり、君主を表す。
屬性
- 句
- U+53E5
- JIS: 1-22-71
- 當用漢字・常用漢字
- 𠯶
- U+20BF6
関聯字
句に從ふ字
- 拘
- 笱
- 鉤
- 雊
句聲の字
- 玽
- 苟
- 跔
- 跔
- 訽
- 敂
- 𦐛
- 鴝
- 朐
- 𠛎
- 枸
- 䅓
- 邭
- 昫
- 痀
- 佝
- 耇
- 欨
- 駒
- 狗
- 鼩
- 竘
- 姁
- 絇
- 蚼
- 䵶
- 劬
- 斪
- 軥
- 䣱