辛 - 漢字私註

説文解字

辛
秋時萬物成而孰。金剛、味辛、辛痛即泣出。从。䇂、辠也。辛承庚、象人股。凡辛之屬皆从辛。
十四辛部

康煕字典

部・劃數
部首

『唐韻』息鄰切『集韻』『韻會』斯人切『正韻』斯鄰切、𠀤音新。『說文』秋時萬物成而熟、金剛味辛、辛痛卽泣出。『徐曰』言萬物初見斷制、故辛痛也。『書・洪範』金曰從革、從革作辛。『白虎通』金味所以辛者、西方煞傷成物、辛所以煞傷之也、猶五味得辛乃委煞也。

又歲、月、日之名。『爾雅・釋天』太歲在辛曰重光、月在辛曰塞。『禮・月令』其日庚辛。《註》辛之言新也。『前漢・律歷志』悉新于辛。『史記・律書』言萬物之辛生也。

又『正韻』葷味也。『風土記』元旦、以蔥、蒜、韭、蓼、蒿芥、雜和而食之、名五辛盤、取迎新之意。

又股象也。『說文』辛承庚、象人股。『徐曰』辛漸揫斂、故象人股、漸焦殺也。

又養筋之味也。『周禮・天官』以辛養筋。《註》辛、金味、金之纏合異物似筋、人之筋亦纏合諸骨、故以辛養之也。

又『正韻』苦辛、取辛酸之意。『李白詩』英豪未豹變、自古多艱辛。『杜甫詩』生離與死別、自古鼻酸辛。

又高辛、古帝號。

又姓。『史記・夏本紀贊』夏啟封支子于莘、因聲近攺爲辛。

又少辛、藥名。『本草』卽細辛也。

又叶宵前切、音先。『焦仲卿詩』奉事循公姥、進退敢自專。晝夜勤作息、伶俜縈苦辛。

『正字通』按『說文』徐註、泣出象股之說、與𨐌義反。壬癸繼辛、天道剝中有復、秋德義中寓仁、非偏屬斷制焦殺。徐曲附『說文』、非。又『爾雅』重光𨐌、『史記』攺昭陽。昭陽癸、『史記』攺尚章。上章庚、『史記』攺商橫。當有譌誤。舊註、重光一曰昭陽、使不知者疑。『爾雅』歲陽在𨐌有二名、亦非。本作𨐌、『字彙』譌省作辛、與辛音愆字形相溷、尤非。

部・劃數
辛部(一劃)

『說文』本字。

音訓

シン(漢、呉) 〈『廣韻・上平聲・眞・新』息鄰切〉
からい。つらい。かのと。

解字

白川

象形。把手のある大きな直針の形に象る。これを入墨の器として用ゐるので、、妾、辠、、商などの字は、もと辛に從ふ形に作る。

説文解字の説は五行配當の説によるもので、字形學的には何の意味もない。

はまた𬔖に作り、辥、辟などの字は、もとその形に從ひ、曲刀の象、刳剔するのに用ゐる。

辛に墨溜りをつけた形は章、入墨によつて文身を施すことを文章、その美しさを彣彰といふ。

藤堂

象形。鋭い刃物を描いたもので、刃物で刺すことを示す。轉じて、刺すやうな痛い感じの意。

落合

針状の刃物の象形。下が刃先。

甲骨文では專ら十干として用ゐられてゐる。

後代にはや丵や冠の形などが辛に同化したため頻用される形になつたが、甲骨文では字の要素としての使用例が少ない。

漢字多功能字庫

辛の甲骨文、金文は、木を切つたり刑を施したりするのに用ゐる鑿の形の刃物に象る(詹鄞鑫)。例へば、亲字の上側は辛で下側はで、刀鑿を用ゐて木を切り薪を得るさまに象り、薪の初文で、辛はまた聲を表す。郭沫若は辛を黥刑を施す道具で、、妾などの字がこれに從ふとする。

辛は偏旁に用ゐる。また筆劃を增やし、丵に作る。例へば鑿字は丵に從ふ。辛(丵)に從ひその義を取る字はみな刀鑿、刑罰などと關係を有す。刑罰を負ふときの心情は悲痛で、故に辛はまた辛苦、辛酸の義を有す。辛味は人をして涙や鼻水を流せしめ、甚だしきに至つては兩方とも流れる。苦痛あるときもまた涙が流れるので、辛味の義を、苦痛、艱辛の辛の字で表す。

甲骨文、金文での用義は次のとほり。

戰國文字での用義は次のとほり。

屬性

U+8F9B
JIS: 1-31-41
當用漢字・常用漢字
𨐌
U+2840C
JIS: 2-89-70

関聯字

辛に從ふ字

辛聲の字