聖 - 漢字私註

説文解字

聖
通也。从聲。
十二耳部

説文解字注

聖
通也。〔詩〕邶風〔凱風〕』母氏聖善。《傳》云、聖、叡也。『〔同〕小雅〔小旻〕』或聖或不。《傳》云、人有通聖者。有不能者。『周禮』六德敎萬民。智仁聖義忠和。《注》云、聖通而先識。『〔書〕洪範』曰、睿作聖。凡一事精通、亦得謂之聖。从耳。聖从耳者、謂其耳順。『風俗通』曰、聖者、聲也。言聞聲知情。按聖字古相叚借。呈聲。式正切。十一部。

康煕字典

部・劃數
耳部・七劃
古文
𦕡
𠄵

『唐韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤式正切、聲去聲。『易・乾卦』聖人作而萬物覩。『書・洪範』睿作聖。《傳》於事無不通之謂聖。『禮・禮運・三代之英疏』萬人曰傑、倍傑曰聖。『孟子』大而化之之謂聖。『風俗通』聖者、聲也。聞聲知情、故曰聖也。

又『諡法』稱善賦𥳑曰聖、敬賓厚禮曰聖。

又木名『山海經』開明北有聖木。《註》食之令人智聖也。

又水名。『水經注』聖水、出上谷東、過長鄕縣北、又東過安次縣、而東入于海。

又姓。

又『韻補』叶裳聲切、音成。『常璩・華陽國志贊』仲元抑抑、邦家儀型。子雲玄達、煥乎弘聖。

部・劃數
耳部・六劃

『集韻』、古作𦕡。註詳七畫。

部・劃數
二部・八劃

『字彙補』古文字。『漢桂陽太守周府君𥓓』懿賢后兮發𠄵莢。餘詳耳部七畫。

音訓

セイ(漢) シャウ(呉) 〈『廣韻・去聲・勁・聖』式正切〉[shèng]{sing3}
ひじり

解字

白川

𡈼の會意。

『説文解字』に通なりと通達の意とし、字を聲に從ふものとするが、字形と合はず、聲もまた異なる。

卜文に、𡈼(人の挺立する形)の上に耳を添へた形に作り、の初文。神の聲を聞き得る人をいふ。口は祝禱を收める器の形で、その神の聲を聞き得る人のことを聖といふ。『左傳・襄十八年』に、當時神瞽といはれた師曠が、晉と楚とが戰ふに當たつて、その勝敗を卜し、風聲を聞いて南風不競、多死聲(南風競はず、死聲多し)と、楚の敗北を豫言した話がある。そのやうなものが聖者であつた。

周初の金文《班𣪘》に「文王王姒の聖孫」といふ語が見え、また金文に「聖なる祖考」や「聖武」「哲聖」など、先人に聖を附していふことが多い。

詩・小雅・正月』に具曰予聖、誰知烏之雌雄。(われをば聖なりと曰ふも、誰か烏の雌雄を知らんや。)の句がある。

論語・述而』に、孔子は若聖與仁、則吾豈敢。(聖と仁とのごときは、則ち吾豈に敢てせんや)と述べてをり、聖は人間最高の理想態とされた。

藤堂

と音符の會意兼形聲。𡈼は、人が足を眞つ直ぐ伸ばしたさま。呈は、それにを添へて、眞つ直ぐ述べる、眞つ直ぐ差し出すの意を示す。聖は、耳が眞つ直ぐに通ること。分かりがよい、さといなどの意となる。

落合

の甲骨文に、の初文(の下にを加へた形)とに從ふ形がある。金文にその形を承けて耳と口と人の形から變はつた𡈼を合はせて聖の形が作られた。上古音では𡈼は聖と同音か近い發音であつたと推定されてをり、亦聲符とされる。聖は祖先を顯彰する意で用ゐられてゐる。

漢字多功能字庫

甲骨文はに從ひ、耳朶の突出した人の形に從ひ、その隣に口があり、聲が口から出て耳に入るさまに象る。本義は聽聞。聽聞よりひろく通達の意と解き、更には聖賢、聖德の意を派生する。吳大澂は聖、聲也、通也、聞聲知情謂之聖、聖、聲古通。と云ふ。古く聖、の三字は同源で、形が近く義が通じ、みな口と耳に從ひ、口で言ふことを耳で聽く意と解き、金文に多く聖字を以て聽聞の義を表す。早期金文は甲骨文と同じく、西周中期以後の聖字は多く耳と口と𡈼聲に從ふ。耳の下の人の形は段々と變形して𡈼となつた。𡈼は人がの上に挺立するさまに象る。耳の上にあるいはを加へ、聲の甲骨文の字形に影響を受けた可能性がある。聖はまた人の形を省いて𦔻に作る。あるいは𦔻の下に二點二劃の飾筆を加へる。あるいは人と耳と二口に從ひ、聽の甲骨文の形に近い。いづれも聽聞の義を損なつてゐない。『説文解字』通也。(後略)『風俗通』聖者聲也、通也。言其聞聲知情、通於天地、調暢萬物。

卜辭、金文では、用ゐて聽聞の聽となす。

金文ではまた聖智、聖王を表す。

屬性

U+8056
JIS: 1-32-27
當用漢字・常用漢字
𦕡
U+26561
𠄵
U+20135

關聯字

別字。聖の簡体字に用ゐる。