威 - 漢字私註
説文解字
姑也。从女从戌。漢律曰、婦告威姑。
- 註に
徐鍇曰、土盛於戌、土陰之主也、故从戌。
といふ。 - 十二・女部
説文解字注
姑也。引伸爲有威可畏。从女戌聲。按小徐本作戌聲。而復以會意釋之。於非切。十五部。漢律曰、婦告威姑。惠氏定宇曰、『爾雅〔釋親〕』君姑、卽威姑也。古君威合音差近。
康煕字典
- 部・劃數
- 女部六劃
- 古文
- 𤰴
- 𤱫
『唐韻』『集韻』『韻會』𠀤於非切、音蝛。尊嚴也。『易・大有』威如之吉。『書・洪範』惟辟作威。『周禮・天官』𠛬賞以馭其威。『吳語』夫固知君王之蓋威以好勝也。
又『諡法』猛以剛果、彊義執政、𠀤曰威。
又婦稱姑爲威姑。猶子稱父爲嚴君。『說文』威、姑也、引漢律婦告威姑。『正字通』按漢律威姑二字宜連讀、信如說文訓、似告姑姑、豈成文理。
又南威、美人名。
又虎脅兩旁及尾端有骨如乙、名虎威、見『酉陽雜俎』。
又伊威、蟲名。『爾雅・釋蟲』作蛜蝛。『詩・豳風』伊威在室。
又與畏通。『莊子・漁父篇』未嘗見夫子遇人如此其威也。《註》威畏義同。
按ずるに古文二字は畏の系統の字。
- 部・劃數
- 田部四劃
『集韻』威古作𤰴。註詳女部六畫。
- 部・劃數
- 田部六劃
『集韻』威古作𤱫。註詳女部六畫。
音訓
- 音
- ヰ(漢、呉) 〈『廣韻・上平聲・微・威』於非切〉[wēi]{wai1}
- 訓
- おどす(威壓)。おそる。たけし(猛威)。おごそか(威嚴)。
解字
白川
『説文解字』に戌と女との會意とし、姑なり。〜。漢律に曰く、婦は威姑に告ぐ。
と漢律の語を引く。
西周の金文に「威義」の語があり、『詩』『書』には「威儀」に作る。
字形を以て言へば、戉は鉞。女子が廟事を務めるとき、聖器としての鉞で清め、その威儀を正す意。威儀のあることを原義とする。
藤堂
女と戌(戈を持つ)の會意。か弱い女性を武器で威すさまを示す。力で上から押さへる意を含む。
落合
會意。女のやうな形と、鉞の象形の戌に從ふ。原義は女性(手を前で縛られた人かも知れない)を武器で脅すことであり、後に引伸義で威嚴や權威の意になつた。但し甲骨文には地名の用例しか見えない。
甲骨文では地名に用ゐる。《合集》1051貞、登、涉于威。
漢字多功能字庫
金文は戌と女に從ふ。あるいは戌ではなく戊や戈に從ふ。戌、戊、戈はいづれも武器。古代には儀仗器に常用し、君王貴族はしばしばこれを頼つて名聲威信を盛強にした。威字の從ふ戈や戉などの旁は、この種の風氣と關係がある筈である(林清源)。『尚書・洪範』惟辟作福、惟辟作威。
孫星衍疏引鄭玄曰作威、專刑罰也。
金文での用義は次のとほり。
- 通じて畏と讀み、畏懼を表す。邾公華鐘
余畢恭威(畏)忌
。 - 威儀、すなはち儀容舉止の威嚴莊重なること、また所謂「禮容」を表す。
- 叔向父簋
秉威義(儀)
。 - 王子午鼎
惠于政德,淑于威義(儀)。
- 『詩・大雅・抑』
敬慎威儀、維民之則。
- 蔡侯申盤
威義(儀)遊遊
。
- 叔向父簋
また金文では畏を以て威を表す。毛公鼎敃天疾畏
はすなはち『詩・小雅・雨無正』の旻天疾威
。俞樾『兒笘錄』威、怒也。
「旻天疾威」は仁慈なる上天が威を發し震へ怒ることを表す。
戰國竹簡でも儀容舉止を表す。《上博楚竹書一・緇衣》簡16敬尔威義(儀)
。
屬性
- 威
- U+5A01
- JIS: 1-16-50
- 當用漢字・常用漢字
- 𤰴
- U+24C34
- 𤱫
- U+24C6B
關聯字
威聲の字
- 楲
- 蝛