辡 - 漢字私註
説文解字
辠人相與訟也。从二辛。凡辡之屬皆从辡。方免切。
- 十四・辡部
説文解字注
辠人相與訟也。从二辛。會意。方免切。十二部。凡辡之屬皆从辡。
康煕字典
- 部・劃數
- 辛部・七劃
『廣韻』苻蹇切『集韻』平免切、𠀤辯上聲。〔音1〕『說文』罪人相訟也。
又『集韻』邦免切、鞭上聲。〔音2〕義同。
音訓義
- 音
- ベン(呉) ヘン(漢)⦅一⦆
- ヘン(推)⦅二⦆
- 官話
- biàn⦅一⦆
- 粤語
- bin6⦅一⦆
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・上聲・獮・辯』符蹇切
- 『集韻・上聲下・𤣗第二十八・辨』平免切
- 『五音集韻・上聲卷第八・獮第十一・並三辯』符蹇切
- 聲母
- 並(重唇音・全濁)
- 等呼
- 重紐三
- 推定中古音
- bɪɛn
- 官話
- biàn
- 粤語
- bin6
- 日本語音
- ベン(呉)
- ヘン(漢)
- 義
- 言ひ爭ふ。互ひに訴へる。
- 辯に通ず。
- 釋
- 『廣韻』
辡: 罪人相訟。又方免切。
- 『集韻』
辡: 罪人相訟也。
- 『康煕字典』上揭。
⦅二⦆
- 反切
- 『廣韻・上聲・獮・辡』方免切
- 『集韻・上聲下・𤣗第二十八・辡』邦免切
- 『五音集韻・上聲卷第八・獮第十一・幫三辡』方免切
- 聲母
- 幫(重唇音・全清)
- 等呼
- 重紐三
- 日本語音
- ヘン(推)
- 義
- ⦅一⦆に同じ。
- 釋
- 『廣韻』
辡: 罪人相訟。方免切。又符蹇切。四。
- 『集韻』
辡辯: 邦免切。『說文』辠人相與訟也。或从言〔辯〕。文九。
- 『康煕字典』上揭。
解字
作例の出現時期からしても、字義からしても、辡が先にあつて辨がその聲に從ふとする説明は怪しむべきかと按ずる。
白川
會意。二辛に從ふ。辛は入墨用の針の形。誓約のとき、違背することがあれば墨刑を加へるといふ自己詛盟をした。二辛を竝べるのは、その當事者の誓約を示す。その辛を、誓約を收める器の上に置く形は言、言とは誓言の意。それで相訟することを辯といひ、二人爭ふことを誩といふ。
『說文』に辠人、相ひ與に訟ふるなり。
とし、二辛を罪人二人と解するが、二辛は立誓、罪の有無はその結果として定まる。
『新撰字鏡』に辡は治なり、具なり、語楗對するなり、相ひ訟ふるなり、別る、急なり、褊なり、慧なり、判別なり。
と、多くの訓を列ねてゐる。
藤堂
二辛(刃物)の會意。二つに切り分けるさまを示す。けぢめをつける意を含み、辯や辨の構成要素になる。
落合
字義は「互ひに訴へる」であり、辯は亦聲の可能性があるが、辨や瓣は直接的な意味表示には該當しない。
季旭昇
【補注】字形表に揭げる作例は秦漢の辯字。
釋義
『說文』は辠人相與訟也
と釋し、疑ふらくは本義は辯治、引伸して治獄となり、即ち辯の本字。
釋形
辡字の獨體は未見、辯字が之に從ふ。案ずるに、二辛に從ふことに、訟の義は顯れず、疑ふらくは二䇂に從ふ。䇂には引伸して治理の義が有り、後世には䇂を譌して辛となり、故に辡に辯治の義が有り、引伸して治獄となる。
屬性
- 辡
- U+8FA1
- JIS X 0212: 65-15