君 - 漢字私註
説文解字
説文解字注
尊也。此羊祥也、門聞也、戶護也、髮拔也之例。
从尹口。尹、治也。口㠯發號。此依『韵會』。又補一口字。尹亦聲。舉云切。十三部。
古文象君坐形。小徐本作。
康煕字典
- 部・劃數
- 口部・四劃
- 古文
- 𠱩
- 𠱭
『唐韻』舉云切『集韻』『韻會』拘云切、𠀤音軍。〔音1〕『說文』尊也。从尹、發號、故从口。『白虎通』君者、羣也、羣下歸心也。『易・師卦』大君有命。『書・大禹謨』皇天眷命、奄有四海、爲天下君。
又凡有地者、皆曰君。『儀禮・子夏傳』君、至尊也。《註》天子、諸侯、及卿大夫有地者皆曰君。『晉語』三世仕家君之。
又夫人亦稱君。『詩・鄘風』我以爲君。《傳》君國小君。《箋》夫人對君稱小君。『論語』邦君之妻、邦人稱之曰君夫人。稱諸異邦曰寡小君、異邦人稱之亦曰君夫人。
又子稱父母曰君。『易・家人』家人有嚴君焉、父母之謂也。
又子孫稱先世皆曰君。『孔安國・尚書序』先君孔子、生于周末。
又兄稱弟曰君。『杜牧・爲弟墓誌』君諱顗。
又妾稱夫曰君。『禮・內則』君已食徹焉。《註》此謂士大夫之妾也。『儀禮・喪服』妾謂君。《註》妾謂夫爲君者、不得體之、加尊之也、雖士亦然。《疏》以妻得體之、得名爲夫、妾雖接見於夫、不得體敵、故加尊之、而名夫爲君。
又婦稱夫亦曰君。『古樂府』十七爲君婦。
又夫稱婦曰細君。『前漢・東方朔傳』歸遺細君、又何仁也。
又上稱下亦曰君。『史記・申屠嘉傳』上曰、君勿言吾私之。
又封號曰君。『史記・商君傳』秦封之於商十五邑、號爲商君。
又婦人封號亦曰君。『史記・外戚世家』尊皇太后母臧兒爲平原君。
又彼此通稱亦曰君。『史記・司馬穰苴傳』百姓之命、皆懸於君。君謂莊賈也。又『張儀傳』舍人曰、臣非知君、知君乃蘇君。
又隱士就聘者曰徵君。『後漢・逸民韓康傳』亭長以韓徵君當至。
又持節出使者曰使君。『後漢・𡨥恂傳』非敢脅使君。
又『諡法』慶賞𠛬威曰君、從之成羣曰君。
又君子、成德之稱。『易・乾卦』君子、終曰乾乾。『論語』不亦君子乎。《註》君子、成德之名。
又姓。『正字通』明有君助。
又叶姑員切、音涓。『劉向・烈女傳』引過推讓、宣王悟焉。夙夜崇道、爲中興君。
- 部・劃數
- 口部・六劃
『集韻』君古作𠱩。註詳四畫。
- 部・劃數
- 口部・六劃
『字彙補』古文君字。註詳四畫。
- 部・劃數
- 口部・六劃
『字彙補』唐武后所製君字。
異體字
則天文字(jawp)。
『集韻』が則天文字として擧げる。
音訓義
- 音
- クン(漢)(呉)⦅一⦆
- 訓
- きみ⦅一⦆
- 官話
- jūn⦅一⦆
- 粤語
- gwan1⦅一⦆
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・上平聲・文・君』舉云切
- 『集韻・平聲二・文第二十・君』拘云切
- 『五音集韻・中平聲卷第三・文第三・喻・見三君』舉云切
- 聲母
- 見(牙音・全清)
- 開合
- 合
- 等呼
- 三
- 推定中古音
- kʏə̆n
- 官話
- jūn
- 粤語
- gwan1
- 日本語音
- クン(漢)(呉)
- 訓
- きみ
- 義
- 帝王。統治者。君主。君王。
- 諸侯。君侯。
- 封號。
- 敬稱。
- 釋
- 『廣韻』
君: 『白虎通』云「君者羣也、羣下之所歸心也。」『荀卿子』曰「君者儀也。民者影也。儀正則影正。君者盤也。民者水也。盤圎則水圎。」又「君者民之源也。源淸則流淸、源濁則流濁。」舉云切。八。
- 『集韻』
君𠱩𠁈: 拘云切。『說文』「尊也。从尹、發號故从口。」一曰、羣下之所歸也。古作𠱩、唐武后作𠁈。文十八。
- 【補註】見出し字第三には廾の小篆を示したが、同じものか類似形の別物か不詳。
- 『康煕字典』上揭。
解字
白川
尹と口の會意。尹は神杖を持つ聖職者。口は祝詞を收める器。巫祝の長をいふ字であつた。
『說文』に尊なり
と訓じ尹に從ひ、號を發す。故に口に從ふ。
とするが、口は祝禱を示す。
周の創業をたすけた召公は金文に「皇天尹大保」と呼ばれ、『書』では「君奭」とあつて、尹、君、保はみな聖職者としての稱號であつた。王公の夫人を古く「君氏」といふのも、かつて女巫が君長であつた名殘であらう。『左傳・襄十四年』夫君、神之主也
(夫れ君は神の主なり)とあり、君はもと神巫の稱であつた。
のち祭政の權を兼ねて君王の意となり、古い氏族時代には、その地域の統治者を里君といつた。
藤堂
口と音符尹の會意兼形聲。尹は、手と丨印の會意字で、上下を調和する働きを表す。もと神と人の間を取り持つてをさめる聖職のこと。君は、尹に口を加へて號令する意を添へたもの。人々に號令して圓滿周到にをさめまとめる人をいふ。
落合
尹の甲骨文の異體字に、口を加へる字形があり、後に君として分化したが、甲骨文の段階では尹と用法に區別がない。
漢字多功能字庫
尹と口に從ひ、尹亦聲。尹は手に杖を持つさまに象り、權を有す者や事を治める者を表す。卜辭では君と尹を互用する。『說文』が尊を以て君を訓ずるのは聲訓に屬す。また、『說文』は口を以て發令の意を表すとするが、甲骨文、周初金文では君と尹を互用し、口はあるいは飾筆。
甲骨文には「多君」の語がある。《合集》24132多君弗言。
一説に「多尹」と讀み、「多臣」「多公」と義は同じで、殷の官職名となす。陳夢家は、「多君」は諸侯國の首領を指すとする。
金文での用義は次のとほり。
- 君は尹と義が同じで、君主が頼りとする官吏を指す。內史龏鼎
朕天君其萬年。
唐蘭は金文習見天君、即大君、而天尹鈴及作冊大鼎並作天尹、即大尹也、春秋時宋尚有大尹、當是其遺制矣。
とする。『左傳・哀公二十六年』六卿三族降聽政、因大尹以達。
杜預注大尹、近官有寵者。六卿因之以自通達於君。
- 國君を指す。中山王方壺
適曹(遭)郾(燕)君子徻不顧大宜(義)
の子徻は燕の國君の子噲のこと。 - 動詞に用ゐ、君臨、主宰を指す。晉姜鼎
余隹司(嗣)朕先姑君其國
は、國君夫人がその先姑を繼承し、國君と同時にその國に君臨することをいふ(陳連慶)。 - 職官名、人名に用ゐ、あるいは封地領主、諸侯の呼稱に用ゐ、あるいは貴族男子の通稱に用ゐ、あるいは父母先輩の敬稱に用ゐる。
戰國文字での用義は次のとほり。
- 君主を指す。《上博竹書一・緇衣》簡2
則君不疑丌(其)臣,臣不或(惑)於君。
- 戰國竹簡に「君子」の語が見える。《上博竹書二・民之父母》簡1
『詩』曰、幾(愷)俤(悌)君子、民之父母。
(補註: 『詩・大雅・泂酌』豈弟君子、民之父母 。
に該當するか。)
徐超
甲骨文の上部は、筆を表す形(象形あるいは單なる縱劃)と又に從ひ、筆を持つ形、尹と隸定することができる。下部の口は裝飾の符號と見ることもできるし、發號施令の故に口に從ふと見ることもできるし、いづれにせよ君は尹から分化したと分かる。
【補註】筆の形と又と口に從ふ字を、落合は畫の甲骨文として擧げる。
卜辭では君と尹は同じく用ゐる。あるいは邦君の義に用ゐる。
銘文では、諸侯、方國の首領、周王の后妃、宗婦、丈夫の稱に用ゐ、あるいは官員の稱とする。晩期に君臣の君として用ゐ始め、後になつて帝王の稱に用ゐる。
提示: 甲骨文の上部は又に從ひ筆を持つ形の字形で、聿と隸定することもできる。聿は古い筆字。聿と尹もまた一字の分化したものと分かる。
楚簡帛の字形は古體を踏襲する。秦簡牘の字形は古隸の典型である。
屬性
- 君
- U+541B
- JIS: 1-23-15
- 當用漢字・常用漢字
- 𠱩
- U+20C69
- 𠱭
- U+20C6D
- 𠱰
- U+20C70
- 𠺞
- U+20E9E
- 𠁈
- U+20048
關聯字
君に從ふ字を漢字私註部別一覽・又部・君枝に蒐める。