后 - 漢字私註
説文解字
繼體君也。象人之形。施令以告四方、故厂之。从一、口。發號者、君后也。凡后之屬皆从后。
- 九・后部
説文解字注
繼體君也。象人之形。从口。『易』曰、施令以告四方。凡后之屬皆从后。
康煕字典
- 部・劃數
- 口部三劃
『唐韻』『集韻』『正韻』胡口切『韻會』很口切、𠀤音後。『說文』繼體君也、象人之形。施令以告四方、故𠂆之从一、口。發號者、君后也。『書・仲虺之誥』徯我后。『易・泰卦』后以財成天地之道。『禮・檀弓』夏后氏堲周。《疏》夏言后者、白虎通云以揖讓受于君、故稱后。又『禮・曲禮』天子有后。《疏》后、後也。言其後于天子、亦以廣後胤也。『白虎通』商以前皆曰妃、周始立后。正嫡曰王后、秦漢曰皇后、漢祖母稱太皇太后、母稱皇太后。
又諸侯亦稱后。『書・舜典』班瑞于羣后。
又古者君稱臣亦曰后。『書・舜典』汝后稷、播時百穀。《疏》國語云、稷爲天官、單名爲稷、尊而君之、稱爲后稷。又『畢命』三后協心。《註》謂周公君𨻰畢公也。
又『書・武成』告于皇天后土。《傳》后土、社也。『左傳・昭二十九年』土正曰后土。《註》土爲羣物主、故稱后也。其祀句龍焉、在家則祀中霤、在野則爲社。『正韻』后土、亦取厚載之義。
又姓。『史記・仲尼弟子傳』后處字子里。『前漢・儒林傳』后倉字近君。
又與後通。『禮・曲禮』再拜稽首、而后對。
又『廣韻』胡遘切『集韻』下遘切『韻會』『正韻』胡茂切、𠀤音𠋫。義同。
又叶後五切、音戸。『蔡邕・胡黃二公頌』允兹漢室、誕育二后。曰胡曰黃、方軌齊武。『陸雲・漢高盛德頌』咸陽克殄、旣係秦后。峩峩阿房、乃淸帝宇。○按詩本音云、『周頌』宣哲維人、文武維后、燕及皇天、克昌厥後。后後俱音戸、後人誤入四十五厚韻、故於『唐韻』正中歷引經集証之。然自『玉篇』以後、后在厚韻相沿已久、不得不以後五切爲叶音矣。
音訓
- 音
- コウ(漢) 〈『廣韻・上聲・厚・厚』胡口切〉〈『廣韻・去聲・𠋫・𠋫』胡遘切〉
- ゴ(慣)
- 訓
- きみ。きさき(后妃)。のち。
解字
白川
人と口の會意。口は祝詞を收める器。字の立意は君と似たところがある。
『説文解字』に繼體の君なり
とし、人の形に象る。令を施して以て四方に吿ぐ。故に之れを厂󠄀る。一に從ふ。口もて號を發する者は君后なり。
と説くが、字は一と厂󠄀とに分つべきものではない。
神話的な古帝王に、夏后、后羿のやうに后と呼ぶものが多い。
卜文の后の字は毓の形に作り、母后の分娩の形に作る。卜文に后祖乙、后祖丁を毓祖乙、毓祖丁に作る。后は後の意。早くからその訓があつたのであらう。
藤堂
會意。上部は人字の變形、下部は口(あな)。人體の後ろにある尻の穴(后穴)を示す。後と同系で、後ろの意を示す。
轉じて、後宮に住むきさき。
また厚(重く大きい意を含む)に當て、重々しい大王を指すのに用ゐる。
落合
會意。甲骨文は女が子を産む樣子を表してゐる。子供は頭から生まれてくることが多いので、子の上下逆向きの𠫓に從ふ字形が多い。異體字には女ではなく人に從ふものがあり、また羊水を表す小點を加へたものもある。また遠の初文の袁を加へた異體もあり、衣を含むことから、恐らく新生兒を衣服でくるむ樣であらう。
后には後の意味があるが、甲骨文の字形を見ると、當時は子供が後ろ側に生まれる樣な姿勢で出産してゐたやうなので、ここからの引伸義であらう。單に字音によつて假借しただけとする説もある。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 動詞。出産することであらう。《合集》14125
貞、子母其后、不死。
- 多數の先王を指す。相對的に新しい(世代が近い)先王に用ゐられ、引伸義で後の意。多后とも言ふ。《合補》10422
甲寅貞、自祖乙至后。
- 先王や先妣の呼稱に附される字。區別のために近い世代に用ゐられる。后祖丁は祖丁の別稱。后祖乙は小乙の別稱。《天理大學附屬天理參考館 甲骨文字》326
貞、叀后祖乙歲、先。
後代には后妃の意に用ゐられたが、殷代に后妃を意味した司の左右反轉形に近いため誤用されたと言はれる。
育は后と同源の字で、𠫓に女に代へて肉を加へた形。肉は聲符とも子供の肉體を表すとも言はれる。兩字は古文で分化し、后については女、子ともに簡略化されてゐる。また毓は育の異體で、女を頭部に飾りを附けた女性の形の每に替へ、𠫓を繁體(羊水を加へた形、㐬に作る)に替へる。
漢字多功能字庫
后字の金文は春秋晩期に初めて見える。本義は君主。
字形は右向きが后、左向きが司。この分別は金文でやうやく出現した。甲骨文では左向き右向きに別無く、ゆゑに唐蘭は后と司は古くもと同じ形とし、李孝定もまた后と司は一字とする。この外、甲骨文では后字はまた毓を以て表す(王國維)。
金文では君主を表す。吳王光鑑往矣弔(叔)姬、虔敬乃后、孫孫勿忘。
后は吳王光の女の叔姬の嫁いだ蔡の昭侯を指す。『書・舜典』肆覲東后
孔安國《傳》遂見東方之國君
。
屬性
- 后
- U+540E
- JIS: 1-25-1
- 當用漢字・常用漢字
關聯字
后聲の字
- 茩
- 逅
- 詬
- 缿
- 垕
- 郈
- 㖃
- 姤
- 垢
其の他
- 後
- 后を後の簡体字として用ゐる。