甫 - 漢字私註

説文解字

甫
男子美稱也。从、父、父亦聲。
用部

康煕字典

部・劃數
用部二劃

『唐韻』方矩切『集韻』『韻會』匪父切『正韻』斐古切、𠀤音斧。『說文』男子美稱也。『禮・檀弓』臨諸侯畛於鬼神曰、有天王某甫。《疏》某是天子之字、甫是男子美稱也。『儀禮・士冠禮』永受保之、曰伯某甫仲叔季、唯其所當。《註》甫是丈夫之美稱。孔子爲尼甫、周大夫有嘉甫、宋大夫有孔甫。『雜記疏』甫、且也。五十以伯仲、是正字。二十之時曰某甫、是且字。言且爲之立字也。

又『爾雅・釋詁』甫、大也。『詩・小雅』倬彼甫田。傳甫田謂天下田。《箋》甫之言丈夫也。明乎彼太古之時、以丈夫稅田也。

又『玉篇』始也。

又『廣韻』衆也。『博雅』甫甫、衆也。『詩・大雅』魴鱮甫甫。

又『爾雅・釋詁』甫、我也。

又國名。『詩・大雅』維申及甫、維周之翰。《箋》甫甫、侯也。

又地名。『詩・小雅』東有甫草、駕言行狩。《箋》甫草者、甫田之草也。鄭有圃田、今開封府中牟縣西圃田澤是也。『春秋・定十年』冬、齊侯衞侯鄭游速、會于安甫。『穀梁傳・昭二十三年』吳敗頓胡沈蔡𨻰許之師于雞甫。《註》雞甫、楚地。

又山名。『詩・魯頌』徂來之松、新甫之栢。《傳》新甫、山也。

又章甫、冠名。『禮・郊特牲』章甫、殷道也。

又姓。『風俗通』甫侯之後、周甫瑕、明甫轍、甫輊。又皇甫、複姓。宋戴公之子曰皇父、因命族曰皇父。至秦攺爲皇甫。

又『集韻』彼五切、音補。種菜曰圃、或省作甫。

音訓

ホ(慣)
フ(漢、呉) 〈『廣韻・上聲・麌・甫』方矩切〉
はじめ。おほきい。おほい。

解字

白川

象形。苗木の根を立てて圍ふ形に象る。上部を父の形に記すことがあるのは、父の聲に近附けたもので、本來の字形は、專が苗木の根を包み込む形であつたのと同じ。

説文解字に男子の美稱なり。用と父とに從ふ。とするが、金文では「伯懋父」「師擁父」のやうにすべて父を用ゐ、『詩』に見える吉甫、中山甫のやうな用ゐ方は假借。

甫は苗木の形で、植樹のはじめ、その植ゑるところを圃といひ、輔、補にはみな輔助の意がある。

藤堂

(芽生え)との會意で、苗を育てる畑、つまり苗代のこと。平らに擴がる意を含む。

また、父(年長の男)や(男の長老)に當てて、男性の相手を尊敬して呼ぶ場合につける。

落合

圃の甲骨文はに從ひ、耕作地に植物が植ゑられてゐるさまを表現してゐる。(甫に當たる。) 殷代には田が狩獵地の意にも轉用されたため、屮を加へて耕作地に限定した字。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. 耕作地。圃土ともいふ。《甲骨拼合集》68丙子卜賓貞、求年于圃。
  2. 動詞。農耕の意であらう。圃耤ともいふ。《合集》13505圃耤于𡜍受年。
  3. 地名またはその長。《合補》3987・後半驗辭壬申卜㱿貞、圃禽麋。丙子、陷、允禽二百又九。
圃魚
地名。圃魯ともいふ。圃や魚と同一地かどうかは不明。《合集》7894・後半驗辭貞、其雨。十月、在圃魚。

字形は金文で下部の田がに變へられ、古文で上部の屮が聲符の父に變へられた。更に隸書で上部が變形し、最終的に甫の形になつた。

周代には甫が聲符として多用されたため、原義については圍ひを表すを加へた繁文が金文で作られてゐる。

漢字多功能字庫

に從ひ、野菜あるいは幼苗が田中で生長する意と解く。本義は苗圃。羅振玉は田間に野菜のあるさまに象り、圃の初文とする。金文の早期の字形は甲骨文の古樸な元々の形を保留する。後期の字はと父亦聲に從ひ、遂に會意字から形聲字へと改まつた。

甫は人名、族名、地名に借用される。田圃の義は義符のを加へた圃字で表す。

屬性

U+752B
JIS: 1-42-69
人名用漢字

關聯字

甫に從ふ字

甫聲の字