各 - 漢字私註
説文解字
異辭也。从口夂。夂者、有行而止之、不相聽也。
- Web上のテキストに夂を夊に作るものもある。
- 二・口部
説文解字注
異䛐也。䛐者意內而言外。異爲意。各爲言也。从口夂。陟侈切。夂者、有行而止之不相聽意。《夂部》曰、從後至也。象人㒳脛後有致之者。致之止之、義相反而相成也。古洛切。五部。
康煕字典
- 部・劃數
- 口部三劃
『唐韻』古洛切『集韻』剛鶴切『韻會』『正韻』葛鶴切、𠀤音閣。『說文』異辭也。从口从夂。夂者、有行而止之不相聽也。『書・湯誥』各守爾典、以承天休。
又屠各、北方種落名。『後漢・公孫瓚傳』瓚子續爲屠各所殺。
又『字彙補』借作部落之落、見諸葛銅鐺。
又『字彙補』引沈括筆談云、又借作洛。『石鼓文』大車出各。
音訓
- 音
- カク(漢、呉) 〈『廣韻・入聲・鐸・各』古落切〉
- 訓
- おのおの
解字
白川
夂と口の會意。夂は下降する足の形。口は祝詞を收める器の形で祝告。神に祈り、それに應へて神靈の降下して格る形。金文に「𢓜る」「𮞑る」、文獻に「格る」の字を用ゐるが、各がその初文。また金文に「卲各」「卲𩂣」といひ、文獻に「昭格」「昭假」といふ。
『説文解字』に異詞なり
とし、夂とは止むるも相聽かざる意で、各自の義とするが、一人降格するを各、衆神竝び降るを皆といふ。それより各自の意となる。
藤堂
夂(人の足)と口印の會意。步いてゆく人の足が四角い石や障礙につかへた姿を示す。もと、こつんとつかへて止まること。また、個(固い個體)の意味に近く、一つづつこちんこちんとつかへる→それぞれに、の意となつた。
落合
會意。夂と口に從ひ、出とは逆に到來を表す。甲骨文には出と同樣に凵に從ふ字形もある。そのほか進行を象徵する彳を加へた繁文(補註: 𢓜の形)もあり、各を亦聲符とする形聲字となる。
また女を加へた形も同義であり、恐らく歸と同じく夫人の元に歸る意であらう。
甲骨文では、いたる、到來する、到着する意に用ゐる。祭祀に出席する場合にも使はれる。
- 《合集》33348
大水不各。
- 《合補》10381
王入、迺各于[⿰示又]。
後代には「いたる」の意として木の枝が伸びる意の格も使はれてゐるが、その理由は引伸義とも假借とも言はれる。
漢字多功能字庫
甲骨文は凵(あるいは口)と夊(指が下を向いた足に象る)に從ふ。金文は口と夊に從ふ。凵あるいは口は洞穴に象る。古人は穴居した。各字は脚が洞穴に向くさまに象り、人が洞穴に來たり入つたりすることを表す。本義は到來。出と相反する。『方言・一』𢓜、至也。
『方言・二』𢓜、來也。
(裘錫圭)甲骨文、金文はあるいは道路に在るを表す彳に從ふ。外から家の中に到ることを客と稱する。
甲骨文では本義に用ゐ、到來を表す。卜辭にいふ「各雨」は雨水が到來すること、「各雲」は雲が漂ひ來たること。
- 《合集》33348
大水不各
。 - 《合集》24756
今日有各雨
。 - 《合集》21022
各云不其雨
。
金文でも到來を表す。
- 曶壺「「王各于成宮」は、王が成宮に來たることを表す。
- 㝬鐘
用卲各不(丕)顯且(祖)考、先王。
の「卲各」即「招各」で、先公先王靈魂の到來を招き請ふことを表す(郭沫若)。「卲各」は文獻に「昭假」に作り、假は徦の假借字。『説文解字』徦、至也。
『詩・魯頌・泮水』允文允武、昭假烈祖。
- 金文では到來を表す各をまた音の近い客、洛で表す。
各や𢓜の進入の義は古書に多く格、徦で表す。
- 『爾雅・釋詁』
格、至也。
『同・釋言』格、來也。
- 『書・舜典』
帝曰、格汝舜
孔安國傳格、來。
- 『儀禮・士冠禮』
孝友時格、永乃保之。
鄭玄注格、至也。
- 『禮記・月令』
(孟夏)行春令、則蝗蟲為災、暴風來格。
鄭玄注格、至也。
- 『易・家人』
王假有家。
- 『詩・商頌・玄鳥』
四海來假、來假祁祁。
鄭玄箋假、至也。
各は後に多く借用して「各自」「各人」の各のやうに指示代詞に用ゐる。戰國竹簡や漢帛書では各自を表す。
- 《睡虎地秦簡・語書》簡1
古者、民各有鄉俗。
- 《睡虎地秦簡・為吏之道》簡35
人各食其所耆(嗜)
。 - 《馬王堆・老子乙本》第232行
各復歸於其根、曰靜。
屬性
- 各
- U+5404
- JIS: 1-19-38
- 當用漢字・常用漢字
關聯字
各に從ふ字
- 路
- 咎
各聲の字
- 茖
- 詻
- 𩊚
- 䀩
- 雒
- 鵅
- 骼
- 胳
- 㗉
- 𠲱
- 觡
- 笿
- 格
- 賂
- 客
- 頟
- 貉
- 駱
- 䶅
- 烙
- 洛
- 𩂣
- 鮥
- 閣
- 挌
- 絡
- 垎
- 略
- 鉻
- 輅
- 酪