畏 - 漢字私註
説文解字
惡也。从甶、虎省。鬼頭而虎爪、可畏也。
- 段注に
虎上體省而儿不省。儿者、似人足而有爪也。
といふ。 - 九・甶部
- 𤰣あるいは𤰲に作る。
古文省。
康煕字典
- 部・劃數
- 田部四劃
- 古文
- 𤰲
- 𤰣
『唐韻』於胃切『集韻』紆胃切、𠀤音尉。惡也。『廣韻』畏懼。『增韻』忌也。又心服也。怯也。『易・震卦』雖凶无咎、畏鄰戒也。『書・呂𠛬』永畏惟罰。《傳》當長畏懼、惟爲天所罰。
又『集韻』於非切、音威。『書・臯陶謨』天明畏、自我民明威。《傳》天明可畏、亦用民成其威。『釋文』畏如字。徐音威。○按【古文尚書】威畏同、〔康誥〕天威棐忱、今文作畏。【禮・表記】引【書】德威惟威。【註】讀作畏。
又『周禮・冬官考工記・弓人』夫角之中、恆當弓之畏、畏也者必橈。杜子春云、畏當作威。威謂弓淵、角之中央與淵相當。鄭謂畏讀如秦師入隈之隈。『釋文』畏、烏回反。
又『集韻』鄔賄切、音猥。同嵔。嵔壘、山名。或省。
- 部・劃數
- 田部四劃
『玉篇』古文畏字。註詳本畫。
- 部・劃數
- 田部三劃
『集韻』畏古作𤰣。註詳四畫。
音訓
- 音
- ヰ(漢) 〈『廣韻・去聲・未・尉』於胃切〉[wèi]
- 訓
- おそれる(畏怖)。つつしむ。
- (國訓) かしこい。かしこむ。かしこまる。
解字
白川
象形。鬼頭のものの形に象る。
『説文解字』に惡なり
とし、上は甶(鬼)頭、下は虎爪にして畏るべき
ものとするが、下部は人と呪杖の形。
卜文、金文の形は、鬼頭の者が呪杖を持ち、その威靈を示す形。夢などに現れるものを言ひ、卜辭に「畏夢多し」などの語がある。
畏と威は同聲。『詩・小雅・常棣』死喪之威
(死喪の威れ)は「畏れ」、『小雅・巧言』昊天已威
(昊天已だ威る)は金文の「敃天疾畏」と同義。文獻に畏と威の通用の例が甚だ多い。
藤堂
象形。大きな頭をした鬼が手に武器を持つて威すさまを描いたもので、氣味惡い威壓を感じること。
威(抑へ附ける)、隅(押さへ凹んだ所)と同形の言葉。また鬱(押さへられた感じ)は畏の語尾がtに轉じた言葉。
落合
會意。甲骨文は鬼と弋などに從ふ字であり、刑具を持つた鬼の姿とされる。鬼は上古音で畏と同部であり、亦聲符かも知れない。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 刑具を持つた鬼。信仰の對象になつてゐる。
- 《合集》17442
癸未卜王貞、畏夢、余勿禦。
- 《殷墟花園莊東地甲骨》
丙卜子、其畏歲禦使。
- 《合集》17442
- 人名。第一期(武丁代)。《合集》14173
貞、畏其有禍。
現用字のうち田の形は鬼の顏面であり、下部は篆文から隸書で刑具と人の形が變形したもの。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は、鬼と卜に從ひ、鬼は聲符。卜は杖の形に象り、攴の從ふ所。字は鬼が杖を持つさまに象り、畏るべきの象なり(李孝定)。本義は畏懼。
金文はあるいは心を加へ、あるいは攴を加へる。戰國文字は卜を誤つて止形と變へる。
甲骨文では畏懼を表す。乙6貞、畏其有𡆥(憂)
。
金文での用義は次のとほり。
- 畏懼を表す。駒父盨蓋
不敢不茍(敬)畏王命
。『詩・大雅・烝民』不侮矜寡、不畏彊禦。
- 用ゐて威となす。威と畏は韻が同じで聲が近い。
- 大盂鼎
畏天畏(威)
。『詩・周頌・我將』畏天之威
。 - 毛公鼎
敃天疾畏
は『詩・小雅・雨無正』の旻天疾威
のこと。
- 大盂鼎
- 「畏忌」は畏懼顧忌(顧忌は憚る、氣兼ねするの意)を表す。陳[貝方]簋
畢龏(恭)愧(畏)忌
。
屬性
- 畏
- U+754F
- JIS: 1-16-58
- 常用漢字(平成22年追加)
- 𤰲
- U+24C32
- 𤰣
- U+24C23
關聯字
畏聲の字
- 𧤖
- 椳
- 猥
- 煨
- 渨
- 鍡
- 隈